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秘策

…雪が…降っていた。風が…強かった…そんな、曖昧なことしかわからないほど、私の意識はギリギリだった


無我夢中で北極から逃げだすことができたが、アメリカ大陸の永久凍土の寒さに身体の体温が低下していく


「…助すゥっ」


肺が凍って…声が出せない。出せたとしても、ここは永久凍土の地。誰の耳にも届かない…届いたとしても、きっとその人は私を化け物扱いするのだろう


石につまずき転んでしまう。冷たい大地の小石が私の肌に刺さり、血が流れる…


「…くぅ!」


それでも、私は止まらない。彼女との約束があるから。彼女から貰ったものを、やすやすと手放すつもりはない


立ち上がり、前へと進む

どこに行けばいいのかなんて、わからない。それでも、止まることだけは絶対にしない


彼女の夢を果たすために…!


私の心は死んでいない。絶対に諦めない


「…あっ」


しかし、心以外、何もかもが足りなくなっていた

気合いで補っていた体力が底をついた。私は再度転んで、そのまま坂の下まで転がっていった


気合いで補っていた神秘力が底をついた。身体が次第に元の普通の女の子に戻っていき、永久凍土の寒さが私の細胞を殺していく


それでも、だとしても、私は最後まで諦めない…だが、現実は無情で、諦めないこと以外、私には何もできない…


永久凍土の冷たき風が吹く…私はもう、何もできない…


----------------------------------------------------------------


…あの時のことを、私は忘れない


「師匠…準備が整いました」


それを聞いて、天否師匠は私に近寄ってくれた


正直、助かる。今の師匠には天力も神秘力もないので、この術に巻き込まれれば人溜まりもない。その点、近くに居てくれれば調整ができる


そして、近寄ってくれたため師匠が何を持っているのかが見えた。それで、師匠が何を…いや、誰を待っているのかが理解できた


確かにクモ相手であれば、彼女の力は有効で勝つために必要な存在になる。ならば、そのために、私は任された役割を全うする


圧縮させていた風の封を少しづつ解いていく。そして、私は師匠の真上まで飛び、そこで封を完全に解いた


「妖術 吹雪姫」


強く冷たい風が空間全体に吹き付ける。しかし、その風自体の殺傷能力はゼロ、ただの冷たい風だ


だが、はなからシーレの役割は「空間全体の糸を破壊すること」であり、攻撃が目的ではない。風に殺傷能力がなくとも、その風に乗せた冷気は、目に見えないほど小さい糸を凍り壊すのには十分なものだった


「ふぅ…」


次第に凍った糸は散り散りとなり、下へと舞い降りていく。その糸と共に私もゆっくりと地面に降りていく


これでこの戦いでの私の役割はおしまいであり、これがクモにとってのチェックとなった


秘策は秘めているからこそ秘策である。この空間はさっきまでの駅とは断絶された空間で、入り口も出口も消えてしまっている。そのため、外の気配は探れない


しかし、特別な繋がりで繋がっているのなら話は別だ。その繋がりよりも強い因果でなければ、それを隔離することは不可能


師匠には9人の仲間…正確には彼の性格の一側面が悪魔の力を借りて頭の中で同居をしている


そして、彼らは指輪を通して別の者の頭にも移ることができる。そして、たとえ他者の思考の中だとしても、指輪の悪魔とその主たる神魔天否は互いの存在を感じることができる


そして、現在その指輪を借り受けている少女を私は知っている


(最後は任せましたよ。白姫さま)


師匠が手に持っていた「白姫の羽」を優しく上空へと飛ばした。それを目にしたクモは、目を大きく開き強く動揺をした


「それはっ!?」


クモは即座に四方八方の壁から糸を生成して「白姫の羽」を破壊しようとする。しかし、師匠の計算は完璧であり、その相棒も計算通りに動いていた


師匠は適当に羽を投げた訳ではない。師匠は羽を丁度私たちが入ってきた地点に向かって投げた…


そして、空間に穴が空き、そこから1本の光の矢が現れ「白姫の羽」を貫いた。すると、矢と羽が混ざり合い、次の瞬間物凄い光を発して辺りを飲み込んだ



次に目を開けたとき、周囲は一変していた。地平線の彼方まで続く海と、海を照らしている無数の形の違う月


足元は海でありながら、足は一切沈まず、波が立つこともない。爪先に少し力を込めて水面を突ついても、壁のように硬い衝撃が帰ってきた


非現実的な空間、それが神秘の象徴たる結界であることは即座に判断できた。それ即ち「天域」


上空から鶴のような羽が何枚も舞い降りてくる。その羽と共に1人の少女も舞い降りてきた


「やっときてくれたね。まってたよ、天否」


「これでも、最高率でここまできたんだけどな。まあ、お前も生き延びていてくれて、ありがとう」


「これでも私は野生児だったから、サバイバル性能は高いんだよ。意外かもだけど」


白姫は行方不明だったため不安だったが、精神的にも体力的にも余裕があり安心した。これなら、ここから先のことも任せられる


師匠の秘策「白姫の天域」が展開された時点でクモの負けだ…と、言いきれないのが今の現状


この天域内であればクモは新しく生まれてこないだろうが、白姫が天域を解除して元の空間に戻ってから復活してくるだけになる


しかし、まあ、そこは白姫を信じることにする。もやもやするものはあるが、白姫は師匠の現相棒なのだから







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