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その手は届かず


久しぶりに、普通の星空を見た


実際は、夜空なんて毎日のように見ていた。だけど、星空だと思って見たのは久しぶり…いや、初めてだった


脱力感が凄い…何があったのでしたっけ


私はボーッとする頭で思い出そうとする。そして、すぐに状況を思い出して、状況を理解した


この身体の脱力感は、そういうことなのだろう

ずっと昔から、心に刻まれていた楔が、感じ取れなくなっていた


やはり、そうなのだろう。そうなんだ、そうなんだよ…


戦いの結果を理解し、表情が喜びの感情に飲まれそうになったとき、私の頭の上から声が聞こえてきた


「おはよう。元気? ちなみに私は元気じゃない」


その声を聞いて、はじめて私は自分が膝枕をされていることに気がつき、無理やり身体を起こす


そして、振り向くと、銀髪ハーフアップの少女が正座していた


私に膝枕をしていたのは、やはり光希真長であった

彼女が無事に戦いを生き抜いてくれたことに安堵する

私だけが生き残れても、それは私が求める結末ではなかった


そこで、集中の糸が切れて、私は膝から崩れ落ちてしまう。はしたないかもしれないが、そんなことを気にできる余裕はない


そんな私を見て、真長は「平気そうだね」と笑みをこぼし、立ち上がった。ちなみに全然平気ではない


神秘力を限界まで真長に注ぎ込んだ上に、契約天使が死んだ反動が少なからず私にもある。この脱力感の正体はこの二つだ


それに関係するか分からないが、不思議な夢も見ていた。腐った花畑で、真長とよく似た少女が鉱石姿の虫と戦う夢

残念ながら、その夢が何だったのかを考える余裕は、今の私にはなかった。今は安堵するので手一杯だ


「戦いは…終ったよ。もちろん、私の勝ちで」


そう言って、真長はウィンクピースを決めた。その表情には余裕が見えるが、おそらく彼女の状態の方が私よりも悪い


ずっと極限状態で戦っていたのに加えて、無理やり身体を作り替えられていきなり全力戦闘


肉体的余裕はあるだろうが、逆にそれ以外は全て限界ギリギリでもおかしくない。というか絶対ギリギリだ、身体の重心をまったく動かしていない


かと言って、私に彼女を担ぐ体力があるはずもなく...満身創痍の二人きりで、助けが来るのを待つしかなかった


けど、よくよく考えれば、これは真長と話ができるチャンス


いろいろあったけど、これからは対天使局で働くことになる。なら、数少ない同年代の天使殺しとは仲良くなっておきたい


だけど...


(こういうの、どう切り出せばいいのですぅ...)


別に人と話すのが苦手ということはないが、会話を切り出す勇気を持つのだけは昔から苦手だった


教団司教としてなら、いくらでも皮を被れるが、素のリースはとてもネガティブなのです。そのことを忘れていた


相手の顔色をうかがうために真長の顔を見たが、真長と目が合って、とっさに目を逸らしてしまった


そんな私を見て、真長は「予想通りのコミュ障だね」と言ってきた。それを切り口に、私は会話のキャッチボールを開始しようとする


「こんな世界に居たんですよ、しかたないのです」


「まあ、だろうね」


「逆に、あなたはこういう会話には慣れてるんですね」


戦っていた時から感じていたが、真長はコミュニケーション能力が高い。実際、私はなんどか彼女の口車に乗ってしまった


罠師にとって、言葉も立派な武器となる。私も罠としての言葉は持っている、彼女もそれは持っているが私の言葉とは何かが違っていた


そこで、私は爺さまから聞いていた人物のことを思い出す


対天使局特別隊員 光希海根


多くの天使殺しに頼られていた、対天使局のお父さん的人物で、爺さまが密かに連絡を取り合っていた信用できる人


爺さまが昔「あいつは、信用されることと信用することに関しては、天賦の才を持っている」と言っていた。その血を継いでいる真長も同じような才を持っていてもおかしくはない


