混沌地点
ある日、私はふと思った。”天使の核って、離れ離れでも問題ないのか”と...
天使の『核』の機能は肉体に意識を結びつかせる機関。これが壊れると天使の魂は行き場を失い散り散りのバラバラになって消滅一直線。天使って下位世界では元々「偶像精神体」っていう空想上であり理論上の「幻」だったのが、天神様の力で核に宿ることで顕現した種族だからね
そして、強い「権能」と「意志」を持つ天使は核が複数に分かれることがある。そして、権能は意志に宿る…
私はひらめいた。複数の核を別々の肉体に埋め込めば、意識が二つの肉体で行き来できるのではないのだろうかと
思い立ったら即行動。私は速攻で「玩具屋」っていう物作りの専門家に相談をした、すると偶然その場にいた「ライフちゃん」も協力してくれて一体のゴーレムを作ってくれたんだ
「危険なので、実験は自分でしてくださいよ」
玩具屋がそう言い最初の実験体は私になった。確かに私は核を無数に持っているし、そもそも外付けの天使だから核が爆散しようが消滅するこはなく、今回のモルモットとしては最適任だったのだ
私はウキウキで自分の核をそのゴーレムにぶち込んだ
(そして、実験成功大成功。私は何事もなく第二の身体を手に入れることが出来たのでした。でめたし、でめたし)
金星は洞窟内を捜索しながら、そんな話を聞かされていた
「それが「怪盗」なんだな。だが、聞いた話とは性格が違う気がするんだが...」
(それは素の私の性質の問題だから気にしないで。私って性格に一貫性がないのだよ)
「そうなのか? いや、そうだな」
金星はここまでの怪盗とのやり取りを思い出して、そのことに納得した
(とまあ、これが謎の暗躍者の正体ですよ。私(本体)はこうして捕まっていてからね)
「俺としては、どうしてお前が捕まっているのかの方が気になるんだがな」
(それは後でのお楽しみで~す。事件の根幹に関わることだからね)
やはりこれだ。どれだけ金星がそのことを追求しても教えてくれない。さっきからの会話も、普段なら声色から少しでも真偽を聞き分けられるが、怪盗の声色からは遊楽しか感じれれなくて真偽を判別できない
それならば、さっさと怪盗のことを助け出し情報を聞き出した方が悩まずに済む
「それで、とりあえず適当に洞窟を歩いている訳だが...」
この結界内はあきらかにおかしい。なぜなら、いま金星が立っている場所が、さっきまで歩いていた場所の天井なのだから
「おい、どうなってるんだ?」
(この結界はね、私を閉じ込めるためだけに作られててね。私のきょ…ケンノウ?対策で場所が常に変化し続けているのだ)
なぜか、怪盗が自信満々にそう言った(頭の中で)ここまでしないと逃げられると思われていることに自身を感じているのだろうか...いいや、怪盗は何も考えていないのだろう
(私のケンノウは『座標移動』っていうので、文字通り座標を自由に行き来できるのだ。まあ、それ対策で座標が常に変容し続ける結界に閉じ込められちゃったんだけどね)
なるほどと思った。だから怪盗本人でも自分の場所を明確に把握できていないのだろう。こうなるとマッピングには意味がなくなる。地道に探すしかないのだが心には焦りが沸々と湧き出てくる
「少しでも情報が欲しい。なにかないのか?」
たとえ意味のないような情報でも、その情報の有無だけで天と地ほどの差がある。それに、ただ闇雲に探すのは精神的にも辛い。人間、目に見える進展がなければ絶望してしまう
怪盗が情報をもっていないとしたら、見張りの魔族の記憶を覗くことにすればいい。そして、案の定そうすることとなった
幸い外の状況が伝わっておらず、厳重体制ではなかったので大抵の魔族は油断しており記憶を除くこと自体は余裕だった
しかし、新たな情報を知ることによって新しい問題も知ることとなった
どうやら、怪盗の捕らえられている独房は道が繋がっていない場所にあり、特定の時間に特定の魔族が合言葉を言わなければ開かないようになっているらしい
しかも、その特定の魔族というのが上で戦った二人と同列の魔族らしい。記憶の中ではなぜか大怪我をしていたが、それでも一人では勝てる気がしない
普通に無理ゲーだ。全盛期の天否レベルじゃなければ力業で開けられない。だが、どうにかしなければユリーノの命が危なくなる、しかし方法が見つからない…
情報を得たことで逆に途方に暮れることとなってしまった。しかし、金星は思考も足も止めずに洞窟内をさ迷い続ける。そんなとき、怪盗がある作戦を思い付いた
(君の契約天使の権能は『調和』なんだよね?)
「ああ。概念や物質、感情に天力をぶつけて浸透、調和させられる。攻撃力はないが守り方面ならなかなかな力だと思っている」
調和は言わば、プラス軸もマイナス軸もゼロにする力であり、集中は必要だが逃亡や洗脳では役に立つ。だが、その情報が打開策に繋がるのだろうか
(なら、今いる場所を調和することはできるの?)
「何を調和するかによる。少なくともこの結界の『変容』は性質そのものだから調和することはてきない」
(ううん、調和するの性質じゃなくて主軸だよ)
「は?」
(つまり、結界の中心点と『調和』というなの『同調』というなの『干渉』をすれば、座標が0.0になるから私はその場所に飛べるようになるんじゃないのかと提案します)
「ああ…確かに」
怪盗の案、それは普通にありだった。リスクはあるし天力も大量に消費することになるだろうが、やってみる価値はある
だが問題が一つある。それは、結界内の全ての魔族に場所がバレること
魔族の記憶によれば結界の中心点は魔族の出入り口で、特殊な術を使えばそこへの道が生まれるようになるらしい。つまり、中心点と調和している間は金星に繋がる道になるということ
警備の魔族は11体でその内の1人が大魔族。大魔族が来たら勝ち目はゼロ、もうどうにもできない
他の10体はあまり強くはないとは言え、調和しながら攻撃をすることができないのに加えて、地点を固定するためにその間は移動することができない。つまり回避なし、調和なしで怪盗が飛んでくるまで耐えなければならなくなる
ハイリスク過ぎる…だが、現在最大の驚異である大魔族が負傷している。あるいみ今しかチャンスはない…
「怪盗、お前の案でいくことにする」
ここは覚悟を決めるしかなかった。もう迷っていつ時間ももったいない、いまこの瞬間もユリーノは格上相手に一つも間違えない駆け引きのなかなのだ。少しでも早く怪盗には約束を果たしてもらいた
(んー、了解。頑張ってね)
「頑張ってやるよ。ユリーノのためにな」
金星は自身の天力を圧縮して、それを槍状に変化させて地面へと突き刺した。そこから、結界の本軸に天力を突き刺し同化させていく。そして、危惧したとおり洞窟の形が変化して十本の道が現れ、それぞれ十体の魔族が道の奥から歩いてきた




