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深海への潜水


「ふぅ~む…」

神楽は頭を抱えていた。それも、そのはず、辺りが一変してからショッピングモールを一通り見回ったのだが、特に何も見つけられないでいるのだ


「坊主、本当にここで合ってるんだよな」


「合ってますよ。この天域に入って、白姫に貸している指輪の気配が強まったんです」


しかし、白姫の気配は感じない。力を抑えて、隠れているのだろう。白姫ならそうする


指輪は神秘を封印されているため、天否以外はその気配を感じることはできない。だから、敵も白姫のことを捕捉できていないのだろう


だが、天否も細かい指輪の位置は捕捉できていない

それに、この天域内では天力の流れがどこかおかしい


その事にシーレとセイサも気づいたのか、さっきから目を閉じて意識を天力の流れに集中させている


天力以外の流れは正常なので、天力を持たない「英雄」の神楽と、神秘を封印されている天否では、その違和感を突き止めることができない

今は、2人に頼るほかないだろう



その間、天否は神楽は、2人の邪魔にならないように壁側に避け、2人で少し会話をすることにした。内容は白姫についてだ


白姫は人と天使のハーフ。そして、人であった父親は下位世界の「英雄」と呼ばれる組織に所属していた


神楽は「英雄の長」…つまり、白姫の父親の上司ということになる

白姫と神楽は面識があったらしく、ヨーロッパで彼らと出会ったときに白姫と会話が弾んでいた


そこで初めて知ったのだが。「黒天使」という組織は、英雄の守護天使達によって構成されているらしい。だからこそ、彼らは天使ではなく人に味方するのだとか


そして、神楽さんは下位世界で唯一生き残った純粋な人間らしい。そう…下位世界は()()()()()


そもそも、天使達は侵略のために世界に入り込んできた訳ではなく、避難のためにやってきたらしい


だか、秩序の象徴である「天神」が、1人でも多くの生命が逃げれるように時間稼ぎをした結果、彼女は独力で超越ができない程に弱ってしまい、彼女は今も下位世界に取り残されている


「天神」直属である「大天使」は、超越に成功した天使達を取りまとめようとしたが、不安感に負けた天使達は暴走した。その隙に付け入るように「自由の悪魔」や「追放天使」などの個人勢力も暗躍する


結果、一概に最上位天使が全員仲間という訳ではなくなったらしい。大天使も最低限の秩序の維持以外は諦めて、今は天神を引っ張りあげることの方を優先させており、現在に至るという訳だ


白姫はそんな激動の中で、偶然とはいえ天否と出会えた。そこに至るまでの道のりで、一緒に学生時代を過ごして、超越も一緒におこなった1人の親友とヨーロッパで離れ離れになってしまったらしい

白姫がヨーロッパに来たがっていたのは、その親友の行方を追うためで、神隠しの調査と並行してその親友についても調べてみたが、目ぼしい情報を掴めないでいた


「白姫は、どんな子だったんですか?」


天否は、下位世界での白姫のことをあまり知らない。幼少期のことも学生時代のことも...

断片的にであれば何度か話を聞いたことがあったが、詳しいことは知らない。この機会に現相棒についての見識を深めておきたい


「白姫か...そうだな、あまり良い印象は無いな」


その回答は天否にとって意外なものだった

天否から見た白姫は、優しく気が使える相棒だ。誰かを見下すことも無ければ、自分を卑下することも無い。少しでもこの世界に馴染むために、日々精進している


「英雄は自らの『意志』を武器に変えて扱うことが出来る。当時、白姫の両親は『意志』の力よりも天使の『権能』の方だけを覚えさせた。それは、白姫に宿った『意志』が『否定』だからだ」


否定…ネガティオ

神東神喜との戦闘の際、ラジエルが与えた記憶の欠片から垣間見えた父の力。それを闇雲に再現することで開花した白姫の「英雄の力」


だが、神楽の話を聞いて理解した。英雄の力『意志』は、血の繋がり以上に本人でも意識できていない根源的な『思い』が影響を与えるのだろう。そして、白姫の『意志』は『否定』だ...あまり良いものではない


