白
心が軽い。世界が輝いて見える。内側に溜まっていた雑念がすべて洗い流されたような解放感が私に笑みを与えてくれる
キライ、キライ、キライ…うん!
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い…大っ嫌い!!!
凄い、凄い凄い凄い!!!
どれだけ本心から嫌っても、なんの後ろめたさも感じない。心の奥底から湧き出てくる純粋で真っ白な悪意を、そのまま吐き出せている
これが人としての私の本質。英雄としての白姫…!
今なら、なんの突っ掛かりもなく相手を否定できる。初めて会う相手に対しても、何も知らない相手だとしても否定できる自信がある
けど…
私は手に馴染むいつもの弓を天使の権能である「武装創製」で生み出そうとしたが、うんともすんとも言わない。やはり、この状態では天使としての機能は使えないらしい。単純に神秘力は半減…
まあ、天力は枯渇していたから関係ないし、今は気にしなくてもいいだろう
それと、天使の神秘が失われた影響か毛先が灰色っぽくなっている。これは、全部を解放したら、もっと目に見えた変化が起こりそうだ。余裕がないからしないけど
と、いろいろ考えてしまっていたが、そういえば時間がないのだった。天域が残り3分、行動否定があと30秒ってところだろう
そして、問題の「精神の輪郭」だが…まったくわからない。もう、これは今の私が何をしてもそれには届かないということだ
けど、新しく思いついた…というか、気づいたことがある。精神だけ否定するとか、まどろっこしくないか?
精神も、術式も、肉体も、運命も、祈りも、奇跡も、本能も、本質も、自由も、価値も、夢も、記憶も、存在全てを、全部全部全部全部…否定してしまえばいいじゃないか
それを思いついた瞬間、私は再度笑みを浮かべた。そして、動くことのできないクモに近づく
クモは身体を動かそうとしているのか、身体がピクピクしている。そんなクモの胸元に私は優しく触れる
クモの肌からは温もりを感じ取れた。内側の熱性魔力の影響だろうが、もしこだわりだとしたら感心する
私はその温もりを感じながら目を閉じる。暗闇のなかで彼女の温もりだけを感じることができる
私は心のなかで「否定」を重ねていく…
誰かを否定するのに正統性なんか必要ない。嫌いだから嫌いと否定する。論理的に考える必要なんてない、変に○○だから嫌いと考える必要もない
手のひらで感じる温もりの持ち主の全てを、広く感じ、身勝手に想像し、傲慢に否定する…
意味も理由も必要ない。内側から溢れ出る、この純白の『白』で相手の全てを否定し塗り潰す…!
「…?!」
クモは、本能的に私の手のひらに集まっていた、吐き気を催すような「それ」に恐怖した。それは身体の方も同じらしく、反射的に私から離れた
だが、もう何もかもが遅い
私は手をピストルの形にして、飛び退くクモの方へと向ける。そして、集約されたそれを解き放った…
「白」
私の指の先端から、巨大な純白の矢が放たれる
その矢は、クモにあたると同時に歪曲し渦へと姿を変えた。そして、私のその渦は私の天域を飲み込んでいった
天否たちはすでに天域から脱出していた。クモは…渦が激しすぎてよくわからない…
すると、一気に天域全てが渦に凝縮され私の天域は閉じられて、ドーム状の空間に出た。天否たちも無事だ
クモも新しく生まれてこない。これは、成功したということでいいだろう
私は天否のもとに近づく
「お望みの結果だった?」
「過程は後にするとして、とりあえず、ナイスだ」
そうして、私は天否とハイタッチをした




