行動前夜
あの後、真長たちは基本的な自己紹介と挨拶を終えるとボレロから作戦の内容を聞かされた。神喜は作戦の内容に不満はあるものの納得し、真長は自分の初めての重要任務だということを意識してしまい緊張してしまいオアシスの木陰に立って夜風を浴びながら星空を眺めて心を落ち着かせていた
「…明日決行か」
話し合いの結果、早く状況を打破することが先決ということになり行動の開始が明日の深夜ということになった
真長もその事は納得している、今になって不安が込み上げてくる自分が悪い。どんな状況になっても的確な策を施すために何度も訓練をしてきたし実践経験もある、失くしてしまった罠や武器も許可をもらいガレージにあった機械を改造して調達できた、そのことを考えても不安は拭いきれないでいた
自然と口からため息がこぼれる…
「オッケーマイグル「不安のなくしかた」で検索して」
『「すみません、よくわかりません」というか意味がありません』
マイの渾身のノリツッコミを無視しつつ、意味がないという部分には納得した。不安は人それぞれ、誰かの解決法が自分にも効くかわからないし本当にそれで不安がなくなったかなんてわからない
「ならどうすればいいの」
真長は星空に向かってそう呟いた、もちろんそれに答えたのは頭の中の同居人だった
『不安でもミスしなければいいんじゃないの?』
「不安だからミスが増えるかもって話でしょ」
実際、練習でうまくいっても本番で失敗する原因の大半は緊張と不安だ。真長も現在進行形でその状態の真っ只中だ
『まったく、根本が間違ってるわよ』
そんな声が頭の中ではなく、後方から聞こえてきた
そして、木の後ろから真長とまったく同じ容姿をしているホログラムが現れた
『じゃーん、こんなことができるようになれました!』
そのホログラムの口から発せられる声も自分とまったく同じものだった。考えなくても誰だかわかる、彼女はマイだ
「凄いじゃん!」
本心からの誉め言葉をマイに送ってから、どういう仕様なのかを確認した
どうやら身体は見た目通りホログラムでマイ以外には見えないらしい声も同様だ。しかし声を少しいじれば距離を表現することができるようになり、それにホログラムを加えることで真長限定ではあるがマイの意識を認識することができるようになった
『これで、目と目を合わせて話し合えるね』
マイは真長の目の前に立ち真長の顔を凝視した、真長も本当に自分にそっくりだなと思いながらマイの顔を観察した
そして、同時に笑ってしまった
「あはははwww! なにしてるんだろうねww」
『wwwwそうだね! 本当同じ顔で見つめ合うとかww』
二人とも同じ顔で見つめ合うことがおかしくてつい笑ってしまった。マイの人格の元は真長のため笑いのツボも同じなのだろう
二人で声をあげて笑っているうちに、心の中な緊張はなくなっていた
『はぁ、ちょっと予定と違う方法だったけど緊張の方はなくなったんじゃない?』
「うん、ありがとう。でもまた緊張がぶり返してくるかもしれないから不安だけどね」
『そっか、でも気にしなくていいんじゃない』
そう言いながらマイは一頭身ほど浮かび上がり、真長の頭を胸元で優しく抱きしめた
マイに実体は存在しないが真長は確かにマイの電子信号を感じとった
『あなたのミスは私がカバーする。私はあなたの「心の半身」なのよ、それぐらいはさせてよね』
「…ふふ」
マイの胸の中で小さく微笑みそのままゆっくりとうなずいた。そうしたら心が少し落ち着いた
「よし! 私はもう大丈夫!」
まだ完全に不安が消えたわけではないが、安心して背中を任せられる相棒が頭の中に居るのを思い出した
(自分のミスはこいつに任せればいい、私は私の好きなように策を施すだけ。簡単なことじゃん)
真長はマイの胸から外れて、自分の真上に輝く星に手の平を向けて、力強く星を握りしめた。すると、その星が真長の覚悟に答えるかのように少しだけ点滅したのだった
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無限砂漠の下層のさらに下層の最下層、そこは砂岩で囲われた広い空間が広がっており、地面を覆い隠すほど巨大な天術陣が描かれ不気味な光を放っていた
