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なにも終わっていない幕引き



あの戦いから三日後…


異変の後始末が完了し、神喜と彼岸の二人がエジプト支部から旅立とうとしていた


その旅立ちに真長とレイの二人は足を運んでいた

真長は神喜と、レイは彼岸と向かい合い、話を始める


「本当、ありがとうございました。神喜先輩は今回のMVPですよ」


神喜は、今回の異変を無傷で帰還している。だが、挙げた功績は一番大きい


というか、よくよく考えれば、とんでもない功績を挙げている


一万匹の天獣、教団司教、大天使との連戦を無傷で圧勝…やはり『最強』は別格だということを再認識した


「私はあの場で一番強かったからね。だから、大きい功績を挙げれたのは当たり前だよ。私の個人的なMVPは真長、君だよ」


「わたしですか。それは…慰めですか」


真長は、最後の最後に失敗した。他のみんなが目的を果たしたのに、真長は目的を果たせずリースを連れ戻せなかった


真長の功績はMVPとは真逆だ


今回の戦いでも、真長は与えられてばかりだった。マイやリースに助けられてばかりだった

今回も、生き残ることしかできなかった。助けることができなかった。なりたい自分になれなかった


決意が、砕け散りそうになっていた


「慰め…かぁ。そう感じちゃうんだね~」


自然と落ち込んで暗い表情になっていく真長の顔を覗き込み、神喜はニヤニヤしている


「今回の戦いで、一番成長したのは真長ちゃんだよ。私のMVP基準は変化だからね」


今回の異変で、真長は決意と挫折を同時に味わった。二度の変化を一つの異変で経験し、様々な経験を積むことができている


そして、その経験値を浴びた真長が、どんな成長をするかに神喜は興味を示していた。それが、真長には理解できなかった


「たとえ変われたって、私はただの天才ですよ…先輩達のようにはなれません」


「そうかもね。なれないかもしれないね~」


その言葉に、隣で話していた彼岸とレイが少し反応を示す。なぜ、ただの皮肉に反応しのだろうか


「けど、真長は強くなりたいんでしょ? 私はそれに期待してるんだよ、頑張ってね」


そう言って、神喜はあざとくウィンクを決めた


「んじゃ、そろそろ出発しようかな~ひーちゃん行くよ~」


「はいはい、わかったわよ。それじゃあ先輩また」


「おうよ後輩。またね」

そう言い合いってレイと彼岸は握手を交わす


今回の一件で、彼岸は神喜と行動を共にすることを決意した。その選別として、神喜から『セフィラ』を授かり、暗部『星』へと加入することとなった。そのためレイとは『星』での先輩後輩関係となったのだ



彼岸は神喜に肩幅ほどの距離まで近づき、少し嫌そうに神喜の手を握る

その嫌そうな表情を見て、神喜はニコニコする。そんな先輩が、再度真長の方に向き直し、真面目な顔で話し始める


「真長ちゃん。最後にわかってるとは思うけど、一応伝えておくね。リースは生きてる、必ず救い出して友達になってあげてね」


神喜がそう言い切ると、隣の彼岸も真長の目を見て一言…


「あの子のことは、任せるわ」

と、不安に満ちた声色で言う。それは本気で彼女を心配する人の声だった


そんなシリアスな雰囲気を打ち消すように、神喜が明るく声を上げる。神喜としては暗いお別れは嫌なのだろう


「それじゃ、真長ちゃん。また会おうね!」


そう言って神喜は満面の笑みを真長に見せ、そのまま彼岸と神喜は神喜の能力である『箱舟』の光に包まれ、遥か上空へと飛んで行った...


二人が飛んで行くのを見送ると、横からレイが近づいてきた


「光希さんは将来有望だね。あの人があんな風に言うなんて初めて見たよ」


「あの慰めのことを言ってるんですか。あんなの気を使ってくれただけですって」


自分で言ってて心が空虚な気持ちでいっぱいになった

けど、事実として今回の異変で最も役立たずだったのは真長だった。その事実のせいでどれだけ本気で褒められたとしてもネガティブが発動してしまう


こんな時、いつもなら頭の中の相棒がなんだかんだで親身に寄り添ってくれるのだが、あいつの信号はいまだ地球に到達していない。まさかマイにここまで依存していたとは…内心少し驚いた


「私がMVPだなんて...」


「そこじゃなくて。「先輩達のようにはなれません」に対して、神喜は「ならないかもしれない」って言ってたでしょ」


レイが指摘した部分が、あまり気にしていなかった言葉だったので、その先が気になり、真長は捻くれ鬱モードを中断してレイの言葉に耳を傾ける


「あいつは割と何でもスパッと言っちゃうタイプの子なんだよ。だから、できないと思ったことは言わない。そんなあいつが「光希さんが最強に並べるかもしれない」的なことを言ったんだよ」


そして、どこか哀愁を漂わせ、どこか遠くを見るような眼で言葉を続ける


「私になんて「どれだけ経っても私の方が強い」って断言してる。実際、そうだからね。だから光希さんは『最強』になれるかもしれないってこと。自身持ちな」


そんなことを言われても実感が湧かない

『最強』は文字通り、この世界の天使殺しの中でも別格。各支部長ですら足元にも及ばない怪物

実際に『最強の殺し屋』の戦闘を目の当たりにした時、真長はあれを別世界の人間だと思えた


『最強の嫌われ者』だってそうだ。本来の神秘と一つ目の能力、そして権能が封印された状態で、彼は最上位天使から一般市民を守り抜いた。あの場には真長もいたし、実際に最上位天使を倒したのが別の天使殺しだとしても、真長に同じことをしろと言われてもできる気がしない


そんな人たちと、肩を並べて戦う自分の姿が想像できない...


だけど、それは真長の目標の一つ。どうするかは別として、神魔天否と並べる実力者にならなければならない。そのために、時間を最大限有効活用しなければならない


失敗したのなら、もう失敗しないように成長すればいい。失敗できない状況え失敗しないために、今度こそ友達の手を握りしめるために


才能はある、それは『最強』達が認めてくれた。ならば、足りないのは時間と努力だけ...


真長は捻くれ鬱モードを止めて、まっすぐな目でレイを見る


「レイさん。私に修行をつけてくれませんか?」


それを聞いたレイは真長の正面に立ち、片手を真長の肩にかけて一言

「たっぷりと、しごいてあげるね」

と、どこか楽しそうに言った


それから真長はレイのもとで様々な戦闘技術と、マイ無しでも戦うための術を身に着けるための修行に勤しんだ


(まだ、なにも終わっていない。だから、それを終わらせるために、私は強くなる)











無限砂漠編~完~

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