神秘的罠師と機械的罠師 開
真長は闘技場の中心に立つ少女に向かってゆっくりと歩き始める。もちろん歩きながら戦闘の仕込みも用意する
「こうしてお目にかかるのは初めてだね。モーセちゃん」
真長は平常を装っているが内心かなり驚いている
艶のある紫色の髪。白く小柄な身体。鼻と口は小さく目はクリクリの大きな二重。どことなく静かな小動物を思わせる雰囲気。容姿に関して文句の付け所がないほどの完璧な美少女
情報通りではあるのだが、まさかこれ程とは思っていなかった。男の天使殺しなら殺すのを躊躇うかもしれないレベルだ
そんなことを思いながらも戦闘の仕込みを終わらせた真長は、モーセまでの距離100m地点で立ち止まりピンポン玉サイズの戦闘用ドローンを十機展開した。そして真長自身も背中にコンパクトサイズに変形させていたミニガンを取り出す
そして、そこから一切の躊躇なくミニガンをブッパなした。無数の弾丸がモーセに向けて放たれる
自分に放たれる無数の弾丸を前にしてもモーセは表情一つ変えることなく、冷静に対処をはじめた
足下を泥に変化させ、その泥の中から一本の枯れた花が生えている木の杖を生やして手に取る。そしてモーセが杖を一振りすると足下から小さな泥がいくつも浮かび上がり、放たれた弾丸を包み込みそのまま溶かしていく
そして、ゆっくりではあるが一歩一歩確実に真長に向かって近づいていった
もちろん、近づけば近づくほど弾丸は速度が速くなる。しかし、モーセはどれだけ弾丸が速くなっても一切ミスることなく泥を弾丸の弾道に展開する。そう、まるで未来を予知しているかのように
十中八九、今やっている神業は彼女の契約天使『カラティナ』の権能『予知』の力のおかげだろう
(『予知』か...厄介な権能だな。とりあえず、どこまでできるかを試してみるか)
戦闘用ドローンを三機ほどモーセの背後に回し、適当に電気弾を乱発させる
その攻撃にモーセは背後を囲うように泥の壁を生み出して、ドローンたちの電気弾を防いだ。しかし、背後全体を泥で囲うということは正確な『予知』ができていないということだろう
ブラフの可能性もあるが、どうやら自分の見ている視界の中の出来事しか予知することができないらしい
ならばトラッパーである真長の攻撃はモーセにとって厄介だろう
しかし、真長が『予知』がどれほどの権能かを確認していた間に、モーセは真長までの距離50m地点まで近づいていた
罠師であるモーセがわざわざ近づいてきた理由がわかっていないため、真長は辺りへの警戒を強め警戒用ドローンを二機ほどステルス状態で飛ばした
これで、上空から空間の物理的状況は把握でき、呪術的状況の把握はマイに任せることにした
距離50m地点からモーセは前進をやめて、ひたすらミニガンの弾丸を防ぎ続けた。そして、三分間その状態が変わることはなかった
そして真長はモーセの考えを理解した
これは、まだ戦いの準備段階なのだろう。真長がモーセの『予知』の精度を図ったように、モーセもまた気づかれないように真長の力量を図ったていたのだろう
だがまだ、50mまで近づいてきた理由はわかっていない。そこが分かれば、モーセが真長の何を図ったのかを知ることができる
罠師にとって情報は武器であり弱点でもある、露見した弱点を知っておけば対策を取ることができるが、真長自身がわかっていない弱点を突かれたらどうしようもない
(やめよう。この方向で考えていたら無限に問題が拡張していく。いまは少しでも『戦いの中で答えを出せる、必要な思考』をしよう)
今までの考えを頭の片隅に追いやって、別観点から相手のことを観察しようとすると…
静かに一瞬、モーセが笑みを浮かべた
そして、モーセの足下から大量の泥が溢れだして弾丸を飲み込み、そのまま真長のことも飲み込もうとした。しかし、真長はギリギリで横に飛び回避をした
「あっ!」
真長が回避で横に飛んだ瞬間、相手の策を理解した
50mは泥が真長の視界を塞ぎ。さらに、本能的に回避をしてしまう間合い。そして、モーセが一瞬で踏み込める間合い、ということは…
そして、真長の予測通りモーセは泥を突き破って、回避後で姿勢のおぼつかない真長の横腹を杖で殴り、衝撃で真長は闘技場の観覧席まで飛ばされた
「くぅっ…いったぁ」
ギリギリでモーセの策に気づけたお陰でダメージを大幅に減らすことができた。お陰で真長は軽傷で収まった
モーセが上空から踏み込んでくる際に、上空のドローンに映るモーセの動きからどこを攻撃するかを予測し、横腹と決め打ちしてそこを集中して天力でガードをした
(ガードをしたとはいえ、それなりにダメージを食らっちゃったな。まあダメージの大半は観覧席に激突したときのダメージなんだけど)
『詰めが甘いのよ。まあ、強化の切り替えは経験が大事っていうから、この経験から成長しなさいな』
(痛いのやだし、これからは意識します)
痛みをこらえながら真長は立ち上がり、服にかかった砂埃を払いのける。そして、すぐさまモーセの方を向き、辺りの変化を観察する
相手は罠師だ。少しの変化が罠へと繋がり、そな先には死が待っている。罠とはそういうものだ、真理も同じ罠師であるため罠というものを理解している
見た感じの変化はない。ドローンも全て健在だ。ドローンを壊すことぐらいモーセならば容易なこと。しかし、そうしなということは、モーセにとってドローンには利用価値があるということだ
ならば、さっきまでのドローンを残しておくのは危険。そう判断した真長は躊躇なく闘技場内のドローンを全て自爆させた
その行動にモーセは驚いたのか目を見開いている
これで本当に準備段階は終わりだ。ここから先は罠師による嵌め合いの始まりだ




