解釈ズル
白黒の稲妻のような斬擊が刀より放たれる
レフレクシオンは空間跳躍のクールタイムを把握していた。そして、戦いながら本当に少しづつ攻撃の速度を上げていった
そして、無意識の内に怪盗はその速度に合わせていき、見事にレフレクシオンの策にはまった
(…なんだ?)
レフレクシオンは核を破壊する勢いで斬擊を放った。なぜなら、怪盗が死んだとしてもリバーサルが死ぬ訳ではないからだ
そして、怪盗の逃げ場は完全に封じていた。空間を裂いて物理が干渉不可能な『境界』を使い四方八方を塞いでいた。回避は不可能なはずだった
しかし…
(手応えが…ない?)
斬撃は確かに怪盗のことを捉え、その地点を切り裂いた。そのため、ついさっきまで怪盗の居た場所には、大きな空間の裂け目が生まれていた
レフレクシオンの頭が一瞬静止し、その後、周囲への警戒を強める。だが、なんの気配も拾うことができない
そんな時、どこからか怪盗の声が聞こえてきた。その声は、様々な方向から聞こえてきたため場所を特定することはできなかった
(成功? 成功したんだよね? もしもーし?)
拍子抜けな声色に困惑しつつ、警戒は解かないようにする。というか、口調が怪盗ではなくリバーサルのものに戻っている
(おーい、レフレクー? 返事してくれー)
「はぁ...どうしたんだ?」
(お、あ? 聞こえたってことは成功したんだ。やった)
状況が読み込めないレフレクシオン。しかし、気にせず怪盗は喋り続ける
(ふふふ、ズルをした。そして、うまくそれに成功した。今回の勝負は私の...)
「勝ちだ」
背後から聞こえたその声は、怪盗と同じ声を発するもう1人の声の主…
子供っぽくその場でぴょんぴょんとジャンプをし、毛先が色とりどりな白髪をフワフワと上下させている少女
見た目だけで言えば、ボロボロの布切れのような服を着ている、痩せ細った貧困少女。たが、その正体は『秩序』の最重要人物の1人…リバーサル
「こうなったら私の勝ちだ…とは、断言できないけど、まあ、その…続ける?」
リバーサルは大天使の第2位。それに対して、レフレクシオンはデッドギャングの大魔人第2席。2人とも組織の2番手という点で言えば同じだが、実力が近しい訳ではない
断言してしまうのならば、全力の戦いとなったら、レフレクシオンよりもリバーサルの方が強い。だが、それを理由に逃がすのをレフレクシオンは癪に思った
「そうだな、では一撃だけ…」
刀を鞘に収め、乱れていた魔力を整える
「あはっ、了解。でも、そのまえに~」
そう言ったリバーサルは、お得意の空間跳躍で怪盗の消えた「世界の裂け目」付近に移動し、境界に手を突っ込んだ
「そういえば、ネタばらしがまだだったね。今回わたし
…じゃなくて、怪盗使ったズルはなんだと思う?」
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レフレクシオンは魔力を整えながら少し考えてみる
まず考えるべきは『概念の拡大解釈』だろう
リバーサル以外には誰も到達できていない「自意識の極意」…その技は、使えば自分の中にある様々な設定を拡大解釈をすることができる
怪盗が「ズルをした」と言う場合、まず間違いなくこの技を使っている
そして、リバーサルは今、境界に手を突っ込んで何かを探している。この場合、探しているのは十中八九「怪盗」だろう
つまり「何をどんな風に拡大解釈したら、物理の干渉できない境界に入ったか?」を考えなければならない
「問題文にはたどり着けた? なら、ヒントをあげるよ。私と怪盗はどうやって成立してると思う?」
一方的に与えられたヒントだが、なんだかんだでありがたかった。答えに辿り着けないのはモヤモヤするので、戦い関係なく「解」は導き出したかった
まずは、ヒント「リバーサルと怪盗はどうやって成立しているか」についてを考えてみる
怪盗の生まれかたについては、レフレクシオンも知っている。リバーサルの核を半分砕き、その半分を鉱石型ゴーレムに埋め込んで生まれた天使
在り方としては、宇宙の大天使と重力の天使のものに似ているが、決定的に違う部分がある
ユーリはもともと、深海から上がることも落ちることもできないユニバースが、自由に世界を見て回れるように作られた第2の身体であり、2つの身体を魂が入れ替わる形で成立している
しかし、リバーサルと怪盗は違う。怪盗にはリバーサルの魂が宿っているが、リバーサルの身体から魂が移った訳ではない。全く同じ魂が、同時に存在しているのだ
おそらく、今回のズルはそれに関与しているものなのだろう。ならば、それはなんなのか
複数の身体を平行して操ることは、並立思考を使えれば割と簡単に可能となる
しかし、リバーサルのそれは1つの魂が複数の思考を持つのではなく、2つの魂がそれぞれ思考を有しているということ…
なんとなく、答えが見えてきた
境界は物理の干渉することが不可能な、世界間を隔てる壁であり、本来は死した者の魂などしか通ることができない
天使は、核さえ残っていれば成立する
怪盗の核は、リバーサルの核の半身…そしてリバーサルは外付けの天使
「なるほど…」
「おやや? 何かに気がついた顔だ」
「ああ、答え合わせをしよう」
回答の前に要点をまとめておく
怪盗はレフレクシオンの攻撃を避けるために、本来物理の干渉不可能な『境界』へと侵入した
天使は核さえ残っていれば成立する
リバーサルと怪盗は同じ核を持っており、記憶や意識も共有しているが2人はそれぞれ別の魂を宿している
そして怪盗は、何かしらの解釈を拡大している…




