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行動の兆し

神喜がシャワーを浴びている間とくにやることもなく、真長は椅子に座ってうつむきながら考え事をしていた

神喜から聞いた父の事、天否先輩が父を気にかけていたという話。その話を聞けただけでエジプトに来たかいがあったと真長は思っていた


そもそも真長がエジプトに来たかったのは、シッピングモールの一件でもらったデータから父を殺した男と深い関わりのある教団について調べたのが始まりだった...


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シッピングモールでのあれこれが終わらせてからは、真長は機械工房に引きこもりルジさんから預かった事件資料をもとに父が殺された事件についてを一から調べなおしていた

ちなみに、対天使局の仕事はすべてマイに丸投げしていた


だが問題はそこではなかった、事件で誰が何をしてどうなったのかは調べ終わっていた。問題はなぜそうしたのかだった

どれだけ調べても天否先輩が父を殺したのは確定だった、本人もそのことを罪と感じていた。だから「なぜそうしたのか?」を知りたいのだが、真長は天否について何も知らなかった


神魔天否・双月ルジ・神東神喜、この三人の生い立ちは対天使局の中での最上機密事項。流石に天使殺しになりたての新人ちゃんでは天否本人について調べることは難しい


だが、たった一つだけ突き止めることができた。それは世界的に有名なテロ教団が天否の生い立ちに関係があるということだった


それからは早かった。天使殺し名義で対天使局員兼情報屋から教団の情報を仕入れ、エジプトに拠点があることを突き止めた、そのタイミングで今回の任務が言い渡された


そして、天否先輩の幼馴染である神喜さんと出会い、父の話を聞くことが出来た。けれど本命は教団の解体だ


本番はこれからなんだ

そう覚悟をして、真長はエジプト支部を探索し始めた


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エジプト支部は予想通りというか予想外というか、結構小さかった。リビングにキッチン、局長室に空き部屋が五室に物置部屋とガレージ、家として見れば相当広い部類に入るのだが、国際機関の支部として考えれば普通に小さいだろう


捜索を終えてリビングに戻る途中の廊下で局長室から出たボレロと鉢合った

(そういえば、父のことで頭が一杯だったけど、ちゃんと挨拶してなかったっけ? 流石に失礼かな?)

何を考えているかを見透かしたのか、ボレロは局長室の扉を開けた。その意図を汲んで真長は局長室へと入っ...


「へいへい! 現役JKを部屋に誘い入れるなんて流石だなイケオジ!」

部屋に入ろうとしたところで、シャワーを終えた神喜が全裸の身体にタオルを巻いている状態で廊下の端で仁王立ちをしていた。もちろんタオルが身体から滑り落ちそうになり、それをとっさに抑えた


真長は見ていて恥ずかしくて頬を赤らめていたが、ボレロは慣れているのか一切の感情がない瞳で神喜のことを見つめながら一言声をかけた

「早く服を着ろ、風を引くぞ?」


「あっ...はい」

その後、一分もしないうちに神喜は服を着て戻ってきて、真長と一緒に局長室に入った。局長室の作りは日本の局長室と変わらないがコーヒー豆やめちゃくちゃ古くて分厚い本などが置かれており、ボレロという人の特色が部屋に現れていた


「コーヒーを淹れる、君らも飲むだろ?」


「もちのろん!」と親指を立てる神喜、その横でコクコクとうなずく真長。二人はそのままソファーに座りボレロはコーヒーミルをソファーの前のテーブルに置いて、慣れた手付きでコーヒー豆を選びそれを持って二人とは反対側のソファーに座った


「挨拶が遅れたな、私は対天使局エジプト支部局長ボレロ・ガーレライトだ、よろしくな」

コーヒー豆を挽きながらボレロは話を続けた。1からコーヒーを作るのはボレロの趣味でありこだわりでもあった

「ただのテロ組織の撲滅と侮っていたが、まさかここまでやられるとは思っていなかった。真長君には迷惑をかけた」


「私としては、良い経験になったので良いんですよ」

もちろん嘘であった。一度死んだのだから二度と同じ目には合いたくないと思うのは普通の人間として当たり前の感情だろう

真長はそう思っていたが、バレないように従順な後輩スマイルを見せて、それを悟らせないようにした

「…まあ、それならいいか」


「よきゃねぇーよ、私の心配もしろよ!」


「自分が平気なのに自分より強い相手を心配する必要性を感じない」

普通はこの返答には不満が出るものなのだが、神喜は「自分より強い」の部分が嬉しいのか満足げにクスクスし始めた

(神喜さんって素直な人だな~)

