存在しないはずの可能性
「不法侵入とは、感心しないなぁ~?」
学園内の森の中。フードを被って顔を隠している少女に向けて、私はそんなことを言った
少女は驚くことなく、私の方に振り返りフードを外した
「盗聴、盗撮の常習犯のルミ…さんには言われたくないんですけど?」
フードを外したことによってあらわとなった桃髪のポニーテールの少女は、不満を宿した黄緑色の瞳で私を見つめてくる。かってに「不法侵入」と決めつけられたのが嫌だったのだろう...そう思ってやったし
「おやおや? あなた様のようなBIGなら、こういう仕打ちには慣れていると思っていたんだけど~?」
「どれだけ経験しても、慣れないんだよね。こういうのって」
「人気者は大変だね~」
「いっそ、ルミさんのようになれれば、少しは楽できるんだけど…無理だしね」
「まあ、私が見てきた中でも君はましな方だよ」
という風に励ましといたが、これは分かる奴にしか分からない慰めだった。まあ、この程度で落ち込むほど、コイツの心は弱々じゃないし
そんなことより本題だ、本題
「で、ここで何してるの?」
コイツは一見普通の女の子だが、その実態は今の世界における「最高権力者」
「秩序の象徴」にして天使たちの長。獣の神を封印し、自由の魔神の解放に大きく貢献した神帝…
彼女は、本当の名前を持っていない。しかし、誰もが彼女のことをこう呼んだ…
天使たちの神『天神』と
「秩序の頂点が、姿を隠してコソコソと…そんなの、気になるに決まっているじゃ~ん。君の性質上、絶対になにか起こるし」
天神はこの世界において「主人公」の役割を与えられている。実際、前世界と創世記と三神戦争は彼女を中心に動いていた
戦争が終結して彼女が動くこともなくなり、この世界の物語は終わって、ようやく解放されると思っていたのだが、ここにきて新たな物語が始まるらしい
「どんな異変~?」
これでも私は■■■だ。物語は、見るのも参戦するのもだぁ~い好き。もちろん、今回は参戦するつもりだ
「う~ん…まあ、ルミさんになら話してもいいかな」
うんうん。ここで渋ってこないのは彼女のいいところだ
「ルミさん。『全知の新人』って覚えてる?」
「あ~…あったね、そんなの。前世界の人類が『獣』に抵抗するために作ってた、自律型対世界天災AIだったよね?」
でも、あの世界線の可能性は完全に断たれている。『秩序の天使』が存在しているこの世界で生み出されるとは考えられないんだけど…
「まだ確証は得られてないんだけど、それに当てはまるかもしれない存在を確認したんだよ。今は個人でその調査中なんだ」
「なるる。でも、もし本当にあのAIが存在しているなら、犯人の特定は余裕じゃない?」
前世界の記録は、今の世界には一切残されていない。覚えているのも天神を除けば「自由の悪魔」ぐらいだ。つまり、犯人は「自由の悪魔」の誰かだ…とも言い切れない
1人、前世界の存在を把握している存在がいる。最初の追放者「タビビト」…彼女であれば「全知の新人」に到っている可能性はある
だけど、彼女の目標とするコンセプトとは趣旨がズレている。彼女が犯人の可能性もあるが…まあ、ほとんど無いだろう
「確かに犯人の特定は簡単かもだけど…『自由の悪魔』だったとしたら、もう私たちには手の出しようが…」
『自由の悪魔』は神から見ても超常的な存在であり、そうそう会えるような存在じゃないし、会えたとしても絶対に勝てない
「まっ、そだよね~」
「そういうことなんだよ。とりあえず、まずは確証を得るために動くことにしてるんだよね」
「ふぅ~ん…なるほどね」
「じゃあ、私はそろそろ失礼するね」
天神ちゃんはフードを被って森の奥へと歩いていく。そんな天神に向かって、私は一言ヒントを与えた
「2日後、天使が何体か変死するかもね」
そして2日後。実際に100体を越える天使が突如として変死した。そして、変死した天使が、理性を失った幽霊となって町に放出された
これが『邪天鎮魂事件』の始まりだった
そして、その事件の解決に協力するのが、私と白姫に課された課題となった。もちろん、私が裏で手を回して




