二人で一匹の聖天獣
深夜1時10分 地下 上層
超強力な結界によって守られた長方形の箱のなかで、2人の少女と1人のイケおじがぶつかり合っていた
首まで伸びて茶髪の髪をヘアゴムで結び、右手で細剣を構えて普通の天使では直視することができないほどの気迫を放っている男、エジプト支部長ボレロ
それに、向かい合う二人の少女
双子の姉である青髪ツインテールの小悪魔系少女ミミ
双子の妹である赤髪ポニーテールの無表情系少女ルル
二人はアイコンタクトで攻め方を共有し、二人同時に動き出す
だが、ボレロが軽く細剣を横に振るい炎の混じった風を放つ。その物凄い風圧で二人とも壁まで飛ばされる
「伝承憑依までしたんだ、そっちも何かみせろ」
それは、本気を見せなければ何もできずに殺すという、二人への警告だ。ボレロは伝承憑依をしてはいるが本気は出していない、風圧を受けたときに本能からそう感じた
「別に隠すような力じゃないし」
「本気を出しましょう」
そう言った瞬間、二人の身体から天力とボレロの気迫すら薄めるほどの存在感が溢れ出てきた。そして、二人の身体から狐のような耳と尻尾が生えていた
「驚いた。二人を『天使』だと思っていたが...私が予想を外すとは」
自身の簡易結界に影響を与えられるほどの権能の持ち主なのでボレロは最上位天使だと予想していたのだが、予想は間違っていたらしい
なぜなら、二人から感じる気配は天使と似ているまったく別の神聖だからだ
「君らは『聖天獣』 そうだろ?」
聖天獣...聖獣のなかで独立した変異種
その力は、弱い天使が偶然生み出したとしても最上位天使の下位に匹敵するほどの強さになると言われている
過去に最上位天使から生まれた聖天獣は強力過ぎるため大天使が三人がかりで封印をした、なんて話もある
ボレロの回答を聞いて、ミミは肯定の微笑みを見せる
互いに本気を出し、ついに第二ラウンドが始まった…
早速ミミがかなりの速度で突撃してきた。ボレロは迎撃のために物凄い熱風を避けられないよう全方位に向かって放った
しかしその熱風は、ミミの後ろで静かに彼女をサポートしている寡黙な妹による何らかの権能によってミミに当たる前に空中分解してしまう
どれだけ力が上がろうが二人の戦法は変わらず、ミミが近接で攻めてルルがそのサポート。二人のコンビネーションは完璧で一対一の戦闘に比べて圧倒的に隙が少ない
それに二人...二匹の権能がなんなのかも不明。それに加えて聖天獣には権能以外にも強力な体質を宿していて、そっちも不明
情報的にはボレロの方が圧倒的に不利。だが、そんな戦闘に立場上ボレロは慣れていた
まずは観察と考察から。さっきまでは力を隠していたのか二人の天力の性質を見極めることができなかったが、本来の姿に戻っている今ならばそれも可能だろう
ボレロは攻撃を受けるために細剣・手・腕に三段階の簡易結界を張り、ミミの拳を受けてみることにする
ミミの踏み込みあわせて細剣を振るい拳と斬撃がぶつかり合う
なんとか拳を受け止めることはできたが、衝撃によってボレロは後ろによろめいてしまった。そして、がら空きの腹部にミミは回し蹴りを決め、今度はボレロが壁付近にまで飛ばされてしまう
「ぐっぅ…」
蹴られた箇所を手で押さえながらボレロはゆっくりと立ち上がった。幸いダメージは打撲程度で済んだ
とっさに全簡易結界を腹部に集中させたお陰で軽症に止めることができたが、もしもろに食らっていたらかなりのダメージになっていたかもしれない
たが、ここで一つの疑問が浮かんでくる
それほどのパワーを彼女はどうやって出しているのか?
ボレロの防御力は『最強』とかいうチーターを除けば天使殺しの中で一番高い。全力ではないとしても、そのボレロの三段階の簡易結界と同等の攻撃力をミミは出してきたのだ
そうなると「何らかの制約がある」という可能性が高くなる。そして、その制約も予想できる
ミミは一匹でも十分ボレロの足止めができている。ならばルルに真長を追わせた方が効率的だ。だがそうしない、いや出来ないのだろ
おそらく、ミミとルルの制約は…『二匹一緒にいること』で、どちらかが欠けると力を失う
そうなるとボレロはミミとルルを隔離すれば勝利ということになる。そこでボレロはあることを確かめて見ることにした
「あっという間に形勢逆転だね、支部長様~♪」
そう楽しげに言いながら、ミミは平然と空中を飛び回るという物理法則を完全に無視した動きをしてボレロの視線を撹乱しようとしている
そこで、ボレロはわざとミミを視界から外す。もちろんミミはその隙を突くために踏み込んでくる
「とっったぁ!」
「こっちがな」
ボレロは気配や空気の動きからミミの踏み込む場所を予測し、その場所を見向きもせずに手だけを動かしてミミの拳を受け止めようとする
「打ち砕く!」
ミミはそう息巻いたが、拳が手にあたる瞬間にミミのことを隔絶性の高い簡易結界で囲った。すると、さっきまでの力が嘘のように二人の気配と力が低下した
「ミミ!」
壁際で大人しくしていたルルが声を荒げてそう叫んだ。その慌てっぷりから予想があっていると確信する
ミミは全力で簡易結界を殴るがまったく響かない
(勝負アリだな)
勝ちを確信し、ボレロは伝承憑依を解除する。それを見てミミは不服そうに舌打ちをし、諦めて臨戦態勢を解除した
「はいはい、負け負け~。殺したいならさっさと殺せやー」
「はいはい」
そう言いながら、一応慌てふためいているルルに近づきルルのことも隔離する。すると、ミミとルルの力は見る影もなくなった
簡易結界に囲われたことでルルはさらに慌てて逆に一周回って落ち着き、さっきまでの無表情を取り戻した。そして
、簡易結界を触り解析を始めた
今、二匹を殺すことは容易。たが、気になることがあった。それを確かめるため、ボレロはミミに一つの質問をする
「質問。君らの生みの親はだれだ?」
その質問を聞いてミミはルルの方を向いて何かを確認する。ルルは結界の解析を続けながら無言で頷き、それを見てミミはある天使の名前を呟いた
ルミ…と




