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調査開始!


シーレの身体が回復し。天否とシーレも本格的な調査を開始した


しかし、半日間ラジエルと討論を重ねた結果、ほぼほぼ答えに辿り着けたので、調査という調査は必要ない。しかし、一応事件現場だけは見ときたいというのと、物資を補給するために、二人は「対天使局ヨーロッパ支部ロンドン分部」へと足を運んでいた


エントランスの受付の人に名前を伝え、神隠しが起きた時に白姫の居た部屋に案内してもらう

なにか天否にしか分からないヒントを残しているかもしれない

しかし、その期待は外れ、目ぼしい情報は手に入らなかった


「やっぱり、羽一つ残すのが限界だったみたい。新しい情報は無しか。まあ、答えは出てるからいいんだけど」


天否はソファーに座りながらそんなことを呟いた。しかし、ため息を吐いたりはしなかった

ラジエルが少しずつ感情の枷を外してはいるが、それでも感情の感覚を思い出せないせいで、自身の小さな感情の変化には気づくことができない。「人間性の喪失」これは短所といえば短所だが、長所ともいえるだろう


「それじゃあ、そろそろ出発するか」


「そうですね。頑張って皆さんを助け出しましょうね」


そう言って、シーレは両手でガッツポーズをする。その時に、シーレが持っている紙袋が目に入った

その袋にはスコーンが美味しいと有名なブランドのマークが書かれており、昨日言っていた「日頃の感謝を込めての高級スコーン」だろう


もしかしたら、事前に用意したのは「無事全員を助けてみんなで食べる」という願掛けでもあるのだろう

だが、おそらく普通の実力の天使殺しは…もう…


その時、コンコンとドアがノックされた。頼んでおいた物資が来たのだと思い、天否は扉を開ける…すると、そこには一人の少女が立っていた


水色の髪を片側だけ結びワンサイドアップにして、髪と同じ色の瞳を持つ少女は、両手を腰につけて、ジト目で天否のことを見つめる


「あれ? ユリーノ? なにしてるんだ?」


「それはこっちのセリフなんだけど? あなた達こそ何をしようとしてるのかな?」


ユリーノの存在に気付き、シーレも袋を置いて天否の横に並び、一礼する


「こんにちはユリーノさん。私たちは神隠しの調査のための物資の調達を…」


「シーレもタメ口でいいよ。正直、実力はあなたの方が上だし。対天使局の人間というわけでもないでしょ」


「でも、対天使局で上の立場にいますから…」


「そう? あなたがそれで良いなら、別にそのままでもOKだよ。で、話を戻すね」


そう言って、ユリーノは視線を天否へと戻す。そして、再度ジト目となり、腰に手をあてる


「私は人員調整のためにやってきたんだよ。また「神隠し」で人が大幅に削られちゃったからね」


神隠しでヨーロッパ全ての天使殺しが消えた訳ではなく、犯行時間に対天使局に居た者しか消えていない


それでも、大半の人員は消えてしまい、対天使局は実質機能しなくなっている。それは、今の静まり返っているロンドン支部を見れば一目瞭然だ


「何人かをヴェネチア支部から派遣することになって、私もその一人…と言いたいところだけど、残念ながら私はヨーロッパ全体の人員不足を補わなきゃいけないから、すぐに別の国に行かなきゃなんだよ」


ヨーロッパ全体の人員の補完…たしかにユリーノの実力であれば事足りるだろう。それに、神隠し異変のせいか、ヨーロッパでの天使の動きが消極的になっていて対天使局の仕事はほとんどない…事務作業を除けば