白姫の両親は、幼い白姫に『否定心』を抱いてほしくなかったのだろう

成長すれば自ずと感情を隠せるようになる。しかし、無垢な子供は違う、思ったことを惜しみなく口にしてしまう。それで周りの人を傷つけてしまえば、巡り巡って自分を傷つけてしまう


「白姫の親は、良い親だったのですね...」


「ああ。実力を抜きにすれば、あの2人は間違いなく「最強」だった」


そう答えた神楽の声からは、哀愁を感じた

それもそうだ、白姫の両親はもう死んでしまったのだから


この異変が解決したら、神楽にも白姫の家族のお墓の位置を相談するとしよう

そして、お墓を建てたら、神楽にも場所を教えてあげることにしよう


「それで、神楽さんから見て白姫はどのぐらい強くなってますか?」


そう聞くと、神楽は顎に手を当てて少し考え込む


「そうだな…経験は少ないが、天使の力だけで最上位天使になれるだけのポテンシャルは持っている。そこに英雄の力も加わった...相性もあるだろうが「最上位天使の中堅といい勝負」ってのが今の評価だな」


「なるほど...」

白姫の実力に対する神楽の評価は、天否と似ていた


白姫の母親である「創生の天使」は、神の権能の一部である「武装創生」が継承され続けており、「神の天使」と言われ、天使達の中でも特別な存在であった。そして、しっかり白姫にも、その「神の権能」は継承されている


ポテンシャルは確かに本物...だが、経験と知識不足

そして、『力』に特異性はあるが、基礎戦闘技術に特質は無い。要は特殊「否定(ネガティオ)」を持っているが、使用者である白姫が、それを使いこなせていないということだ


シーレは白姫に近接戦闘技術の基礎を教えているが、本当に重要なのは基礎の先、どう応用するかが重要になってくる


「武装創生」と「否定」この二つの力を同時に使えこなせるようになれば、最上位天使20位以降の相手とも勝負できる実力にはなれるだろう



丁度話がひと段落したところで、シーレとセイサの2人が話しかけてきた


「師匠、どうやら私たちから僅かに天力が抜き取られているみたいです。本当に僅かで、集中しなければ気づけませんでした」


「私も、まったく同じだね。天域の効果かな? どうやら、抜き取られた天力は下に向かっているみたいだよ?」


「下?」

今、天否達がいるのは1階だ。ここより下は本来は存在しないはずだが...


…いや、ここは天域。周りの風景はショッピングモールに似ているが、空間としてはまったく別の場所

空間の完成度も凄まじい。小さな異世界を生み出して、そこに天域を展開している


神秘力で異世界空間を作れるのはルミが教えてくれた。どうやら、こちらの世界の天力とあちらの世界の天力は完全に別物らしく、下位世界の天力は世界エネルギーそのものらしく、細かく理解することが出来れば、結界の拡張として異世界程度は作れるらしい



現実世界に存在していなかったのだ、今まで天域を見つけられないのもしかたない


ヨーロッパ各地の水から微細な天力が宿っているのも、異世界にある天域と、こちらの現実世界を繋いでいたのが「水面」だからだろう。水面に映るには、もう一つの世界とはよく言うものだ…


ラジエルの術式で、水面に映る異世界に潜ることはできた。しかし、まだ天域には到達できていないのだとしたら。そしたら、指輪の気配を捕捉できないのにも説明がつく


おそらう、ここは「異世界」ではあるが「天域」ではないのだろう。だとしたら、天域はどこに展開されているのか


答えは簡単、下だ


おそらく、シーレとセイサから、僅かに天力が抜き取られていたのは、天域の効果があふれ出たものだろう。あふれ出た効果だからこそ、ごく僅かだけしか天力が抜き取られなかったのだろう


