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50 ウンディーネ

『お待ちなさい』


 ヴァッサーに止めを刺そうとした時、たおやかな女性の声が聞こえた。


 いつの間にかオレとヴァッサーの間に立っていたのは、水でできた女性の姿だった。


「ウンディーネ……!」


 オレは気が付けば憎々しげに呟いていた。


 ウンディーネはこの国、ゲーゲンバウアー王国を守護する大精霊だ。そして、世界の均衡を守る大精霊の身でありながら、イフリートに致命傷を負わせた相手だ。


 こいつのせいで世界のバランスが崩れ、邪神の封印が解けてしまうのだ。邪神騒動最大の大戦犯である。


 まさか、この場に出てくるとは思わなかったな……。


 オレはもうかなり力を使っている。貯えていたエネルギーも枯渇気味だ。ヴァッサーにプラスしてウンディーネまで敵に回るのは苦しいものがある。


 オレがヴァッサーを相手に有利に立ち回れていたのは、たとえ不利属性であろうと、ヴァッサーよりも積んでるエンジンの出力が大きかったからだ。


 だが、ウンディーネはオレの同格以上の相手だ。厳しい戦いになるだろう。


『あなた、私の姿が見えていますね?』

「そんなことはどうでもいい! 貴様のせいでイフリートは逝ったぞ? このままでは邪神が復活する! どうするつもりだ!?」


 ウンディーネはオレの言葉にピクリと眉を動かした。


『そうですか、イフリートが……。イフリートの反応が消えたのはそういうことですか……。バカな子……。あれ以上力を使えば、自身の消滅はわかっていたでしょうに……』


 黙祷を捧げるようにしばらく沈黙していたウンディーネの顔が上がる。


『邪神の問題は仕方ありません。私はただゲーゲンバウアーの民をイフリートから守るために戦ったのみです』

「守る? ルクレール王国を併合したのはゲーゲンバウアーの方だろ! 自国民を守るためなら、他国を滅ぼしてもかまわないとでもいうのか!? お前は世界の秩序を守る大精霊だろうが! なぜゲーゲンバウアーを制肘しない!?」


 ウンディーネは悲しそうな顔を浮かべる。だが、それはオレの怒りのボルテージが上がるだけで終わった。


 なんでこいつが被害者面してるんだよ!


『できないのです。人間はあなたとは違う。ゲーゲンバウアーの王は私の姿を見ることも言葉を交わすこともできません。私もルクレールを攻め取るのは反対でした。ですが、人々には私の言葉は届かないのです……』


 そこには人々の目には映らず、言葉も交わせない者としての悲哀があったかもしれない。だが、そんなことはどうでもいいのが本音だ。


「なら、他の方法を考えろよ! 方法なんていくらでもあるだろ! なんなら、ゲーゲンバウアーの王を制肘するために水玉をぶつけてやればいい!」

『そんな簡単なことでいいのですか?』

「ああ!」


 この世界では、神の代わりに大精霊が信仰されている。しかも、ウンディーネはここゲーゲンバウアー王国の守護精霊だ。その威光の前には王ですら膝を折る。


 そんなウンディーネに水玉をぶつけられる。一度や二度なら笑い話で済むかもしれないが、ずっと続くようなら王も考えを改めるだろう。


 大精霊からの信頼を失った王など、国民に支持してもらえないからな。


 最悪、国家転覆もありえる。


 オレにとって、ゲーゲンバウアー王国などどうなったってかまわない。ルクレール王国を滅ぼした罪をせいぜい償ってほしいものだ。


『なるほど。感謝します、えぇーと……?』


 たおやかな水の女性が小首をかしげた。


「レオンハルトだ。せいぜい王の行動を注意深く見ることだな」

『はい。わかりました』


 ウンディーネが頷くと、後ろを振り返った。


 ウンディーネがヴァッサーに手をかざすと、ヴァッサーの失われた後ろ足や翼が急速に蘇っていく。


 さすが、修復も司る水の大精霊だ。丹念に概念的に燃やし尽くしたのに、すぐに復活してしまった。


 これで、一対二か。ますます状況が不利になった。


「やるつもりか?」

『いいえ。今回のことは私の不徳が為すところのようです。引き下がりましょう』

『ですが、ウンディーネ様!』


 ウンディーネの言葉に反論するように怒れる女性の言葉が頭に直接流れてきた。どうやら目の前の竜ヴァッサーの声らしい。


『ウンディーネ様、この者は危険です!』

『この者はイフリートの遺志を継ぐものです。殺してはなりません』

『ですが……』

『ヴァッサー、帰りますよ』

『……かしこまりました』


 こうして、ウンディーネは空気に溶けるように消えていき、ヴァッサーはこちらを睨んだ後、翼を羽ばたかせて飛んでいってしまった。


『今回はよい知恵をもらいました。これは礼です』


 ウンディーネが完全に消え去る前に、オレに向かって手を伸ばした。


「くっ!?」


 なんだか体が熱を帯びて暴走するような感覚がした。


『では、いずれまた会いましょう。レオンハルト……』

「なにを、した……?」


 しかし答える声はなく、オレはその場に膝を付いて体の内側から破裂しそうな衝撃に耐えていた。

お読みいただき、ありがとうございます!


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