深き夢の世界
白姫の残した手がかりをもとに、神隠しによって消された人々の行き着いた天域を特定し、協力者と共にそこに乗り込んだ
天域までの接続部分を突破した俺たちは、ようやく、本来の天域へと足を踏み込んだ
「ここは…地下の線路のようですね」
普段見ることがないため断定はできないが、十中八九ロンドン地下鉄だろう。だが、今の地下鉄はこんなにもボロくない
天井は割れて、瓦礫は水の中のように浮かんでいる。こんなの現実ではありえないため、無事「天域」にたどり着けたのだろう
問題は、ここがどこの線路なのかが分からないことだ。これでは右と左、どっちに向かえばいいのかが分からない…まあ、どっちに向かってもいいのだが
「地下鉄か、それじゃあ行こうぜ」
そんな俺を横切り、神楽がずかずかと進んでいき、俺はその背中を追う。迷っていても仕方ないし、前衛が前を歩くのは普通のことだ
そして自然と前衛が神楽。次いで俺。その後ろにシーレで、殿がセイサという形となった
俺は歩きながら周囲を観察する。戦闘能力が皆無に等しいのだから、そういう部分が俺の役割だ
では、さっそくその役割を果たすとしよう。用は考察だ
さっきまでの天域がショッピングモールだったのは、移動する天域の門とそこに繋がる道がショッピングモールと重なっていたからであって。もし、違う場所ならば、あの天域の見掛けも変わっていた
しかし、ここは違う。移動はしているが、まだロンドンだ。完全に別の水域に移ったのなら、罠を仕掛けられないのは仕方ないが、ここには十分な時間があった
つまり、十中八九罠がある。地下鉄は暗く、狭く、罠を隠しやすい。しかし、巧妙に隠すよりも、堂々と回避不能の罠を仕掛けた方がまどろっこしくない
いや、おそらくこれは罠ではないな。確かに、ここにあって当然の物だ
後ろから、物凄い速度で何かが接近してくるのがわかる。もちろん、地下鉄に走るものなんて1つしかない…電車だ
「止まって…そして構えてください」
俺のその言葉を聞いて、全員が即座に臨戦態勢となる。俺はかなり信用されているようだ
キィーッという鉄の擦れる音が聞こえた。その音で、俺以外の他3人も接近してく電車の存在に気がついた
全員実力者にして戦いには慣れている。そのため、経験で理解していた、この場において「逃げ」は悪手だと
ならば、どうするか。単純だ、正面から打ち破る
俺は拳銃を構えて、電車が視界に入るのを待つ…
「!!!」
電車が視界に入った瞬間、思考が一瞬で加速し、周囲の動きがゆっくりとなった。そんな中、俺は電車を深く観察する
そして、視界から得られる情報をもとに、電車の最も脆い場所を特定し、そこに弾丸を打ち込んだ
俺の特定した場所は、運転席正面の最端に付近。正面の中で最も勢いがなく、強化ガラスと装甲の繋ぎ目となっている部分
銃弾が着弾する。瞬間、他3人の遠距離攻撃が打ち込まれた部分に集約される
シーレの呪術で劣化し、セイサの天術でダメージを与えて、神楽の投擲した不屈の大剣が風穴を開ける
「今!」
俺の合図とともに、全員が風穴から電車の中に乗り込んだ。壁にぶつかった際の衝撃は、そのままで変わらなかったが、神楽がクッションになってくれたおかげで俺も無傷で済んだ
「神楽さん。助かりました…」
「おうよ、若者を守るのが大人としての役割だからな」
本当、素晴らしいと感じていたであろう人だ…
天否視点、約5ヶ月ぶりなんですよ。少し間があいたっていいじゃないですか?!




