創製の天使
まず最初に動いたのはソウだった。ポケットから金の破片を取り出し強く握りしめ大剣に変化させムネに近づいた
ムネは森に逃げながら2丁のリボルバーで迎撃しようとソウに何発も弾を撃ち込んだが、どれだけ打ち抜いても即座に再生されてしまい距離をどんどん詰められる
(…おかしい、核も再生している。今までの傾向から考えて創製の力を使っているのは間違いない)
ついに、距離を詰められソウは大剣を振りかざしたが、とっさに回避をしてギリギリ避けられたが、リボルバーを1丁手放してしまった
(創製は力で核を作り直している…そう考えるのが普通、理にかなっている。だが本当にそうなのか?)
ムネは考えがまとまらず、うまく動くことができていなかった、その透きを突いてソウは今まで隠していたトップスピードで一気にムネに近づいた
「死んじゃえ!」
「やば!?」
ソウの大剣がムネの首を跳ねる直前、青色の弾丸が大剣にあたり、大剣の軌道がずれてムネの首を掠れる程度で済んだ
ソウは慌てて弾道から放たれた位置を特定する、そこにはさっきムネが手放したリボルバーがあった
ムネの使っているリボルバーは別に特別な何かが施されているわけではない。特別なのは青色の弾丸の方だ、この弾丸はムネの天力によって作り出された好きに弾道や速度を操作できる特殊弾丸。もちろん引き金を引かなくても発射させることも可能だった
しかし、危機を1つ回避しただけで状況は変わらない。むしろ1日に10弾しか産み出せない弾を1発使ってしまって状況は悪化している
(このまま考え込んでいても何も変わらないですよね…)
ムネは腰からナイフを取り出して空いている方の手に持ち、気配を闇に溶け込ませた
(攻めて…みますか)
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次の瞬間にはムネの気配はプツンと消えていた。そして気配が拡散していった。木々の影のどこにでもムネが居るように錯覚してしまう
匂いを嗅いでみても森特有の匂いがムネの匂いをかき消す。嗅覚が鋭ければ気付けてたかもしれないがソウにそんな技術はなかった
耳をすませてみても木々のざわめきがムネの足音や呼吸の音を遮った。聴覚が鋭ければ気付けてたかもしれないがソウにそんな技術はなかった
大きな風が吹く、木々が揺れてガサガサと音が鳴る。そして風と共にソウの身体に5発の青色の弾丸が降り注ぎソウの身体を貫いた
森の方に意識が向いてしまい、木々に忍ばせていた弾丸に気づくことができなかった。ソウに索敵の才能があればこうなることはなかっただろう
「...うぅ」
自分の不甲斐なさにソウの目から涙が流れる。既にソウは詰んでしまっていた、なにも考えずに相手を追いかけ自分から仕掛けていた罠から離れてしまい、相手に悩みを植え付けることはできたがちょっと動かれただけでこの始末だ
いつも通り身体を作り直し立ち上がると青色の弾丸が弾道を変えて再度ソウの身体を貫く。そして何度もそれが続いた、何度も何度もソウが立ち上がろうとすると青色の弾丸に貫かれる
痛みがなくて何度でも作り直せる身体にも限界がある。そして確実にその限界に近づいていた、立ち上がり撃ち抜かれる度に意識を保つのが難しくなる
そして...
戦闘開始から70分が経過し5,000発目の弾丸でソウの身体は限界を迎えた
身体にうまく力が入らず、天力の残量も流れも悪い。意識もだんだんと薄くなっていく...
(お...ねが...、た...けて、わた...のヒーロー)
消えそうな意識の中でソウは最後にそう願い、限界を迎えたソウは深い眠りについた
(仕方ないわね、まったく)
ソウが眠りにつく直前そんな言葉が聞こえてきた
その後、1分で状況が逆転したのだった...