命を捨てた1分間
痛い 痛い 痛い 痛い
だけど、それ以上の高鳴りが私から痛みを遠ざけてくれる
それは、自身の可能性への興奮だった
私はずっと全力を出せないで戦っていた。だけど今初めて全力全開で戦えている、自分の限界を試すことができる
私の伝承憑依は試すことすらできなかった。30%でも立ち上がることすらできなくなる天力を全開にする諸刃の剣
そのため、伝承憑依を使ったのは今回が初めてだ
そして、勝っても負けても私の細胞は電気分解でバラバラになるが、そのことはもう吹っ切れた
私が伝承憑依をキープしていられるのは1分間だけ。それが私の細胞の限界点。それを越えると粉々だ
頭の中で60秒かぞえながら、私は攻撃を開始した
壁や床を縦横無尽に動き回り、相手の隙をうかがう
しかし、カラティナは微動だにしないでいた。攻撃どころか視線を向けようともしない
その理由は簡単。カラティナの権能が『予知』だからだ
試しにカラティナに無数の雷の槍を放ってみた。これでカラティナの『予知』の精度を調べようとした
しかし、まだ私とカラティナには大きな差があった…
「!?」
カラティナは防ぐことも避けることもせず、全ての雷槍に直撃した。そして、それでもなお、カラティナは無傷でいた
自分の天力が弱いかもしれないと不安になったが、おそらく原因は私が天力を扱いきれてないのだろう
今の私はやみくもに天力を放出している状態。そのため、広く薄い攻撃しかできていない…つまりは天力が軽いのだ
なら、天力を圧縮させて放てばいい。しかし、天力の扱いに関しては私は素人。だが、解決策はすでに思い付いている
天力は電気で私自身が機械そのもの
そして、私の能力は『改造』…
天力を圧縮させるほどの天力操作は今の私にはできない。ならば、自分自身を「天力を圧縮させて放つ機械」へと改造すればいい
私は右手首を左手で握りしめて改造を使う
本来は機械のパーツ1つ1つを細かく読み取って、精密に、しかし手早く改造を施すが、人の身体のことなんて分からない
そのため、私は無理やり身体の『機能』の1つを即席で考えた『圧縮放射』に作り替えた
ちなみに、犠牲にした機能は味覚だ。どうせ戦闘に必要ないし
口の中に広がっていた血の味が消えたのを感じながら、周囲に乱散しつづける天力を右腕に吸い込ませる
構想通り、天力が右腕の中で圧縮されているのを感じ、感覚のままにカラティナに向けて天力を放ってみた
圧縮された天力の光線がカラティナに向かって放たれる。しかし、その光線はカラティナのもつ金剛の盾によって防がれてしまった
だが、防いだということは攻撃を脅威と判断したということ。ならば勝算は十分にあるということだ
再度、縦横無尽に動き回りながら四方八方から光線を放ちまくる。その速さにカラティナはついてこられず、盾を抜けて光線をあてることができた
しかし、光線で与えられるダメージは金剛の皮膚を少し欠けさせる程度でまったく致命傷にはなっていない
より天力を圧縮させて放つことができれば、あの金剛を貫き核を撃ち抜くことができるかもしれないが、私の細胞にそんな余裕はない...だが
私自身を人間爆弾に改造して、相手の間合いに入れれば……
残り時間はに20秒。もう悩んでいる時間も無い
どうせ、勝っても負けても細胞はボロボロになるんだ。迷いはない
(マイ)
『なに?』
(時間稼ぎ、お願い)
マイには本当に悪いことをしていると思う。勝手に生きることを諦めて、それにも付き合ってもらっているのだから
戦闘中、ずっと黙っていたのも怒っていたからなのだろう
それでもマイなら、私の最後のわがままを聞いて...
