暗部の時間
時刻は深夜11時 眠らない都市から少し離れた山奥、月明かりが雲に遮られ濃い闇が木々を包んでいた。そして2人の天使殺しが集まっていた、ルジとフィオナである
「ホントに急だね、まあいいんだけど」
「すみません、今朝ビルさんに頼まれまして…」
「ふーん、何を企んでるんだろうね」
「…わたしも何も伝えられてないので」
「そっか、手伝うからには働かせるから覚悟していてね」
ルジの衣装は天使殺しの紋章が縫われている黒いシャツに、紫のネクタイ、その上から黒いスーツを着ていて、ズボンも黒色で腰には黒い剣のモニュメントが携えられており、夜の闇によく溶け込んでいる。この衣装は天使殺しが本気でミッションに挑むときに身に纏う勝負衣装であった
フィオナもルジと同じく天使殺しの勝負衣装を身に纏い、刃の部分が鉱石でできているナイフをスーツの裾に携えていた
「そういえば、ムネ様はどちらに?」
普段ならば常にルジと一緒に行動していたはずだが、辺りを見渡してもムネの姿はなかった
「ムネには先に行って罠に引っ掛かってもらってる。危険だから俺がする予定だったんだけど、なんかやってみたそうだったから任せてみた」
「敵の罠に自ら掛かりに行ったのですか?!」
フィオナの驚いた声は深夜の森によく響いた
「んーと、フィオナに先輩としての助言。罠にはね制作者の考えが反映されていて、一定のリズムのようなものがあるんだよ。「この部分にこんな罠を仕掛けたらこういう風になってくれる」みたいな。強い罠師はそういうリズムを作るのがうまいんだけど、下手だとすぐにリズムに乗られて対処されちゃう」
「難しいですけど、要するにリズムに乗れれば罠を回避できると?」
「そう、なんなら相手の罠のリズムを乱して逆に利用できるかもね。まあ、そこまでの価値がある罠はないだろうけども」
するとフィオナが胸ポケットからメモ用紙とペンを取り出してメモを取り始めた
「なるほど…勉強になりました」
フィオナがメモをとっていると屋敷の方から天力と天力がぶつかる波動が放たれてきた。その波動が激闘の始まりを告げたのだった
「よし、暗部の時間を始めようか」
そう言って2人は屋敷に向かった。その2人を後ろから見ていた人物が居た、アメリカ支部長のビルである
「始まったね、それじゃこちらも始めようか」
そう言ってビルは振り返った、その先にはユーリが臨戦態勢でビルのことを見つめていた
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ルジとフィオナが動き始める少し前、ムネは一足先に屋敷に侵入していた。屋敷といってもアニメに出てくるような巨大な屋敷という訳ではないので部屋の数は少なかった
しかし、ムネが窓から屋敷に侵入し廊下に出ようとしてドアノブに触れた瞬間、扉が爆発してムネは屋敷の外に吹き飛ばされてしまった
ムネが外に吹き飛ばされた後に、さっきまでムネが居た部屋の窓にソウが腰をかけて座っていた
「まんまと引っ掛かったな、ばーか! こないだの借りを返してやりますよ天殺野郎!」
そう言って余裕綽々に窓から飛び降りてきたが、ソウが着地した時にはムネの姿は闇に消えていた
「ありゃ?」
ソウが間抜けな声を漏らした瞬間、暗闇から3発の弾丸が飛んできてソウの体の核を貫いた。ソウは倒れて暗闇からムネが出てきた
「油断しすぎですよ。これなら普通の天使殺しでも勝てますよ」
ソウは全く動かない。当たり前だ、ムネは前回の戦闘での動きからソウの核の位置を予測してその部分を撃ち抜いた。そして確かに手応えを感じた、弾丸が貫いた時に確かに相手の天力は乱れた、その乱れは天使が消滅する際に発する乱れと同一のものだった
「…」
確かに仕留めたとムネは確信したが、その確信が疑問を生んだ。最上位天使にしては流石に弱すぎる、確かにムネ自身かなりの実力だと自負しているが、こんなにも早く倒せるほど強くはない
ムネが思考をまとめようとし停滞していると、ソウが立ち上がった
「けっ! 油断して近づいてきたら、全身串刺しにしてやって「油断しすぎなのはそっちだ、バーガ」と言ってやったのに」
「…どういう原理なんですか?」
確かにムネはソウの核を撃ち抜いた。可能性が在るとすれば「打ち漏らし」か「核をまだ隠している」の2つが有力。しかし打ち漏らしたとは思えない、それに天力の乱れは確かに3ヶ所で起きていた。核を隠してる可能性はゼロではないが、そんな素振り全くなかった
手札がわからないだけで戦術を組み立てる難易度は大きく変わる。逆に相手のソウはムネの情報を持っている。この差は2人の間にある実力を埋めるには十分な要素だった
ここからソウの快進撃が始まる…
いくいねし
いだよがま
ねさおいす
タテヨミ