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救われるべき少女


今の私に必要なことが何なのか

すべきことが何なのか

答えが出た


先輩に会う…それが私の思いの答えに繋がる


マイは凄いと思う。たった1つの事実だけで私の心の霞を消し去ったのだから

相反する2つの思いとの向き合いかたも見つけた

私の中から迷いは消えた


ならば、目の前の問題を解決しよう


リースの最初の人助けを成功させてあげよう

リースを…友達を縛る天使を殺しに戻ろう


過去に取り残された教団を…終わらせに行こう


----------------------------------------------------------------


ステンドグラスに挟まれ静かな光を醸し出している舞踏会場

その上下の中心に浮かんでいる金剛の鎧の天使をリースはただ見上げていた

見上げることしかできないでいた


もう、リースには動く力も、治す力も残っていない

あとは、マイを…真長を信じるのみ


カラティナがリースを囲むように無数の槍を生み出す。もう、リースは意識を保つだけで精一杯。もう、リースは信じることしかできない


槍が一斉にリースに向かって放たれる…

しかし、その槍が2人を串刺しにすることはなかった


ノーネームと同じバリアが周囲に展開され、全ての槍を弾いたのだ


このバリアは世界に1つしか作られていない武装。そして、その武装が搭載されているノーネームは機能停止中

ならば、このバリアを展開できるのは構造を熟知している設計者しかいない


過度な身体と呪力の使用により今のリースに身体の感覚は無い。だから気づけなかったのだ、自分がいま抱きつかれていることに


「ありがとう」

耳元でそう囁かれ、ようやく彼女の…真長の存在を知覚することができた


真長は背中に回している手を通してリースへと神秘力を流し込む

本来、神秘力を相手に渡す行為は天使殺しの中でも数人しかできない超高等技術。なぜなら、うまく相手に合わせて属性を調整しなければならないからだ


だが、真長はリースに神秘力を合わせることなく流していた。本来なら良くて激痛、最悪の場合は死

しかし、リースが感じているのは、その2つとは対極の位置にある感覚だった


[心地よさ]と[命の暖かさ]


ながらく触れられないでいた2つの感覚を、リースはいま生まれてから最も強く感じていた

その感覚が死ぬんじゃないかと思うぐらい気持ち良く。リースは集中の糸が切れたかのように眠りに落ちていった


「naniosita」


「なに?」


「NANIOSITA!!!」

カラティナは声を荒げてそう叫んだ。顔がなく、言葉数も少ない金剛の天使がついに焦りと動揺の感情を露にした


リースが意識を失えばリースの意識に溶け込んでいるカラティナの意識が彼女を乗っ取ろうとするはずだった

しかし、カラティナの意識の進行はリースの意識に潜む何かによって防がれていた。カラティナの焦りと動揺の原因はこれだ


そしてもちろん、それを仕組んだのは真長だった

仕掛けは簡単。真長がリースに神秘力を流し込んだ時に、一緒にマイをリースの精神に送り込んだのだ


だが普通、天力を持たないAIが天使の精神体に勝てる訳がない…だが、流石の真長も()()()()()()A()I()()()()()()()()()()ことぐらい気づいている


でも真長は、マイのことを探ろうとは思わないでいた

なぜならマイは真長にとっての初めての友達であり初めての相棒なのだ。そんな相手を疑いたくはない


『疑いたくない』そんな感情的な理由1つだけでも真長にとっては信じるに値する理由だった


「さてと…それじゃ、トラッパータイムといきましょうか!」


あの罠の起動にはマイの存在は不可欠。だから、マイがリースの中のカラティナの精神体を全滅するまで耐え抜く

それが、いま真長がすべきこと



----------------------------------------------------------------


真長によってリースの精神に送られたマイは真長の姿をしてリースの心創世界に降り立っていた

そして、目の前に広がる景色に呆然としていた


枯れ花の花園 泥臭い匂い 赤黒い川 枯れた花に集る虫


ファンシーな世界を最悪な色で染めたようなこの空間こそリースの深層を写し出した心創世界だった


彼女の能力である「災い」の影響で綺麗な世界でないことはわかっていたが、それでもここまで荒んでいるとはマイも予想していなかった


「ここまで苦しんでいたのね...」


花園に中心にさいている、まだ枯れていない紫の花

それは、まだ生きているリースの心。彼女の精神の核

あれが破壊されたらリースの心は乗っ取られ、彼女のことを真長が殺す羽目になる

マイも真長も、そんなバットエンドには絶対にさせたくない


「戦闘…ね。こうなってから戦うのは初めてね」

マイは手をグーパーしながら身体に流れている天力を感じていた

天力は心創世界に流し込まれる際に少し掠めておいたのを使うことにし、拳に天力を集中させる


リースの心創世界のあちらこちらに金剛の身体を持つハエのような巨大昆虫が飛び回っている。あれこそカラティナの精神分離体『金剛虫』


マイは金剛虫を引き付けるためにわざと天力を放出して存在感を出す。予想通りマイの存在に気がついた金剛虫は一斉にマイのもとへと飛んできた


「さてと...」


心創世界はその人の心の現れ、つまりこの荒んだ世界はリースの荒んだ心を表しているということ


生き残るためとはいえリースは教団司教として数々の罪を犯してしまっている。その罪の罪悪感を教団に向けることもできず自分のなかに背負い込んでしまった

その結果、彼女は心をここまでボロボロに傷ついてしまった


彼女は救われるべき存在だ

マイは彼女に救われてほしい


それだけで戦う理由は十分...

「トラッパータイム...口にするとちょっと恥ずかしいわね」


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