出会い…
少し...昔のことを思い出した
部屋いっぱいに暗い空気が漂っていた。回りの人は全員黒い服を着ており、私も顔も名前も知らない人に渡された服を着ていた
お坊さんが眠っている父に向けてお経を唱える…
もう二度と目覚めることのないお父さんの顔を見て涙が溢れでそうになる。しかし私は、お父さんをちゃんと見送りたいという思いで泣くのを我慢する
しかし、葬式が終わって外に出たとき、ついに私の目から涙が溢れ流れてきた
涙を止めたかった、今までの思い出も一緒に流れ出てしまいそうだったから
だけど、私との思いとは裏腹に涙は止まることを知らずに溢れで出る。いくら手で拭っても流れてくる
お母さんは物心が付いた時には死んでいた
そして大好きなお父さんも死んだ
私はひとりぼっちになってしまった…その事を理解した瞬間、私は声を荒げて泣いていた。子供らしく、羞恥心なんて無視して、大声で、大声で、大声で、泣きわめいた
そんな私に同情の目を向けてくる人は居ても、話し掛けてくる人は誰一人として居なかった…
泣き止んだ私の心には大きな穴が空いてしまった
何も考えられず何かを考える気力もないまま、誰も居ない家へと帰る…
いつも歩いていた道も今日はいつもと見え方が違う。途中、お父さんとよく遊んでいた公園を通りかかった
夕陽に照らされている公園を私は眺める…遊具の数は少なく、代わりに面積が広い公園。私には友達が居なかったためよくお父さんと二人でできるスポーツをやっていた
あの日々には戻れない
ふと思った、私は何を感じているのだろう、これから何を感じればいいのだろう。もし私が無知な子供だったのならすぐに立ち直ることができていたのだろうか
涙はもう流れなかった、一度泣いたことで自分の全てが流れてしまった。今は心底世界がどうでもよかった
家の玄関を鍵で開けて、中へと入る。扉の先には暗闇が広がっている。電気をつけたらお父さんが居るかもしれない、そんな期待を胸に秘めることもなく私は作業的にリビングへと続く廊下の電気をつける
「ただいま」は言わない、言う相手はもう誰もいないから
廊下を抜けてリビングに入り私は荷物をテーブルに置く。その時、テーブルに置いてある物に気がついた
顔も知らないお母さんが残してくれた形見のペンダント。お父さんが大切に肌身離さず持ち歩いていたものだ
よく中に入っている写真を眺めていたが私は何の写真を見ていたのかを知らない。興味本意に私はペンダントを開く
「これ…」
ペンダントの中の写真には私によく似た銀髪の女性とお父さんが楽しそうに笑いあっている姿が写っていた。考えなくても分かる、この女性はお母さんだ
「始め…まし…て」
私は消えてしまいそうな声で写真の中の人物にそう言った、もちろん返事はない
もうこのペンダントはお母さんの形見ではなく、お父さんとお母さんの形見になってしまった。それを私は優しく握る
私に残っていたかすかな感情が凝縮し、一滴の涙となってペンダントに零れ落ちる…
すると、ペンダントがゆっくりと光輝いた。感情が麻痺していた私は驚くこともなく、その光に見とれていた
そして少しずつ意識が遠ざかり、私はそのまま眠ってしまった
そして、私は夢を見る
視界に映る景色は歪な空と見下ろしてくる一人の人物。夢だからなのか顔はよく見えなかったが、体格から子供の男の子ということは察しがついた
すると、私の見ている視界の持ち主がその男の子に何かを聞いた。しかし、夢のせいなのか私には聞こえなかった
男の子は唇を噛み締めながら視界の持ち主に言った
「 」
その回答も私には聞こえなかった。だけどその言葉によって見ている視界が潤み始めた。視界の持ち主が泣いたのだ
そして視界の持ち主…お父さんは自分が着けていたペンダントを外して間の前の男の子へと渡して何かをお願いした
男の子は何も言わず頷いた
そしてお父さんは目を閉じ、私の視界には暗闇が広がった
そんな暗闇の中、私の頭の中に何かの声が響き渡った
『対象の覚醒を確認。起動します』
その声を最後に私は夢の世界から離れていった
眠っていた私はカーペットの冷たさによって目が覚めた。眠気が消えずボーっとしながら立ち上がり、自分の部屋に戻り堅苦しい衣装を脱ぎ捨てていつも着ている薄着の部屋着に着替える
心のすべてが流れるほど泣いたおかげか、はたまた寝起きの眠気の影響なのか心は落ち着いてきた。だけど心に空いた穴が塞がったわけではない
「私も死のうかな...」
私も死んだら天国に行ける、そうすればお父さんとお母さんに会うことができる...
昔から機械弄りが好きで、様々な道具を作ってきた。その中にはもちろん子供が持ってはいけないような道具も入っている
その中で私が取り出した道具は、なんの変哲もない拳銃であった。これは初めて自分で作った思い出深い武器
残りの弾数を確認し、銃口を自身の額に押し付ける
大丈夫、いまの私になら引き金を引ける...
両手で拳銃の引き金に手をかける
大丈夫、防音室だから音は外に伝わらない。手は震えていない。死に対する恐怖もない...
