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それでも、足りない

空間が歪められ生まれた、本来ホームには存在しない巨大なドーム状の空間…


ここは、この駅に存在する唯一の出入り口。そのため、もちろん守護者が待ち受けていた


クモの糸を天井から垂らし、宙ぶらりんになりながらあやとりで遊んでいる少女。彼女がこの地下鉄の支配者、デットギャング所属の魔族「クモ」だ


「ふふふ~ん♪」


彼女の役割は『道』を超えてきた不法侵入者の抹殺。しかし、そんなことをしてくる連中など、片手で数えられるほどしかいないため、そこさえ警戒していればいいと、気楽に考えていた


そんな彼女の下に、1人の影が現れた

綺麗に整ったストレートの赤い髪に澄んだ空色の瞳。黒と青を基調としたドレスに身を包んでいる


「おっと? なにかよう?」


クモはそう問いかけるが、影は一切表情を変えることなく、彼女を少しの間見つめるとどこかへ姿を消してしまった


「んー? なんだったんだろ」


あの影は天域内であればどんな状況であっても現れることができるが、必要な時以外に現れることは殆どなかった。そんな存在が顔を出したのだから気になるのはしょうがない


しかし、彼女にそんな時間はなかった。別の気配が複数人近づいてきていた


「やっとお出ましのようだね」


彼女はそう呟き、薄暗い天井へと吊り上がっていった...



----------------------------------------------------------------


再度やってきた電車に飛び乗り、地下鉄の中心に限りなく近い駅へと移動し、そこからは徒歩で移動する


そうして、俺たちは目的地としていたクモの巣の中心に辿り着いた


「さてと...」


一見、他の駅のホームと変わらない。だが、明確に違う点があった。それは、階段が続いていること

今までのホームはすべて、地上への階段が埋められていた。だが、この駅の階段は暗闇へと続いている


このゲームのボス戦の前のような雰囲気。この階段を上った先にはこの地下鉄の主がいるのだろう


そのことを、他の3人も感じていた


「陣形は伝えたと通りにお願いしますね」


「おうよ!」


「おっけー」


「了解です」


3人の返事を聞いて、俺たちは階段を上り始める...


最も耐久力のある神楽を前衛。その後ろに現メンバーの中で1番の実力者であるセイサ。そして、最も俺の策に合わせられるシーレを俺の横という陣形で進んで行く


少し階段を上ると薄暗いドーム状の空間へと出た

頬にネバネバとした糸が引っ付く


「クモの糸…それも毒付きか」


糸に触れた部分がヒリヒリとする。だが、ヒリヒリする程度ということはそこまで強い毒ではない…


いや、きっとそうじゃない…


俺はシーレに耳打ちである考察を伝えた。セイサと神楽には伝えない。秘策は秘めるからこそ成り立つ策なのだ


神楽が強引に糸を掻き分けながら、空間の中央に到着する。その後ろを他3人が進んで行く


中央に全員がそろうと、3人が俺を中心として陣形を組む


ここは俺の仕事。目を閉じて五感を研ぎ澄ませる

敵の位置は一瞬で見破った。というか、分かりやす過ぎて罠を疑う


なんかカサカサ音がするし、周囲が無臭なため匂いで位置を特定できる


「上です」


それを聞いて、神楽とセイサは飛び上がる

彼らのサポートのために、俺は閃光弾を上空へと投げる


暗闇が一瞬にして晴れる。そして、天井に張り付いていた少女が露となる


「ちょっ?! まっ?!」


少女が何か言うよりも早く、神楽とセイサが攻撃を仕掛ける


「ちっ」


「外したか」


少女は2人の攻撃を避けて、地上へと降りてくる。そして、俺に目掛けて無数のクモの糸を放ってくる


しかし、その糸は上空から投げられた神楽の不屈の大剣(インビクタス)が防ぐ


俺は動かない。そしてシーレも動かない。まだ、そのタイミングではないからだ


にしても…思考転換の速さ。感知しずらい気配。動揺しつつも神楽とセイサという実力者2人の攻撃を避けた回避力…


「最上位天使クラス…か」


それに、戦いが始まり即座に陣形の穴である俺を狙ってきたということは、相手は情報をもっているということ


予想以上に厄介だ。ただでさえ、神楽とは相性が悪い相手である上に、セイサの炎もこの糸だらけの空間では、引火し全員が巻き込まれる可能性があるため使うのを躊躇っている


黒天使2人組の苦戦は必至だろう。だからこそ、俺とシーレがこの戦いの要となる。それに、秘策も用意している


「『最強』にその弟子…英雄によくわからない奴…わかっていたことだけど、辛い戦いになりそうだよ」


敵の少女がそんなことを言ってきた。それはこっちの、強いては神楽とセイサのセリフでもあるだろうが、あちらとしても相性が良いだけで格上であることに変わりはないのだろう


「私はクモよ。そのままの名前でしょ?」


彼女はそう言い華麗なお辞儀をする。すると同時に無数の色糸が上下右左から突き抜けていく。どうやら、ここからが本番らしい


俺達の間合いの糸は、神楽とセイサが切り伏せてくれた


そしてそのまま、2人はクモへと踏み込んだ。しかし、クモは2人の攻撃を避け続ける


あの2人の攻撃を避け続けてるのを見るに、回避力はピカイチ…というわけではない


やはり、神楽とセイサに目に見えない程小さい糸が絡み付いていて動きを鈍らせている。動けば動くほどに状況は相手に有利となっていく


それに、恐らく全ての糸には毒が付与されている。それも麻痺毒。無闇に動けば気づかぬうちに毒まみれで動けなくなる…


故に、俺とシーレは極力動かないようにしている


クモは避け続けるだけで相手が勝手に倒れていく。ならば、こちらも動かない


「強敵だな。実力としては最上位天使の上の方と互角…」


「状況も相手が有利。相性も悪い。勝てますかね?」


「考え方を変えれば、そこまでして、ようやく互角程度になる。つまり、基礎的な実力は圧倒的にこっちが上だ」


強敵だが、それは状況が不利なだけ。この3人がいれば、どうにでもできる。秘策もある


「…」


こうなれば、あとは敵を倒すまでのプロセスを踏むだけの単純な作業。なにも感じない。感じることができない


今の俺の最大の課題。感情の感覚を思い出す

それができれば、全盛期の『神秘』を解放することができる


これほどの状況不利でも、それでも、足りない

彼女程度では、熱くもなんともならない

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