その天術陣を少し離れた場所から一人の男が眺めていた。その男は片手に自分と同じぐらいの杖をもっていること以外は特徴という特徴が見つからないような男だ
男がしばらくそうしていると隣の空間が歪み一人の少女が現れた、白よりのピンクの髪をワンサイドアップにして黒が多めの服を着ている少女型の天使
彼女は男の隣に並ぶと一緒に天術陣を眺め始めた、しばらく静寂は続いたが流石に男もそれな飽きてその場を後にしようとした時に少女が口を開いた
「ようやく、本当にようやくここまできたね」
少女が喋り始めると、男は少女の隣に戻り話を聞き始めた
「この世界に昇って、いろいろな仲間が消えて、そしてようやくここまでこれた…嬉しいものだね」
そう言って少女はニヤリと笑った。その笑顔を見て男は1つの質問を投げつける
「…ならなぜ裏切るんだ」
少女は表情を変えることなく、数秒間静寂な時間が流れた
そして、少女は男の前に移動して上半身を少しだけ斜めにして男のことを上目遣いで見つめ、口を開き一言
「飽きたんだもん」
少女の紫色の瞳には「純粋」という「狂気」が宿っていた
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教団が拠点としている砂漠の地下に眠る遺跡、その中の円卓会議場に四人の司教が集められていた
「…おそらく相手が動くのは明日の深夜なのです」
最初に口を開いたのは「最上位天使第64位 予知の天使カラティナ」と契約を交わしている少女、モーセだった
光輝いてると錯覚してしまうほどの紫の髪に白く小柄な身体、そんな恵まれた容姿から何度も誘拐され人身売買に巻き込まれていたモーセは、人間に嫌気をさして人でなくなりたいと思い教団へと加入した
それからは16歳という若さで司教に選ばた天才であり。現在の教団で唯一の10代の若者でもあった。その実績は確かなもので何名かの強者天使殺しを殺すのに成功しており、他の司教も彼女のことは信用していた
「モーセが言うなら確かでしょうね、今のうちに罠を仕掛けて置きましょうか」
そう言った女性は姫野彼岸という現教団の事実上のトップにして「最上位天使第22位 看破の天使シン」と契約している黒髪ロングのヤマト女子だった
他の二人の司教も無言で頷いたが
一人はちゃんと話を聞いているのだが、もう一人の方は心ここにあらず状態で自分の髪を指でいじりながら別の考え事をしていた。そのことをちゃんと話を聞いている方の少女が注意をした
「ミミ、興味なくても話はちゃんと聞いて」
「悪いなルル、話は聞いてる、ただ覚えようとしてないだけだ」
注意をされた青髪ツインテールの少女はミミ、注意をした赤髪ポニーテールの少女はルル。二人は血のつながった実の双子姉妹で仕事でもプライベートでもいつも二人で行動している
容姿こそ中学生だが二人は年齢や出身などのプロフィールを明かしていない、そのため一般教徒どころか他の司教すら彼女たちの正体をしらないでいる
やる気のないミミを見て彼岸は軽くため息をつき話を戻した。別に悪くもないのにルルは彼岸に向かって軽くお辞儀をした
その後はモーセが策を提案し彼岸とルルの二人が意見しミミが眠る、そのサイクルで会議は順調に進み小一時間で終了した
会議が終わるとモーセと彼岸はそれぞれの工房に戻った。会議場に残ったミミはルルと話をしていた
「興味ないからって、あそこまでやる気なさそうにしなくてもいんじゃない?」
「新しい術の研究の方が楽しいんだもん」
そう言いながらミミは空中に天術陣を作りクルクル回転させながら細かい構造をいじっていた
「…趣味より仕事優先でしょ? 私情を割り込まない、珍しくあの人からの仕事なんだよ」
「もらった仕事はこれだけじゃないだろ、わたしはこっちの仕事の準備をしてるだけ」
ため息を吐きつつ理にかなってはいるため、納得することにした
「はぁ、仕方ない。こっちの仕事は私が準備しといておげるよ、策は以心伝心で伝ええるからね」
「サンキュー」
それを聞いてミミは親指をグッと立てて、颯爽と工房へ戻っていき、ルルはしばらく会議場で策を考えることにした...




