策略家
状況は目に見えない形で徐々にこちらが不利になっていた
神楽の動きは遅くなっていき、反撃を受けることも多くなっている。セイサは糸の存在に気付き、糸を避け始めたが、そのせいで攻め手が少なくなっている
たが、それでやられるほど黒天使のNo.2とNo.3は伊達じゃない
神楽は反撃を受けても傷が治るのを利用して、ダメージ覚悟の反撃へのカウンターを決め
セイサは糸を見切るのに慣れ、直感的に糸を避けるようになり、攻め手を増やしていった
神楽が敵の攻撃を受け、セイサがその隙を突いて攻撃をする
神楽は『意識の力』での自動回復があるので耐久性が高く。見た目とは裏腹に、神楽よりも機動力と攻撃力が高いセイサが敵を攻撃する
状況と相性の不利を「2対1」という数のアドバンテージで補い。経験とセンスの差で徐々に状況は逆転へと向かっている
どこの世界でも、天才との長期戦は避けるべきなのだと見ていてよくわかる。2人の動きが最適化されていき、攻撃のペースも上がっていっている
そして、形勢は完全に逆転した
「慣れてきたし、一気に攻めるよ!」
「任せろ!」
神楽の構えが「守りの型」から「攻めの型」へと変化する
「不屈の大剣!」
神楽の大剣がより巨大化し、それを振り下ろす
周囲に物凄い衝撃が走り、辺りの糸が全て吹き消された
こちらにくる衝撃はシーレが仙術で防いでくれた。セイサはこのレベルの衝撃では微動だにしていない
1人だけ狙われていたクモは壁まで吹き飛ばされていた。そこに、セイサが急接近する
「わぁっ?!」
クモはずっと相手と距離を取っていた。それを単純に考えれば近接が苦手ということだ
「終わりだよ!」
セイサの槍が一瞬でクモの四肢を切り裂き、胸部を貫いた
「ヴっ…」
クモから苦い声が漏れでる。あれだけの傷だ耐えれる訳がない…訳がないのだが、これで終わりとは思えない
そさっきまでの動きを見ていてわかったことだが、クモは「戦闘の天才」ではない。おそらく…俺と同じタイプの「天才」だ
つまりは「策を持って全を制す」ことを得意とする策略家タイプ。だとすると、間違いなく何かある
「あれ?」
セイサから困惑の声が聞こえた次の瞬間、クモの身体が弾けて糸屑をばらまかれた
「なるほど…どうりで違和感があるわけだ」
セイサは何かに気がつき、おそらく俺も同じことに気がついた
「神楽、多分これ…詰んでる。この空間に入った時点でクモの策は成功していたんだと思う」
やはり、セイサもその事に気がついたらしい
「次が来るよ…!」
セイサがそう言って上を向くと、再度クモが天井から吊る下がってきた
「なっ…?!」
「まじですか…?」
いろいろと理解できていない神楽とシーレが困惑の表情を浮かべている。そして、セイサは確証を持った問いをクモへと投げ掛けた
「どうりで余裕なわけだ。君、人形なんでしょ?」
クモは肯定を意味する不敵な笑顔を浮かべて、笑い始める
「あは…あははは! あははははははははは!!!」
その不気味な笑い声からは絶対的な自信があった。勝ちを確信した傲慢な笑い声
「ははは、はぁ…そうだよ、私はクモの操る糸人形。本体はここには居ない。そして、この場所なら無限に糸を生むことができる…! 故に私は無限に作られ続ける」
クモがそう言いきった瞬間、セイサはクモに接近。即座に首を跳ねた
しかし、クモは糸屑へと変化し、また新しく上から降りてきた
「あらら…」
「残念だったね。もう詰んでるんだよ」
策略家が傲慢になるのは、大抵必勝の策を成功させた時だ。そして、こうなってしまえば単純な力押しでの挽回はリスクも出費も高くなってしまう
しかし、それは相手が「戦士」であればの話だ。幸い、俺は戦士ではなく策略家タイプだ…策を持って策を制す、それが策略家の戦い
ここからが本番だ。策と策の戦いを始めようか…