秘書をしてるだけあって、ユリーノは事務作業がかなりできる。だが、別に好きという訳ではない。本心では異変解決に乗り出したいのだろう


「それで? 神隠しの調査って言ったよね? なに、なんか分かったの?」


なぜか言葉が刺々しい。やはり、過剰な事務作業でストレスでも溜まっているのだろう


よし、彼女をこの調査に同行させよう。天使をボコボコにすれば気も晴れるだろう


「実はな…」

天否が今までの事を話そうとした時、ユリーノのスマホに電話がかかってきた。ユリーノは軽く舌打ちをしてから電話に出た


「もしもし? 仕事ならしたくないよ。支部長」


支部長…つまり電話の相手は「ヨーロッパ支部統率支部長 ラズ」なのだろう


「仕事? いぇ、お茶の相手が欲しかったから是非と思って電話したのだけど…?」


「…働いてよ!?」

と、ユリーノが完璧で正当なツッコミを入れた


「いや、だって事務仕事って頭を使うじゃないですか。なので糖分補給をと…」


「それ以上の説明は必要ない。待っててね、今すぐ戻ってあげるから」


「ユリーノちゃん? なんか怖…」

ラズ支部長が何かを言いきるまえに、ユリーノは電話を切った。そして、ユリーノの口から大きなため息が吐かれる


「はぁ~~~…それじゃ、私はヴェネチア支部に戻るよ。何しようとしてかは知らないけど、頑張ってね」


そう言って、ユリーノは部屋の前から去っていった。貴重な戦力になると思ったのだか、仕方ない


そして、ユリーノと入れ替わるように、対天使局の人が物資を持ってきてくれた


銃に銃弾。スモークグレネードにフラッシュボム。これ以上は移動の邪魔になるので必要ないと判断し、対天使局に置いていくことにした



----------------------------------------------------------------


対天使局を出て、天否達はとある2人組と待ち合わせるために、ショッピングモールの一角に店を構えるカフェへとやってきていた


店内にはその2人組の姿はなかったため、とりあえずコーヒーを頼んで10分ほど時間を潰した


丁度コーヒーを一杯飲み終わる頃。店内の扉が開き、対格差の凄い異色の男女のペアがやってきた


男の方は身長が200cmを越えており、肩幅も大きい。そして何より、顔や身体の無数の傷跡が圧倒的強者の風格を醸し出していた


そして女の方は、男の身長が高いせいで低く見えているが、実際の身長は160cmと平均的。綺麗な黒髪をストレートにしており、黒い瞳の中に白い光が輝いている


この2人こそ待ち合わせていた2人組にして、昨日の内に呼んでおいた即戦力。「黒天使」の「NO.3 右翼の神楽」と「NO.2 左翼のセイサ」の2人である


ちなみに、男の方が神楽で、女の方がセイサである


この2人も、消えた仲間を見つけるために神隠しについて調べており、時折情報を交換したりする仲になった


昨日連絡をして、2人ともすぐに駆けつけてくれた。よほど仲間のことが大切なのだろう


2人は天否達を見つけ、対面するように席に座った


「おい坊主。若がどこに居るのかを突き止めたって本当か?」

席に座った瞬間。神楽が身を乗り出してそう聞いてきた


「神隠しにあった人達の居場所を特定しただけです。若とやらがそこに居る保証はないですよ」


天否がそう答えると、神楽ではなくセイサの方が返答をくれた


「いや、その情報だけで十分だよ。感謝するね「最強」」


その返答聞いて、神楽は腕を組みウンウンと頷く。神楽も同じことを言うつもりだったらしい


とりあえずの挨拶を済ませたところで、シーレが本題を切り出してきた


「それで、結局天使殺し達はどこに消えてしまったのですか? 私も場所は聞かされてませんでしたが…」


隣に座っているシーレが天否の方を向いてそう聞く。それにつられるように、黒天使の2人も天否のことを見つめる


そんな期待の眼差しの中、天否は指でテーブルを二回突っついてこう言った


「ここだよ」


「「「???」」」


その言葉が理解できず、他の3人がその場で凍り付いた

3人とも頭をフル回転させ、どういうことかを考えるが全く分からない


それもそのはず。これに気づけたのは白姫の羽とラジエルのお陰。天否1人では立証することができず、どうしようもなかった


「説明は長くなるから、とりあえず行こうか」


そう言って、天否は隣に座っていたシーレの手を握った


「っ?!」

それに驚いて、シーレはとっさに手を振りほどいてしまった。そして、余程恥ずかしかったのか顔も赤くなっている


「ごめん。あちらに行くのに神秘力が必要だったから」


「嫌ならアタシの使う?」

すると、そう言ってセイサが手を伸ばしてくれた。本当は「万能神秘」を持つシーレの神秘力の方がいいのだが、本人が嫌なら仕方ない


と思ってセイサの手を取ろうとしたとき、シーレに服の裾をクイッと引っ張られた

シーレの方を向くと、顔を赤くして目線を反らしおり、凄く恥ずかしそうにしながら、天否に手を差し向けていた


天否は優しく微笑み、優しくシーレの手を握った。そして、もう片方の手の平をカフェのテーブルにあててラジエルの作った術式を展開させる


「~っ!!!」


ゆっくりとシーレの神秘力を天否を通して術式へと流し込む。そして、術式全体に神秘が回ったところで、天否がその「名も無き術」を発動する


名も無き術を発動した瞬間、周囲の雰囲気が一変した

まるで、水の中にいるかのように薄い重力。そして、辺りから人が消え、建物が全体的にボロボロとなっていた


「よし…」

「えっ?」

「ほお」

「へぇ」

と、各々リアクションを取ったところで、天否が席から立ち上がって店から出て、シーレ、神楽、セイサの3人も席を立って天否についていった


カフェの外もボロボロで、ショッピングモール全体がボロボロになってしまっていた


「坊主、これはどういうことだ?」


「おそらく、犯人の天域でしょうね。どこかおかしいですが」


「たしかに、何かが天力に混ざってるね。どこかで感じたことあるような気がするんけど…」


「俺も、混ざっている神秘はどこかで感じたことあるような気がします。ですが、今はここの探索の方が先決ですよ」


「それもそうだねぇ~…よし! 神楽、早く行こっ!」

そして、セイサは神楽の太い腕を取り、グイグイ先に進んで行った。それを応用にシーレと天否も並んで2人の事を追いかける


「シーレ、さっきは大丈夫だったか」


「さっきですか?」


「ああ、シーレの神秘力を使わせてもらったでしょ、その時の…」


「ああ、あれぐらいなら、少しくすぐったかった程度で戦闘に支障はありません。全然平気ですよ」


「そっか、いきなり悪かったな。お詫びとして、今度なにかプレゼントを用意しとく」


「本当ですか?!期待してますね!」

そう言ったシーレの声色は、明らかにテンションが上がっていた


ガンガン進んでいく前の2人についていくため、2人もスピードを上げるのだが、シーレの方が足が速いため、天否を置いていってしまう形となる


そして、天否の耳に届かない程の距離で

「まあ、別の意味で平気じゃなかったこともないですがね…」

と、そんなことを呟いた。当然、天否には聞こえていなかった


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