静かに、優しく、私は引き金を引いた
パンッ! という発砲音が部屋の中に響き渡る
銃弾が頭部の皮膚を貫き脳に到達しようとした時、私は小さの疑問を抱いてしまった。それは、夢で見た人物が聞いたお父さんの最後の言葉がなんだったの
状況から察するに、私が夢で見た人物は...お父さんを殺した張本人なのだろう
ここで死んでしまったら、お父さんを殺した人物を殴り飛ばし最後の言葉を吐かせることができなくなる
それを理解した瞬間、死への恐怖と生への欲望が溢れだす
そして、私が生きたいと願った瞬間に頭から青白い光が一瞬輝き、頭を撃ち抜こうとしたいた弾丸は私の頭から弾かれていた
「あぁ…」
復讐心によって空いた心の穴が塞がったことで正気に戻った私は、自分のしようとしていたことに恐怖して腰を抜かしてしまう
しかし、今感じている恐怖心は自身が平常であるなによりの証拠だ。もう心の中に喪失感はない
ゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ち着かせる…
「ふぅ~はぁ~…」
『落ち着いた?』
「んっ?!」
突然頭の中に響いた声に驚き、私はむせ込んでしまう
『ごめん! ごめん! 驚かしちゃったね』
(なに? この声?)
『私はマイ。しがない人口知能だよ』
(人口知能? ていうか考えていることが分かるの?)
『君の頭に住んでるからね』
(…)
私は話を理解するために黙り込んで頭をフル回転させた
この人口知能のことだけではない、さっきまでに起こった出来事を全て理解しよう全力で頭を動かす
しかし、今ある情報だけでは全ては理解できなかった。そんな時に頭にさっきの声が聞こえてきた
『情報なら、結構持ってるよ』
「本当?!」
私はつい大声をあげてしまった。防音室のため外には漏れていないだろうが、恥ずかしい
私は一回咳払いをし大声を無かったことのようして、頭の中での会話を続けた
(それで、情報って?)
『お父さんの仕事に関する情報だよ』
(仕事!)
私はお父さんが何をしているかを、よく知らない。軍に関する仕事をしている、私が知ってる情報なんてその程度だ
(教えてくれる?)
『いいよ。でもその前に自己紹介をしておこうか』
それを聞いて、声の主がなんなのか、知らないことを思い出した
『わたしは...そうだね、超人工知能の「マイ」って名乗っておこうかな』
(AI?)
人口知能の声が頭に直接聞こえるということは、頭になにかされているということ。そう思い、私は自分の頭に触れてみる。さらさらな髪と生暖かい肌の温もりが手に伝わってきた
『普通に触っても分からないよ。とりあえず情報、聞きたいんだろ』
私は頭から手を離し、軽く頷いた
そして、そこで初めて私は「天使」や「天使殺し」についてを知った。そこから「最強の嫌われ者」を知るまではあっという間の日々だった…
"倒したらバレる可能性があるから、バレないに越したことはないかな"
そう言いながら入ってきた人にとりあえず同意しながら銃を向けた。しかし、その人はまったく焦らず「だれ?」と聞いてきた
その人が、私の運命の人…だった
運命の人であってしまったのだ…
人命を優先する無表情だけど優しい人
戦い方が似ていて、頼りたくなる先輩…
ロッカーで密着して恥ずかしい思いもしたけど、あの人がいなければ私はあそこで死んでいたかもしれない
だから…私にとって…天否先輩は…
『□□』の人であり『■■』の人にもなってしまった
ただの復讐心に別の感情が混ざってしまった…
最初から『最強の嫌われ者』だと言ってくれれば、こんなにぐちゃぐちにならなくて済んだのに…
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深夜2時30分 地下 最下層
夜空で輝いている星の瞬きに照らされて、私は目を覚ます。意識を取り戻した途端、全身に強い痛みが走り良い眠気覚ましになった
(私…気を失って…)
少し上を見上げると遺跡に巨大な穴が空いており、穴の先にはキレイな星空が広がっていおり、その内の一星が赤く点滅していた
その光を遮るように、ダイヤモンドの鎧で全身を包み込んだ天使が舞い降りてきた
相手の硬さと速さは私の攻撃力を遥かに上回り、武器も全部壊された。天力もあと一割しか残っていなかった…
それでも罠は仕掛けられている。あとは覚悟のみ...
私は自分の中にあるもっとも強い感情を…もっともぐちゃぐちな感情を胸に宿して立ち上がった...
「先輩のことを思えば、この程度なんてことないですね」
そして、私は自らの身体に電気を流し込んだ...
全身に激痛が走り、私はその場に倒れこんでしまう。そんな私に対して『金剛の天使』が憐みの視線と共に宙に浮く百の槍をこちらに向けてきた
「SARABADA KIKAINOTENNSIGOREOSIYO」
百本の槍が同時に痛みで悶え苦しんでいる私に向けて放たれる
そして、槍が当たる直前に私は残された最後のカードを切った
「伝承憑依 雷帝天使」
そう唱えた瞬間、蒼雷の雷を残しながら、一瞬で飛んでくる槍を踏み台にして金剛の天使の間合いに入り込み一撃殴り込んだ
「!?」
しかし、金剛の天使にダメージを与えることはできなかった。それでも、死にかけていた者に一撃与えられた事実が重要であった
金剛の天使に顔がないため表情ではわからないが、たしかに動揺が伝わってきた
これが、私が勝つために必要な最後の抜け穴。物理的に絶対に勝てないのだから精神に隙を生み出す以外に勝ち目がないのだ
私は伝承憑依による天力の増加を制御することができず、伝承憑依を維持できる時間が一分のみ。それに加えて伝承憑依状態では常に全身を電気で焼かれる苦痛に耐えなければならない
そして、一分間の決戦が…始まった