天域は下に展開されており、天否達は既に異世界へと侵入できている

そして、下への階段は存在しない。だか、とても単純な解決法がある


「シーレ。エンジェルリンク10%で床を砕いてくれ」


「床をですか? 分かりました」


「それと、砕いたら即座にエンジェルリンクを切って」


「了解です」


普通ならば巻き込まれないように、端に避難するのだが、今回は、逆に全員をシーレに近づけさせた

そのことにシーレは疑問を持ったが、天否が頷くと、問題がないと信じ足に力を込めて、思いっきり地面を蹴りつけた


地面に青白いヒビが入り、一気に地面が砕ける


下にもショッピングモールが続いていたが、天否達が立っていた場所は、下層が見えないほど巨大な穴が空いており、天否達は自由落下状態となってしまう


「言われた通り、エンジェルリンクは切りましたよ」


「オッケー。ここから天力は、極力使わないようにして」


天域に近づくにつれて「天力が抜き取られる」という効果が強くなる


「わかりました」


天否とシーレがそんなやり取りをしていると、ようやく地面が見えてきた。シーレとセイサはそのまま着地し、天否は神楽に抱えてもらって着地した


建物自体は変化してないが、神秘の質が格段に濃くなっており。さっきまでのショッピングモールよりも、明らかに辺りが暗くなっていて、まるで深海のような雰囲気が強くなった


しかし、天域があるのはさらに下にあるようだ。ここは「天域へと続く道」ということだろう


天否はシーレ達の方を向いて、宣言した

「ここからが、本番ですよ」


各々が頷き、「天使殺し」や「黒天使」の眼となった。それぞれスイッチが入ったのだろう


そして、天否達はエントランスにある入り口の扉を開ける。扉の奥もショッピングモールが無限と思える程に続いている

続いているのは前方だけではなく、上にも無限と思えるほど続いており、今の場所がいかに深いかが感じ取れた


こうして、天否達は異世界の天域へと続く、ショッピングモールを進み始めた


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現実のショッピングモールの屋根の上に、1人の「怪盗」が座り込み、片手でコインを弾いたりして遊んでいた


怪盗は気配が薄いからなのか、頭や周りにハトが大量に止まっている


しかし、辺りのハトは飛び去ってしまった。理由は、怪盗の背後に、1人の女性の姿をした天使が現れたからだ


それも、いきなり。アニメやマンガによくある「画面が覆われた瞬間の唐突な出現」で現れて、強者風を吹かせる


彼女は「タビビト」今はそう名乗っているらしい。流石、変人揃いの()()()使()。ネーミングセンスどころじゃないネーミングをしている


「最強が動き始めましたね。ようやく場面が動いてくれます」


「君がここまで辛抱強く待つとは、今回の「実験」はどんな悲劇が生まれるんだろうな」


「悲劇がなければ「希望」も「奇跡」も、本気で祈ることができない。今回の実験が成功すれば、私達は「本物の奇跡」を目の当たりにできるでしょうね」


タビビトは長い期間、このヨーロッパで一つの「実験」をしていた。気まぐれで始めた実験らしいが、今では一番力を入れている実験となった


その実験が何なのか、怪盗は知らない。しかし、タビビトという追放された異端者の異常性は知っていた。どうせ、ろくでもないことが起こるだろう


「君の実験には興味ない。そもそも、君と私は敵のはずだが、なぜ私に情報を話す」


秩序が失われ、天使達が混沌とするよりも前から、追放天使には討伐令が出されており、見つけ次第即討伐と言われている


「実験の一つに過ぎませんよ。それよりも、私はあなたの目的の方が気になります。今回はどんな宝を狙っているのですか?」


「今は仕事を優先している、それだけのこと。所詮「怪盗」は趣味に過ぎないよ…けど」


そこで初めて、怪盗が背後に立つタビビトの方を振り向いた。そして、威圧を込めた言葉を言い放つ


「ヨーロッパを崩壊させるようなら、私は躊躇なく介入するよ」


仮面越しに放たれる殺意。それが本物だと、タビビトは肌で感じ取れた


「そうですか。なら…」


次の瞬間、怪盗の核には刀が刺さっていた。そして、その刀を持っているのは、背後に立っていたはずのタビビトだった


「勝手にどうぞ」


そう言い放ち、タビビトは刀を通して爆発性の天力を怪盗の核へと流し込み、怪盗の身体と核を内側から爆発させた


「あなたの介入は想定内。予測できないのは、やはりあの「自由の悪魔」のみですね。本当に来ているのかはわかりませんが…」


そんなことを呟きながら、タビビトはその場を去った

普段なら、休みに入ったら投稿ペースが落ちるんだけど、なぜかゴールデンウィークではブーストできた

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