No.9 影の守護者
ステンドガラスの教会の前で、フードの男達とブラックが向かい合っていた。
倒れた仲間を見て、フードの男達がざわつく。
その奥から、ディアナが一歩前に出た。
ディアナの目は狂気に満ちている。
「黒の騎士団……」
ディアナが懐から一冊の古びた本を取り出す。
ディアナがその本のページを開くと、空気が変わった。
ブラックはそれを見て、静かに舌打ちする。
「……面倒な奴らだな」
ブラックは後ろにいる華へ、ほんの少しだけ視線を向ける。
そして、華にしか聞こえない声で言った。
「おい」
「……?」
「俺達の本部まで送る」
「え?」
「そっからは自分で帰れ」
華は小さく首を傾げたが、
「え、でもどうやって……」
ブラックはそれ以上説明しない。
ただパチンと指を鳴らした。
次の瞬間、華の足元の影がゆらりと揺れる。
「え……?」
影が黒く広がったと思うと、
「ちょ、ちょっと待っ……」
華の身体が、影の中へ吸い込まれていくのだ。
「えぇぇ!?」
一瞬で、華の姿は消えてしまった。
「……!」
ディアナの目が見開かれる。
「女神様が!」
周囲のフードの男達も動揺し、
「……おのれ」
ゆっくりとブラックを睨む。
「黒の騎士団……」
ブラックは軽く肩を回し、そしてディアナ達を見た。
「安心しろよ。お前らの相手は」
ブラックが剣を抜くと、金属の音が森に響く。
「俺がしてやるよ」
その頃華は、影に吸い込まれたあと突然、影の中から飛び出した。
「きゃっ!?」
気が付くと、そこは森ではなかった。
目の前には大きな門があり、その奥には黒いお屋敷のような建物が立っている。
どうやら、黒の騎士団本部の門前のようだ。
「え……?」
門番の騎士達が、突然現れた華を見て驚く。
「なっ……!そ、それはブラックさんの魔法!貴女……どうされたんですか!?」
華は慌てて門へ駆け寄り、
「ブラックさんが!」
息を切らしながら叫ぶ。
「ブラックさんが森で!」
華の様子に、門番達が顔を見合わせる。
「フードの人達に囲まれてて……!」
(早く助けに行ってあげないと……!)
門番の一人が真剣な顔で頷く。
「分かりました!すぐ我々が向かいます!」
門番の一人が華を本部の中へ案内し、休ませて貰う事になった。
廊下を歩いていると、騒ぎを聞きつけた青年ーーカフェオレが近づいてきた。
「あれ?」
華を見て、首を傾げた。
「君、この前街で会った女神様じゃん。どうしたの?」
「ブラックさんが森で、教会組織――」
「エクレシア・ルミナと戦闘をしていると、この方が」
門番達はすぐに武器を取り、戦いに向かう準備を始める。
カフェオレは少し考えるように顎に手を当てた。
「分かった。じゃあ君達は様子を見に行ってくれる?」
「はっ!」
カフェオレは次に華を見て、優しく微笑んだ。
「僕は、女神様と一緒に待ってるよ」
軽くウインクする。
「1人にさせるのは心配だからね」
華は少し安心したように頷いた。
しかし、心の中は不安でいっぱいだった。
(ブラックさん……大丈夫かな……)
その頃、紅の騎士団本部の廊下では、団員達がざわついていた。
「まだ見つからないのか?」
「部屋にもいないそうだ」
「朝から誰も見てないって……」
騎士達の間に、不安が広がっていた。
その中心に立っているのは、ダージリン。
ダージリンは静かに考え込んでいた。
「ダージリン様、女神様が見当たらないと……」
ダージリンはゆっくり目を閉じ、そして呟いた。
「……おかしい」
近くにいたストレートとアッサムが振り向く。
「確かに……。あいつが何も言わずに外出するとは思わねぇけど」
「……僕もそう思う。……それに、昨日あんなに張り切ってお手伝いをしてくれたのに、それをサボって外出なんて、華はそんな事しないんじゃないかな」
「ストレート、アッサム。華を探しに行こう」
「あぁ」
「了解」
(あの子に何かあったのかもしれない)
ダージリンの胸の奥はやけにザワついていた。
そして三人はすぐに本部を出ると、紅の騎士達のマントが風に揺れた。
森では、黒の騎士団と教会組織が対峙している。
黒の騎士団本部では、華が不安そうに待っている。
そして今、紅の騎士団も動き出した。
それぞれの思惑が交差しながら、物語はさらに大きく動き始めていた。