しかし、私の知る限り、彼女は対天使局ではあまり目立とうとしていない。何か訳ありなのだろうか


「本当、羨ましいのです」


「まあね」


まあね、ときたか

私も大概だけど、真長も真長でかなりの自信家なのだろう


思えば、真長との戦闘は賭けに賭けが重なっていた

戦術だと思っていたが、あれは真長の『自信』からきていたのだろう。本人も自覚なしに


だとしたら、彼女はそうとうなギャンブラーだ

私なんかでは比べものにならない程に…


そんな私の自虐を、真長は持ち前の人間観察理解力で見抜き、声をかけてくれた


「これから羨ましがられるようになっていけばいいよ。リースは()()()()、だもんね」


その言葉が、きっと心に響いたんだと思う

枯れきった心が燃え尽きて、新しく何かが芽吹いたのだと思う

本当に彼女は凄い。まるで物語に出てくる主人公やヒロインみたいに、人を救える人間なのだ


真長の言葉に感銘を受けていると彼女が立ち上がった


そして、照れた面持ちで何かを言おうとするが、なかなか言葉にしてくれない

きっとその言葉は、私が言いたいことと同じなんだと思う。そうであってほしい


だから私は、勇気をもってその言葉を声に出した


「「友達になりませんか」」


真長の声と私の声が重なった

気恥ずかしさが一瞬、顔を見せてきたが、すぐさま安心感に沈められていった


きっと私は今、笑っている

久しぶりに、心からの笑顔になれている


これから先の、こんな風に笑っていたい

そのためなら、どんな困難にも立ち向かえる気がする



真長は満足気な顔をしながら、握手を求めるように手を前に出している

そんな友達(真長)に私はゆっくりと歩み寄る……




刹那、私の身体は浮遊感に飲まれた

なにが起きたかは瞬時に理解できた。カラティナにとどめを刺した光線によって地面が崩れたのだ


実際、地割れはカラティナが倒された場所を中心に広がっていた


「リース!」


そう叫んだ真長は全力で私に駆け寄ろうとするが、足に力が入らず片膝をついてしまう

このままでは真長も巻き込まれてしまう。そう思った私は残りかすのような呪力を使い、粘着性の強い泥を生み出して、勢いよく真長へと放った


真長は泥に吹き飛ばされ、壁に貼り付けとなった

これで、真長が巻き込まれることはなくなった


初めての人助けが成功した喜びと安堵を感じながら、私の意識は浮遊感に包まれながら失われていった


----------------------------------------------------------------


今や大穴となった遺跡から少し離れた場所で、ルミとミミルルの三人(正確には一人と二匹)が話あっていた

「まさか、あれを撃ち抜けるとはね。驚きだね」


「だね。まさか、あんな秘密兵器があるとは」


ルミとミミは『テンノヒカリ』に興味津々だが、ルルはそれにあまり興味がなく、早くこれからの話がしたかった


「それで、私たちはこれからどう動きますか?」


「ん? うーん。そうだね~」

ルルの質問を聞いて、ルミは手を顎にあてて考え込む...


「天否のところに行くのもありだけど...あっちはもう完結してそうだし。でも他に行く当てもないし、そうしようかな」


「いいの? アインとの約束は?」


「そっちは平気だよ。少なくとも砂漠に仕掛けといた天術陣はね」


ルミは『秩序天使』を抜けるために、ある契約をアインと交わしていた。

それは、ある天術陣を発動まで守りきるというもの


しかし、ずっと天術陣の近くで見張っているのはつまらない

そこでルミは、天術陣を普通じゃない場所に移すことにした


ルミは、その作業のために、異変に堂々と干渉するのを我慢して、こそこそと空間を移す作業をしていた

そのせいで、本来ルミがするはずだった「リースの手助け」を代わりにルルとミミが担当していた


ちなみにアインは、ルミ一派によるリースの手助けを黙認している。黙認の理由は単純、アインでは()()()()()()()からだ


そんな理由で、ルミは結構自由にできている


「んじゃ。早速アインに挨拶して、レッツゴーしようか」


ルルとミミは「おけけ!」「了解です」とルミに返事を返す


「それじゃ、移動するから入って入って」

そう言って、ルミは爪先で自分の影をツンツンとする

ルルとミミは顔を合わせてから、ルミの影に潜り込んだ


「んじゃ、行こうかな」


急に一人になり寂しさを感じながら、ルミは(ゲート)を作り、砂漠から姿を消していった




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