21 買い物
「ここが西区か……」
モヒカン肩パットの青年に教えられた通りにバーデンの街の西区に行くと、そこは石造りの武骨な街並みだった。先ほどまでいた華々しい南区とはまるで雰囲気が違う。
冒険者御用達の情報も本当のようで、西区を歩いているのは思い思いの武装に身を包んだ冒険者ばかりだ。聞けば冒険者ギルドもここ西区にあるらしい。それは冒険者も集まるね。
「ここでアイテムを買われるのですか?」
「ああ、そのつもりだ」
オレはセリアの言葉に頷いて返す。
ちょっと店を覗くと、先ほど南区よりもリーズナブルで実用的な商品が並んでいるのがわかる。さしずめ、南区は高級店やお土産屋の類の店が主なのだろう。ダンジョン攻略に使うことを考えれば、こっちの西区で買った方がよさそうだ。
「どうやらこっちの方が実用的なアイテムが買えそうだしね。あっちはどうやら見た目に拘ったお土産屋らしい」
たぶんダンジョン都市らしいお土産ということで売ってるんだろうな。
南区で純白の翼の生えた盾を見た時はどうしようかと思ったが、西区にはちゃんとした店があって助かったよ。
「じゃあ、必要なものを買っていこうか」
「はい」
まずはMPポーション。そして、やっぱり装備も必要だよな?
「ここに入ってみるか」
セリアと二人で冒険者の防具を扱ってる店に入った。店に入った瞬間、金属の硬質な臭いと油の臭いがした。ここは主に金属製品の防具を扱ってる店のようだ。
オレも前衛として立つなら防具くらいほしいところだ。問題は金属鎧か革鎧かだな。
ゲームの時とは違って、一番防御力の高い装備を脳死で着けるってわけにはいかない。鎧には重さもあれば、手足の可動域なんかも制限される。よくよく考えないといけないな。
金属鎧は革鎧よりも防御力が高いのが一般的だった。
だが、その代わりに手足の可動域が大きく制限されるし、なにより重い。陳列された籠手を持ってみたが、やはり相応に重かった。これを着けて剣を振るのは疲れそうだな。
オレがオイゲンに習っている双剣術は、速さが命みたいなところがある。敵の攻撃も当たらなければどうということはないを地で行く武術だ。
金属鎧よりも革鎧の方がよさそうだな。
だが、ここは素人判断せず、プロに訊いてみよう。
「店主、ちょっといいか?」
「あ? なんだ? 買うもの決まったか?」
「ちょっと訊きたいことがある。オレは双剣を使うんだが、軽くて動きを妨げない鎧はあるか?」
「んー……」
店主はオレの格好を上から下まで見て頷いた。
「まあ見せてやるか。ちょっと待ってろよ」
そう言って店主が奥からなにか持ってきた。まるで金属でできた服のようなものを持っているのだが、その金属の輝き方がおかしい。見た目は鉄や銀のようなシルバーなのに、虹色に輝いている。
「あれは……」
「セリア、知ってるの?」
「はい。あれはおそらく……」
「どうだ見ろ! ミスリルで作ったチェインメイルだぜ?」
店主が自慢気にその正体を告げる。ミスリルチェインメイルか。なかなかいい装備だな。
しかし、ミスリルって実際に見ると七色に光るのか。すごい!
オレはファンタジーの代表格のような金属の登場にテンション爆上がりだ!
「こいつはドワーフの職人が作ったもんだ。防御力は折り紙付きだぜ? しかもだ。ボウズ、ちょっと持ってみろ」
「ああ、……え?」
オレは店主に渡されたミスリルチェインメイルを持った。持ったのだが、そのあまりの軽さに驚いてしまう。
手に持った感触は明らかに金属のそれだ。しかし、まるで布でも持っているかのように軽い。あまりの感覚の違いに脳がバグりそうだ。
「驚いただろ? ミスリルっての元々軽くて硬い金属で有名だが、職人の手にかかるとこれだ!」
「ああ……。すごいな……」
「これならボウズの言う鎧にもピッタリだろ?」
「ああ!」
「だがこれはべらぼうに高いんだ。だからな、ボウズ。がんばってダンジョン潜って稼いで――――」
「金ならある。売ってくれ」
オレはドンッと金貨の詰まった革袋をカウンターの上に置いた。その拍子に金貨が数枚零れ落ち、澄んだ音を立てて弾け、転がる。
「え……?」
その時の店主の顔は笑い出すのを堪えるのが難しいほど間抜けな顔をしていた。
◇
「すごいなこれ。まるでなにも着けていないかのようだ」
オレの格好はいつもの普段着に外套を被っただけのさっきまでとまるで変わらない格好だが、それは見た目だけ。オレの防御力は服の中に着込んだチェインメイルのおかげで飛躍的に上昇していた。
「あの、レオン様? 私も買っていただいてよろしかったのでしょうか?」
後ろからセリアの遠慮染みた声が聞こえる。
「いいのいいの。これなら魔法の集中の邪魔にもならないだろ?」
たしかミスリルチェインメイルはMPの最大値が増える効果もあった。後衛にも嬉しい効果だ。
「はい。ですが……」
「ですが、はなしだよ。セリアを守るために必要なものに金に糸目を付けないよ」
「その、ありがとうございます……」
「いいっていいって。ダンジョンに潜ってればそのうち稼げるだろうしねー」
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