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養育までは望まないから扶養して!


「ピ、ピィイー!ピィ!!ピ!!(トカゲ違う!ノントカゲ!!)」

「うわっ、なんだこの……ッ!踏み潰されたいのか!」


 なんということだ。どこからどう見ても立派で愛らしい手乗りドラゴンのこの私を捕まえて、まさかのトカゲとは……。いや、ドラゴンも爬虫類と分類される世界なら甘んじてトカゲ認定を受けても……字面的に嫌!!!!!!!


 私は必死に自分はドラゴンだと訴えるべくイザヤ王子の足元にまとわりついた。それを嫌そうに振り払おうとするイザヤ王子。


「殿下!」

「お一人で行動されては危険です!!」


 そんなことをしていると、遅れてバタバタと騎士やら貴族っぽい人たちやらが馬で駆けつけてきた。そしてあたりに落ちている獣の死骸と、血の付いた剣を持っているイザヤ王子を見て言葉を詰まらせる。

 私の目にもよくわかる、恐怖と嫌悪だ。彼らの目には「こんな薄気味の悪い王子の機嫌をなぜ取らねばならないのか」という感情が浮かんでいた。


「……ピィ」


 子供に向ける感情ではないのでは?????????


 お前ら全員大人だろうが。子供を怖がってどうすると私は腹が立った。なので驚異の跳躍力を見せて、手近な貴族の顔にべっとりと張り付き、鼻を噛む。


「ぐっ、ぐぁあああ!!?なんだ、このっ……トカゲ!!!!!!」

「クロイツ卿!!」


 尻尾を掴まれ引き離そうとされるが、私の被保護者予定への無礼を許すものか!私は必死にしがみついたが、所詮可愛いだけの手乗りドラゴンである。


「ピ、ヒャッアアーーーー!」


 べりっと引きはがされ、地面に叩きつけられそうになる。


「待て」


 けれど覚悟した衝撃は来なかった。


「で、殿下?」

「そいつは僕に懐いている」

「……は?」


 私の尾を持つクロなんとか卿とやらは、イザヤ王子の言葉に目を見開いた。間の抜けた声を上げ、自分が聞いた言葉の意味を理解するのに時間がかかる。その間にイザヤ王子は濁った沼のような目を細め、私に向かって肘をつき出した。


「来い」


 え、何?行っていいの??


 それなら遠慮なく、と、私は懸垂の要領で身を起こし、クなんとか貴族の腕をがぶっとやった。


「ぎゃぁっ!!」

「ピィ~!」


 反射的に私の尾を掴んでいた腕を話すオッサン。私はするすると地面に降りて、そのままイザヤ王子の腕まで滑るように移動した。


「うん。よし。言葉はわかるようだな」


 自分の思った通りに行動した私にイザヤ王子は満足そうに頷く。まぁ、最強の竜種なので人の言葉くらいわかります。喋れないけど。声帯がそもそも違うから。


「殿下……!人の言葉を理解しているということは魔物ではありませんか!?」

「そのようなものを殿下のお傍に置くなど」

「ふん、魔物の何が悪い?宮中に蠢く腹の底の腐った者どもと魔物のどちらが臭いか、いい機会だ。比べてみるのもいいだろう」

「殿下!」

「煩い」


 王族が魔物を飼うなどあまりに品のない行動だと、咎めようとした貴族に向かって、イザヤ王子は剣を振り降ろした。


「っ!!ぐあああああ!!」


 先ほど私に噛まれた時の比ではない声を上げて、貴族の男性が転がる。その耳は片方ない。


 うん、The悪役だ。

 素晴らしい、すがすがしいほどの悪役、暴君っぷりである。さすがは物語で破滅するラスボスとして設定されていただけのことはある。


 私は感心しながらも「でも私を助けてくれたので善人!」というジャッジは覆すつもりはなかった。


「お前」

「ピ?」

「僕を怖がらないとは図太いやつだな。助けてやったのをわかっているのか?」

「ピピイィ!」


 もちろん、理解している。そのまま養育……いや、扶養してくれて構わないよ!と私は全力で媚を売った。


 呼んだら全力で応える可愛い手乗りドラゴン、いりませんか?

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