エジプト支部長 ボレロ
深夜1時5分 地下上層
神喜の神力の上昇をぼんやりと感じつつ、真長とボレロは下へと続く階段を急ぎ足で降りていた
数分程階段を降り続けていると、何の変哲もない砂岩で囲われている長方形の部屋に出た。部屋には光源となるものが何一つとしてなかったが、なぜか部屋は隅々が見えるほど光が届いていた
そして部屋の奥には次の部屋へと繋がっているであろう出入り口、そしてそれを塞ぐように二人の少女が待ち構えていた
顔つきがまったく同じ青髪ツインテールと赤髪ポニーテールの少女。背丈は真長よりも一頭身ほど低く肩幅も小さい、容姿だけ見れば完全に中学生だ
「こんにちは~エジプト支部の皆々様(聞いていたけどやっぱり二人だけか~)」
そう言い青髪の少女は一歩前に出て、上品にスカートの裾を少上げてお辞儀をした。そして不敵な笑顔を浮かべてボレロと真長のことを見つめてきた
二人の少女を前に、ボレロは真長に視線を向けて地面を足で軽く叩いた。タッタッと音がなり、それだけで真長はボレロからの指示を理解した
そんな二人の意志疎通には気づかず、青髪の少女は自己紹介わ始めた
「私はミミ、こっちの美少女は私の双子の妹のルル」
それを聞いてミミの隣に立っている少女が軽くお辞儀をする…そして顔を上げずに一言
「それじゃあ…死ね」
刹那、地面が爆発しボレロと真長のことを包み込み部屋中に爆炎が広がった
「はい仕事終わり~。帰ろ帰ろ~」
「残念ながら、まだ仕事は続きそうだよ」
体を伸ばしながら部屋を去ろうとしたミミはルルのその発言で振り返り爆炎の方に目を向ける
「私は仕掛けた罠に爆発するような物は使ってない。だから爆破を起こしたのは…」
ルルは水風を起こして爆炎を沈める。すると爆炎に呑まれていたボレロが一人無傷で立っており、真長の立っていた場所には落とし穴が作られていた
「やっぱり効いていない…もう一人は逃がされたね」
「ふぅ~ん…流石エジプト支部長。おもしろくなりそうじゃん!」
ミミは脚に力を込めて一瞬でボレロの目の前まで飛び込んだ
そしてその勢いを乗せた拳をボレロに当てようとしたが、すんでのところで透明な薄茶色の壁がボレロを包んでいることに気づいた
そして拳が薄茶色の壁に触れた瞬間、ミミは爆風に吹き飛ばされ背後の壁に激突した…
「ぐぅっ! はは…なるほどね」
ミミは拳を当てた感覚だけでボレロが何をしたのかを特定した。触れることによって爆発する結界を張ったのだ、それも結界の外側だけ爆発する結界を…
ボレロの能力は『簡易結界』範囲は小さいく限界はあるが自由に結界を作ることができる能力である
「これは攻略が楽しそうだよ~ルル」
「そうだね、とても疲れそうな相手だね、ミミ」
二人の少女は互いに顔を見合わせて、どこか楽しげな顔でボレロの方を向いた…
「余興の相手をしてやる、さっさとこい」
再度ミミがボレロの目の前に飛び込んでさっきと同じように拳を当てようとした。策なしでこんなことはしない筈と考えてボレロは事前に避けの姿勢をとった
すると、ボレロの予想通りミミの拳は結界を破壊しボレロの頭一つ横に物凄い拳が突きつかれる。ミミは結界を破壊したが厳密には爆発が抑制された
誰に? そんな疑問はボレロにとっては疑問にすらならなかった。十中八九この場にいるもう一人の敵ルルであろう
しかし彼女の能力までは確認できなかった。ボレロが張っていた結界の欠点として外の天力の流れを把握することができないというものがある、そのせいで彼女が何をしたのかはわからないでいた
それに加えてミミの能力もわかっていない…
(これは…攻略のしがいがあるな)
心の中でそう思い、ボレロの瞳に闘争の火が宿った。やはり戦闘は楽しい…ボレロは再度そう実感したのだった
冷静沈着の皮を被った天使殺しで一番の戦闘狂…それがボレロの中身なのだ
ボレロの足元の砂岩が剣の形となり浮かび上がる。それを手にし、自身と剣にシンプルな防御結界を纏わせて二人の出方を窺う…
ボレロは戦闘狂ではあるが戦闘スタイルは基本的に守りメインだ。『土』の権能と『簡易結界』で守りを固め相手の情報を集めると同時に体力も消耗させる…これが基本的なボレロの戦法だ
しかし、この情報は各所に知られている情報…そのためルルとミミもこの事を知っている。その時点で情報のアドバンテージをとられている、だからこそ最初はカウンターを捨てて守りに徹する
ミミが軽く飛び上がる。まるで無重力のように思えるゆったりとした跳躍、しかし一瞬で空中から姿を消した。刹那、ボレロの頭部目掛けてミミは足を降り下ろしていた
ギリギリのところでボレロは砂岩剣で攻撃を防ぎ、部屋全体にミミのかかと落としとボレロの砂岩剣のぶつかり合う衝撃が走る。しかしミミの本命は攻撃ではなかった
「これなら、どうします?」
そう言ってボレロの懐に入り込んだのは、ミミと同じ顔をした少女ルルだった。ミミの超人的な動きに意識が向いていて意識を向けることができていなかった
ルルは片手にパステルグリーン反対の手にパステルピンク色の球体を生み出していた
そして、ルルは顔よりも大きいパステルピンクの玉をボレロの脇腹に打ち込もうとする。重ねてきた経験からそれを直で受けるのは危険だとボレロの本能が諭してくる
剣の型を変えてミミのかかと落としを受け流そうとしたが、ミミの足がなぜか砂岩剣に固定され剣を動かすことができなかった
(ざまぁ~…さて、どうするかな?)
ボレロが一瞬見せた困惑の表情を見て、ミミは嬉しそうににやけていた
剣は動かすことができず、明らかにヤバいものが打ち込まれようとしている。しかし、この程度でやられるほど支部長という肩書きは野暮ではなかった
「伝承憑依…炎土天使」
そうボレロが呟いた瞬間、部屋全体がさっきとは比にならない程の爆発に飲み込まれた




