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35 王都巡り

「おつかれさまでございました、レオンハルト様」

「ああ。ありがとう、セリア」


 チクチク言葉が止まらなかったアンネリーエとの挨拶を終え、自分の席に戻ってくると、セリアが眉を下げた困ったような顔で労ってくれた。おそらく、アンネリーエとの会話がここまで聞こえていたのだろう。


「そうだ、セリア。例の償いの件、ちゃんと考えておいてくれよ。なんでもするつもりだから」

「本当になんでもよろしいのですか?」

「ああ、もちろんだ」

「でしたら……」

「そんなことでいいのか?」


 セリアのお願いはそんな簡単なことでいいのかと首をかしげるようなものだった。



 ◇



 次の日。魔法学校にも休日がある。この日は講義はなく、学生たちは自由を謳歌する。


「待たせたか?」

「いいえ。私も今着いたところですから」


 そんな休日の朝、オレとセリアはなぜか校門で待ち合わせをしていた。


 男子寮の同じ部屋に住んでいるのに、なぜわざわざ校門に集合なのだろう?


「エスコートしてください、レオンハルト様」

「ああ」


 疑問に思っていると、セリアがオレに向かって手を伸ばしていた。


 オレは左腕を開けると、セリアがするりと腕を組んでくる。


 セリアがグッと近くなってちょっとドキドキする。


 これって傍から見ると、貴族とメイドのいけない関係なのではないだろうか?


「さあ、早くいきましょう」

「ああ……」


 今日のセリアはいつもより積極的な気がした。


 まぁ、オレを一日貸し切りにするのが彼女の望みだし、オレは彼女の望みを叶えるだけだ。


 二人で馬車に乗り、学園を出る。


 馬車で順番に王都の観光スポットを巡り、気になったら馬車を降りて散策する。そんなノープランなぶらぶら旅だ。


「見てください、レオンハルト様。とてもおいしそうですよ!」

「ああ、そうだね」


 それでもセリアはとっても楽しそうだった。セリアが楽しそうだと、オレまで楽しくなる。


 流行っているらしいレストランで、王都の名物であるグルグルヴルストやカリーヴルストなんかを食べた。おいしくてオレばっかり食べてしまったけど、セリアはそんなオレを楽しそうに笑って見ていた。なんだかちょっと恥ずかしかった。


 午後も馬車でぶらぶらと王都の中を見て回った。


 もちろん対ルクレール王国との戦勝記念碑などは避けてね。オレはこう見えても気の使えるデブなんだ。


「レオンハルト様、ジェラートですって! お食べになりますか?」


 見れば馬車の向こうに行列が見えた。その先にはジェラートのお店があるらしい。ずいぶん流行っているようだ。そんなにおいしいのかな?


「そうだね。いただこうかな」

「私、買ってきます!」

「いや、二人で並ぼう。二人で話していれば、時間も忘れるだろう」

「まあ!」


 本当のことを言っただけなのに、セリアは目を大きく開いて少し恥ずかしそうにしていた。


 そして、赤らめた顔で口を開く。その柔らかそうな唇がとても印象に残った。


「では、二人で並びましょうか……?」

「そうしよう」


 オレたちは馬車から降ろしてもらうと、行列の最後尾に並ぶ。


「レオンハルト様はあまり貴族らしくありませんね」

「そうかな?」


 まぁ、前世の日本人の小市民魂が根強く残っているのは確かだ。


「お気を悪くされたら申し訳ございません。悪い意味ではありませんよ? レオンハルト様は他の貴族のように横暴ではないという意味です。普通の貴族はこんな行列に並ばずに直接ジェラートを買おうとしますよ。いえ、それ以前に自分で並んだりしませんね。御者の方に命令するだけでしょうか」

「ふむ」


 たしかにそうかもしれない。オレは幼少期から使用人の使い方が下手だと言われていたけど、もしかしたら、それも人を使うことになれていない前世の記憶が影響しているのかもしれないな。


「今だってそうです。奴隷の私にお命じになるのではなく、ご自身も列に並ぶこと当然と考えています」

「もっと貴族らしくした方がいいかな?」

「いいえ。レオンハルト様は今のままがいいです。お優しいレオンハルト様のままで。その方が好きです」

「ッ!?」


 セリアの口から「好き」という言葉が出て、変に意識してしまう。


 セリアの細い腕がオレの左腕にからみついていることや、セリアの体が密着していることを意識してしまうともうダメだった。


 もう心臓が口から飛び出そうなほどドキドキしていた。


 セリアはそんなオレを見てニコニコと笑っていた。


 その後、御者の分のジェラートも合わせて十個買うと、早々に馬車に帰った。


 ん? 御者の分一つ、セリアの分一つ、オレの分八つだよ?


「レオンハルト様、今日はありがとうございました」


 夜遅く。門限ギリギリで学園の男子寮の自室に帰ると、セリアが深く頭を下げていた。


「気にしなくていいよ。オレも楽しかったから。むしろ、セリアのお願いがこれでいいのか不安になるほどだ。なにか欲しいものはなかったの?」

「いいえ。今日はたくさんのものをいただけましたから」

「そう?」

「はい!」


 セリアにあげたもの? ヴルストとジェラートくらいしか思いつかないけど、それがセリアの欲しかったものだったのだろうか?

お読みいただき、ありがとうございます!


本作品は、1月30日に大幅改稿・加筆の上でHJ文庫より販売されます。

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