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堕落の香


薄桃色の霧がより濃くなり、もはや霧以外になにも見えない状態となってしまった。これでは逃げることも困難だろう


「竜の混血と聞いていましたのに、呆気なく倒れてしまいましたね。それとも、わたくしの香が強力過ぎたのでしょうかね」


強者だ、間違いなく格上の敵だ、金星の経験がそう叫んでいる。何故なら、この魔族から放たれる気配は大天使にも匹敵するレベルのものだからだ


「ふふふふふ…怯えていらっしゃいますのね。しかし、わたくしを恐怖しているということは「堕落の香」が効いていないようですわね」


「あいにく、毒系統の力は俺には効かないものでね」


入ってくる毒は片っ端から「調和」することで何とかしているが、金星の天力にも限界はある。このまま食らい続けていたら流石にヤバい


「…そのようですわね。ならば、直接手を下すまでですわ」


すると、魔族は霧の中に姿を消した。もちろん逃げた訳ではなく、霧に隠れて攻撃をするつもりにだろう

霧のせいで敵の気配が拡散して、どこから仕掛けてくるかが読めない。それに加えて四方八方から「ふふふふふ」という不気味な声が聞こえてきて気が散る


「いきますわよー」


魔族がそう言った瞬間、霧の一部が僅かに揺らぎ、そこから金星に向かって一直線で紫色の閃光が突き抜ける


金星はギリギリで避けて、閃光はそのまま霧の中へと戻っていった。しかし、すぐさま別の場所が揺らぎ、そこから再度、紫色の閃光を残す速度で魔族が斬りかかる


(本格的にヤバいな。隙を作るどころの話じゃない)


次第に攻撃の頻度と速度が速くなっている、一撃でも食らえば再起は不可能。だが、このまま避け続けてもジリ貧になるだけ


暗部最大の長所は「手札を隠している」こと。だが、隠したまま死ぬぐらいならば、生きるためにその手札を切る


(速さに目が慣れてきた、これなら一撃ぐらい問題ない)


金星は駆け引きに強い。なぜなら彼は勝利に愛されているのだから


霧がなびき、そこから魔族が突撃してくる。だが、それは分かっていたこと。重要なのはその先、魔族の持つ剣の剣先を捉えて、それを天力で強化した右手で受け止める


「くっ、うっ…」


膨大な天力と魔力がぶつかり合い、その衝撃で周囲の倒れている魔族は吹き飛ばされ、辺りの霧も雲散する…


「くっ…はぁっ!」


金星は力強く叫び、魔族のことを吹き飛ばした。しかし、大した距離ではなく、ダメージも僅かしか与えられなかった。魔族は無言で剣を握っていた手を見つめてから、金星の方の手を見る


金星は賭けに勝った

いま金星は片手に天力を集約させ、その力を使い「剣の勢い」や「魔力」を調和させて威力を弱め、余った天力で魔族を吹き飛ばした。もし、天力が足りず調和しきれなかったら、身体が切断されて即死だった


「なるほど、調和…予想以上に優秀な力なのですね...」


そう言って、魔族は感心したような優しい眼差しで金星に微笑みかけた。彼への評価を改めたのだろう

魔族はドレスの裾をつまみ上げ、丁寧にお辞儀をする


「わたくし「デットギャング」の大幹部の1人、大魔族のパルファムといいますわ。死ぬ前に覚えておいてくださいまし…」


「パルファムか...覚えておこう。だが、ここで死ぬ気はないんだ」


「へぇ…まだわたくしに勝てる策があると?」


「ああ、その通りだ。策なんていくらでもある、なにせ俺()は卑怯だからな」


金星がそう言い、パルファムがそれに気づいた時にはもう遅い。精々、視線を向けることが限界だった。ずっと気を失ったフリをしていた、竜の血をその身に宿す少女へと...


「『伝剣抜刀』 竜式剣術…白線!」



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