ヨーロッパの影
天否達による天域攻略から視点は変わり、ヨーロッパ支部長秘書であるユリーノは、支部長ラズによってお茶会に半強制参加させられていた
「やっぱり、疲れた脳には糖分が一番よね」
「ラズはほとんど働いてないよね。ずっとずっとお菓子作って部下に渡してただけだよね?」
「そうよ? 偉いでしょう」
「はいはい、偉い偉い...ラズの中に居るガブリエル様が」
そう言うと、ユリーノの脳に直接少女の声が伝わってきた
『ありがとう。でもラズがお菓子を作ってくれなきゃ、皆に純度の高い生命力を送れなかったから、そんなに強く言わないであげてね』
声の主はラズと契約している天使『ガブリエル』本人である。ガブリエルはヨーロッパの異変にいち早く気付き、その手助けをするため、ラジエルのように契約者の中に住み着いているのだ
「甘やかしてはいけないよ、ガブ様。戦えなくて事務作業もできないままなら、いつラズがクビになってもおかしくないんだから」
「リンナはそんなことしないわ」
「それは私もわかってる。だから、少しはリンナさんの役に立つようなことを…」
「お菓子作りね…」
「話きーてないのか、この人は…」
やはり、ラズさんとの会話はうまく噛み合わない。お菓子の食べ過ぎで頭が糖に溶かされているのだろうか
「はぁ、この話はもういいから、話題を変えるね」
ユリーノは空になったティーカップに紅茶を注ぎ、ラズはマフィンを1つ頬張り始めた
「天否達が何かに気づいたみたいでね。誰かの電話のせいで細かい詳細は聞きそびれちゃったけど、『神隠し』に関することだろうね」
ユリーノは角砂糖を1つ紅茶に入れて、スプーンでかき混ぜる
「天否は腐っても『最強』だし、神隠し異変の方はあっちがなんとかしてくれる。だけど、問題の本質はそこだけじゃない」
ユリーノは数枚の紙にまとめられた「とある資料」をラズに渡した。ラズは軽くペラペラその資料を読み、テーブルに置いた
「ユリーノちゃん、つまり…どういうことなの?」
もはやこの人は一発殴った方が良いのではないかと思えてきた。今軽く資料に目を通したのは、読んだのではなく、読めない事を確認したのだろう
「まったく…その資料には裏組織の動向が書かれてる。つまり、ギャングについてのこと」
「ギャング達がどうしたの?」
ラズは紅茶片手に首を傾げた
そんなラズのために、ユリーノはテーブルに置かれた資料をめくり、ある一点に指を指した
「最初の『神隠し』が起こったと同時にヨーロッパでの活動が活発になった組織があるんだよ。しかも、その組織ができたのはかなり最近…偶然と思う?」
ラズは話を聞きながらユリーノが指差した場所を読むが、あまり理解ができていないようで、目の焦点が次第にずれていっている
「ところで、この情報源って誰なのかしら?」
無理やり話を反らしてきた。ユリーノからすれば、そこまで難しい話でもないのに
「情報源は『金星』さん。たまたま彼もそっち方面を探ってたみたいで、けっこう色んな情報が手に入れられた。今もヨーロッパのどこかで活動してるんじゃないかな」
「顔を見せてくれたら、お菓子をご馳走してあげるのに」
「それに関しては連絡手段が無いから仕方ないからね。なんで、スマホ買はないんのかな、アイツは」
暗部組織『星』の一員であり、滅多に表に現れないタイプのガチガチの暗部。滅多に現れなさすぎで、同じ暗部組織に所属していても連絡するのに苦労している
『日陰者』や『影踏人』の2人は独自の人的ネットワークを使い見つけているため、あまり苦労はしていないらしい。その人的ネットワークを『星』にも別けてもらいたい
「とりあえず、ユリーノちゃんの言いたいことはわかったわ。しばらく、こっちの仕事から離れるってことでいいのよね?」
「なんでその部分だけ理解が速いのかな? なに、今までの無能っぷりは全部演技なの?」
「私は支部長なのよ。無能なわけないじゃない」
そう言ってラズは優雅に紅茶を口にする。そんなラズのことをユリーノはジト目でじっくり観察していた
「…確かに。ラズは『無能』ではないか」
そしてユリーノも紅茶を飲み始める
そこから先は割と普通のお茶会…とまではいかないが、そこまで複雑な話は出てこなかった
そして、紅茶を飲み干し、お菓子も全て食べたところで今回のお茶会は終了となった
片付けはラズがやると言い、ユリーノはその言葉に甘えることにして席を立った
「頑張ってね、『月』」
ユリーノが部屋を出る瞬間、ラズはそう言葉を投げ掛けてくれた。ありきたりな言葉だが、言われて嫌な気分にはならない
『月』は拳を握り呼吸を整え、感覚を暗部へと切り替える。そして、月は行動を開始した
読んでくれてありがとうございます!
お星様(評価)欲しいなぁ~…なんて~
(/ω・\)チラッ