『……断る』
「え...」
その拒絶に驚いて、貴重な1秒を静止することに使ってしまった。だが幸い、カラティナは傷を回復していて仕掛けてこなかった
『そもそも私は怒ってなんかないよ』
マイは私の考えを知ったかのように…いや、知った上でもいつもと変わらない雰囲気で言葉を並べていた
「なら、なんで…」
『勝つために必要な罠を準備してたの。わかるでしょ』
それが何なのかはすぐに理解できた。私の仕掛けている最高最大最強の罠にして、最も起動が困難な罠…
「でも、あれを使うには…」
宇宙に仕掛けている光線兵器。天力に加速に加速を重ね超高速で天力光線を放つ罠…『テンノヒカリ』
エジプトに着た時からずっと用意はしていたが、この罠を起動するには宇宙に私の天力を届ける必要がある
天力量は問題は無い。問題はそれを扱う私の身体だの方だ
今の細胞では宇宙に届くほどの天力に耐えきれず、身体が崩壊して不発となって負ける。だから、私は自身が人間爆弾になる策の方を選んだ
「もう…細胞にそんな余裕は」
『大丈夫よ。私達は2人っきりじゃないわ』
「え」
マイの言葉に困惑を感じた瞬間、地面からツタが生えてきて私の右腕に絡み付いた。そして、私に絡まったらツタがいきなり発光しだした
「うっ!」
ツタが発光しだすと次第に右腕に痛みが走り始める。そして痛みはどんどん強くなっていく…
痛みを感じる…それは、バラバラとなっている私の細胞が回復しているということだ
それができる人物を私は知っている…
痛みをこらえながら、私はその人物のいる方向を向く…
「リース…!」
壁際に寝かせていたリースは立ち上がっていた
全身複雑骨折の重症なのにも関わらず、自身の呪力を使って無理矢理身体を強化して立ち上がっていた
そして、一歩、また一歩と私に近づいてきている
あんな無理矢理動いて、一歩を踏み出すたびに物凄い激痛が走っているはずなのに、リースは止まることなく私に近づいてくる…
その時、回復を終えたカラティナが私に向かって槍を投げてきた。もちろん、今の私にはそれを防ぐ術はない
しかし、カラティナの投げた槍は展開された五重のバリアによって弾かれた
この五重のバリアを私は知っている。なんせ、このバリアを搭載しているドローンの設計者は私なのだから
私は確信を持って、そのドローンの方を向いた…
「名無しドローン…」
私は涙ぐんだ声でそう呟いた…
私達が「名無しドローン」と名付けたドローンこそノーネームの首脳部分にして操縦者。私が求めていたものを持っていたAI
さっきのバリアで電力を全て使ってしまったのか、コアの回復も止まり、完全に停止してしまっていた
壊れてはいないが、誰かが天力を与えなければ起動することはできない
「ありがとう…」
この先と事とか関係なく、私は名無しドローンに感謝の言葉を送った
そして、名無しドローンが稼いだ時間を使って、リースは私の目の前までやってきていた
彼女が何をしようとしているかは分かっている
成功する可能性は低いし、失敗すれば私は死ぬ
だけど、成功すれば全員生き残れる
合理的に考えれば、私の命を犠牲に確実に勝てる方を選ぶのが正しい
だけど、今の私はリースのことを信じてみたいと思っている
リースは私より半頭身ほど背が低くく、上目遣いで私のことを見つめてくる。もしも心に決めた人がいなければ、惚れてしまっていただろう
だが、顔よりもリースの身体の方に意識が向いてしまっていた
白く細い手足は歪に曲がっていて、まるで壊れた人形の様になってしまっている
全身複雑骨折で動けば、折れた骨が身体中の臓器に突き刺ささる。些細な動作でも激痛を感じるはずなのに、どうしてそんなにも頑張れるのだろうか
リースに心配の眼差しを送ると、彼女は優しく微笑んでみせた
そして、私の頬に手を添えて顔を近づける…
私はリースを信じて両目を閉じた
口に柔らかい何かが触れる
心地よさが私のことを包み込んだ…
快い 快い 快い 快い
もうすぐエジプト編も終わりですね~
年越す前に書ききりたかったんですけどな~
コミケと正月があったしぃ~
ぼぉくわぁ悪くなぁぁい!




