罠師 真
深夜1時40分 地下 下層
モーセはダブル能力者でそのうちの一つが『細胞創造』
そんなことを聞されれば心に動揺が生まれる。真っ当な罠では致命傷になっても殺しきることはできない
しかし、問題はそこではなかった。真長の切り札を命中されることができれば、同時に全ての細胞を破壊することが可能だからだ
この場での最優先事項は生きること。そのために真長は心を無にして、目の前の敵に向けて引き金を引いた
真長が対物ライフの引き金を引いた瞬間にモーセも呪力弾を放ち、対物ライフの弾丸を相殺する
こうして、真長とモーセとの直接戦闘の幕が上がった。互いに切り札を残して...
「災いよ、世界を溶かせ!」
モーセがそう詠唱し地面に紫の杖を突き刺す。そして先程と同じように地面を泥へと変化させた
そこで真長は、泥化が自身の足元に到達する前に空中へと退避することにした
小型ドローンを三機前方に投げて指示を送る
「トランポリン!」
その真長の声に反応してドローンが起動する。起動した三機のドローンはそれぞれ三角形の頂点になるように並ぶ。そして、ドローン間で電気がいきわたり、三角形の緑色の薄い板を構成する
真長はその薄い板に飛び乗る。すると板は下に歪み、トランポリンのように真長を上空まで飛ばした
そして、そのまま空中に待機させていたドローンの上に乗る
(さてと...やっぱ強い)
『だけど、勝てない相手ではない。そうよね?』
(もちろん。モーセも強いけど私だって弱くない)
さっきからモーセは大規模な呪術を惜しみなく使っている。ということは呪力量に自身があるのだろうが、真長も天使殺しのなかでは卓越した天力量の持ち主なのだ
ただし真長の場合は、あまりにも大きすぎる天力のせいで契約天使の『権能』を上手く扱うことができず
天力を使うにしても機械などの道具を通して使わなければ全身に焼き切れるような痛みが広がってしまう
そういう理由から、真長は道具を扱う『罠師』という道を選んだのだ
(天力はまだ七割も残っている。時が来るまで死ぬ気でモーセの攻撃を防ぐ...早くしてよね...)
この状況を変えることが出来る策を託したドローン。彼?彼女?とりあえず、そのドローンが戻ってくるまで何が何でも耐える
真長は廊下に仕掛けた罠と今までの戦いで、ほとんどの罠とドローンを消費してしまっていた。ここから先は真長が苦手とする天術メインの戦闘となる
(少しの間だけ任せる)
『できれば一分で済ませて。それ以上は危険だから』
(りょーかい)
天力による痛みの副作用を覚悟し瞳を閉じる...
身体にすこしずつ天力を巡らせていく。身体が少しピリついてきたタイミングで天力の供給を止めて天力を身体に馴染ませる。
こうすることによって身体に電気を馴染ませ、身体を蝕む電気の痛みに慣れておく
そして、天力が身体を一巡するごとに少しずつ身体に流す天力の量を増やしていき、最低限役に立つ天術を使えるようにしておく
それでも、今の真長は最低限役に立つ天術を扱うのが限界だった。それ以上出力を上げれば戦闘に支障をきたす痛みが走ってしまうからだ
ゆっくりと呼吸をし、身体に天力が馴染んでいるのを意識する
(痛みは許容範囲、戦闘に支障はない。いける)
真長は瞳を開ける...そして、最初に視界に入ったのは真長に向けられる無数の先の尖ったツタであった
ツタは観覧席から伸びており、完全に囲まれていて回避は不可能という状況だろう
(ただいまマイ。保たせてくれてありがとう)
『どうも。これが保っているかは微妙なラインだけどね』
(私が生きているからオッケーだよ。それに道具達は一切壊れていないしね)
そう思ってから、真長は頭の中の隣人に微笑んだ。その瞬間、辺りのツタが一斉に真長に向かって突っ込んできた
しかし、真長は流れるように手に持っている対物ライフルを、三つのハリセンボンのような球体へと改造した
真長は、改造し生み出したその球体を左右に一つずつと上空に一つ投げ、指を鳴らす
すると、球体の針の部分からワイヤーが飛び出し四方八方にワイヤーを放たれいくつかのツタに突き刺さる。そしてワイヤーがツタのあいだを抜けて壁や地面に刺さることで三つの球体は空中で固定された
しかし、ワイヤー程度で破壊できるほどツタは弱くなく。突き刺さった程度では動きを止めることすらできなかった
だが、この道具の真価を発揮するのはこれからだ
空中に固定されている三つのハリセンボンに向けて、真長は天使本来の電撃を放つ。すると、電撃はワイヤーを通して周囲のツタに通電し一瞬で全てのツタを破壊した
残念ながらモーセはワイヤーを避けており、電撃が通る間合いからも外れていたためダメージはなかった
これでモーセのツタは攻略できたと言っていいだろう。少なくとも今の真長の電撃であればツタを破壊することが可能と確認できた、ならば脅威ではない
次に攻略すべきはモーセの扱う『泥』だ
しかし、あれは地面に近づかなければあまり脅威にはならない。そして、いま真長の周りには足場となるワイヤーが至るところに張り巡らされていた
ワイヤーを使いながらモーセの放つ泥からハリセンボンを守りながら時間を稼ぐ。ワイヤー1本1本を破壊しにかかったとしてもドローンが戻ってくる方が先だ(無根拠)
ハリセンボンを作った時にメインウェポンである対物ライフ(元ミニガン)を使い、さっきのハリセンボンのワイヤー通電攻撃によって足場にしているドローンを残して、他のドローンは全て壊れてしまった
真長は電気の抜けたワイヤーに足場を移して、さっきまで足場にしていたドローンを二本のナイフへと改造した
そしてナイフの刃の部分に電気を流し、形の安定しない電気の刃へと変化させた
真長が実践で純粋な天力を使ったのはこれが初めてだ。だが、そんな言い訳を考えても仕方がない
モーセも真長と同じようにワイヤーに飛び乗り、枯れ木と紫二本の杖を構えた
ここからが正念場だ…




