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「ではまず光の竜の乙女の話からするわね」

フィーネたちは囲炉裏を囲んで座った。部屋にはフィーネとエレツ、フレイヤとファムとレーヴェン村の長の老人、そして竜が二匹いた。竜二匹は久方ぶりに会ったのが嬉しいのかじゃれあっている。

「光の竜の乙女は自身の竜以外の竜や人の傷を癒すことができるわ」

「それはエレツから聞いたよ」

「そう、ではこれは聞いた?光の竜の乙女は魔物を浄化することもできるの」

これにはフィーネだけでなくエレツも驚愕の色を滲ませた。

魔物を浄化するという話しは一切聞いたことがなかった。そもそも魔物についてさえも詳しく研究されていない。どこからきてどうやって生まれているのか。

「魔物は闇に侵食された動物たちから成るの。だから光はそれを癒すことができる。他の竜の乙女にはできない方法よ。だからあたしたちレーヴェン村は光の竜の乙女を別格扱いするのよ」

そういう風に村では言い伝えられてるしね。何か聞きたいことはある?というフレイヤの問いかけに甘えることにした。

「エレツは竜の乙女たちで魔物発生の原因を叩くっていってたけれど、それは可能なんですか?」

フレイヤはエレツを横目でとらえてから真剣な面持ちで答えた。

「可能よ。そもそも竜の乙女が全員必要なのは魔物の巣窟に足を踏み入れるためなの」

島の中央、魔物の巣窟とされる場所。空は日射しが通らないほど真っ黒な雲に年中覆われている土地で植物は育っていないと聞く。そこは何者かの侵入を拒むかのように、中央部にドーム状の結界が張られている。だが魔物はその結界を通り抜けて内側から出てくる。その結界の破壊に竜の乙女全員の力が必要なのだ。

「そして元凶をどうにかするのはフィーネ、あなたの力にかかってるわ」

「わ、私!?」

「光の竜の乙女だけが魔物を浄化できるっていったじゃない。だから魔物の発生源を叩く、つまり浄化するのはあなたの役割ってことよ」

自分にそんな力があるなんて実感が沸かなかった。村を出発したときは、自分の力が元凶に相対するものだと思わなかった。補佐、あるいは助力。そのような程度にしか考えていなかった。

「だから旅をしながら力の使い方を練習して。これは一朝一夕にできるようなものじゃないわ」

「…わかった」

フィーネは手を見ながらこくりと頷いた。それからエレツをちらりと見ると眉を下げて申し訳なさそうな顔をしていた。彼女もこの事実を知らなかったらしい。

十二歳の少女が旅の目的の要になると、誰も想像できないだろう。頑張らなくちゃ、と拳に力が入った。

「そういえば二人の竜は乙女と一緒にいるよね。光の竜はどこにいるのかな?」

「光の竜は首都、アモール市にある城にいる」

この質問にはエレツが答えた。首都に行けば会えるのか、とフィーネは自身の竜を想像して口角があがった。きっと、光だから白や黄色い色なのだろう。他の竜の乙女がどこにいるかはわからないが、会える日はそう遠くないはずだ。

「アースやルブリムはそれぞれエレツたちとどうやって会ったの?」

「俺の乙女はレーヴェン村で生まれることがほとんどだからずっとここにいるんだ。フレイヤが生まれたときも近くにいたんだよ」

ルブリムがフレイヤにすり寄りながら答えた。とても仲が良さそうで嬉しくなる。

「アースは私の紋様が現れた次の日に、顔面に突っ込んできたな」

「エレツを探して飛んでたらね!ここだって思って!ビュンって止まらなくなったんだよ!」

エレツが半目でぐるぐる飛び回っているアースを見ている。その場面を想像したらとても痛そうだなぁと感じた。

詳しく聞くと、竜は自身の竜の乙女と光の竜の乙女の居場所しかわからない。ただ竜同士はどこにいるかある程度の位置を把握できるため、エレツはフレイヤの居場所をあらかじめ知っていたというわけだ。

穏やかに歓談した後、一泊泊まらせてもらうことにした。フレイヤも旅に同行してくれるらしい。フィーネとエレツはフレイヤの住む家へ移動した。

「じゃあご飯の前に少し特訓しましょう」

パチンとフレイヤが指を鳴らすと空中に火の矢が現れる。ごうごうと燃えていて熱気を感じた。思わずフィーネは拍手する。

「フィーネも自分が扱いやすいようにイメージするといいわ。私は弓矢が得意だから火の矢をイメージしたというわけ。剣や鞭、槍、矢、なんでもいいの。魔物も素早いし手で触れるのは危険だから魔物を浄化するために、光の力を伝える方法を考えてやってみて。まぁ、あなたはまず光を素早く出すところかしら」

エレツは壁を作り、剣で応戦していたところをみると補助的な役割として力を使っていることが予想できる。フレイヤは火の矢を生み出したところから察するに、それで魔物を射て殺すのだろう。

ならば私はどうやって力を使うのか、フィーネはいまいちイメージできなかった。浄化は癒しの延長のように捉えられる。上記はフィーネの頭のなかでは攻撃のイメージからかけはなれていた。悩みながらもひとまず光を灯す練習をする。ぱっと光の玉が三つ、フィーネの周りをふよふよと飛んだ。

「力を出すのは早いのね、すごいじゃない」

「これはなんとなく、イメージしやすくて」

以前の夢のおかげかもしれない。褒められると照れてしまう。

それからエレツとフレイヤと一緒に特訓を一時間ほどしていた。光を意識した場所へ動かしたり、光の玉を大きくしたり、光の数を増やしたり。それから少しだけ光を灯すまでの時間が短くなった気がした。

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