そんなことを思いながら神喜を横目で眺めていると、ボレロが咳払いをして意識を戻してくれた


「さてと、本来なら今回の任務は中止にすべきなのだが私は今のメンバーなら任務の完遂も可能だと考えている」


「いや、エジプト支部の皆さんは砂漠から避難しているのですよね? 流石に私たちだけじゃ人がいなさすぎるんじゃ…」


「いやいや、逆でしょ逆」


「逆?」


「そそ、私からしたら邪魔な奴らがいなくて戦いやすいって思うけどな~」

なんとなく二人の言いたいことが真長にも理解ができた、数の力ではなく個の力で攻めるというこを考えているのだろう

「でも、やっぱり数が少ないのでは?」


「エジプト支部の天使殺しの数は250人、その全員が同時に神喜に挑んだとしてもおそらく神喜の圧勝で終わる。この場に彼女が来てくれた時点で数の問題は解決してるんだ」

ボレロの説明を聞いてさっき見た神喜の戦闘を思い返して、あながち…いや普通に真実なんだと思い納得した


天使殺しの実力格差はえげつない。契約できる天使によって天力総量や技のレパートリーが決まる。神話に名を残している天使であればそれだけで特別扱いをされる、真長もまさにそのうちの一人だ


真長の不安はなくなり、それを示すようにうなずくとボレロは話を戻した

「今回の任務の内容は「教団の本拠地に乗り込み残りの司教四人を葬る」ことだ。途中で天使の介入があることは間違いない、現にこの「無限砂漠」がそうだからな」


ボレロの説明を聞きながら、真長は教団についての基本情報を思い出す。教団には十人の司教が存在しており、司教には天使殺しの「伝承憑依」を敵側の天使とすることが可能でありその状態の司教は対天使局でもトップの実力者でなければ相手ができないほどの実力になるらしい


しかし、すでに六人の司教が討伐されており今回の任務で全ての司教を倒すことができれば教団は自動的に消滅する。これが今回の最終目標であった


「四人全員が最後の拠点に居るって情報は信憑性はどれぐらいなの?」

真長も同じ疑問を感じていた「この無限砂漠の混乱に乗じてすでに全員逃げてしまっているのでは?」これはまっとうな疑問だ。しかしボレロははっきりと断言した


「100%だ。奴らは全員揃って最後の拠点に居る」


その自信に満ちた声に真長は自然と納得しようとしていたが、神喜はそんなことは気にせず証拠を要求しはじめた

彼女は対天使局の天使殺しではなくフリーの殺し屋のため今回の任務に参加する義務はない、そのため依頼の内容や情報の出所をちゃんと知って任務に挑みたいのだろう


「証拠なしじゃ依頼には乗っかれないかな~」

神喜はボレロを煽るようにそう言ったが、ボレロは特に気にした様子もなく話し始めた

「証拠はこの場にいない奴に見張らせているからだ。お前ならそれでわかるだろ?」


真長は全く意味がわからなかったが、ちゃんと神喜には意味が伝わっていた

「あー、あの老人の皮を被ってる変人の情報か。なら信じるしかないかー」

真長だけ状況が理解できておらずマイに助けを求めた結果、一人の人物の情報をデータベースから引っ張り出してきた


エジプト支部長秘書 夕凪レイ

情報収集を最も得意としている対天使局の天使殺し、実力も全員局長秘書の中では最強を誇っている。老人好きの老人オタクというヤバい一面も持っており能力の容姿変化によってよく老人の姿で活動している


ちょっとよくわからない部分もあるが二人の話している人物は彼女のことだろう。そう納得していたら真長と神喜の前にさっきからボレロが作っていたコーヒーが完成していた

「私の特性ブランドだ、一息ついてから作戦についてを話し合うぞ」


一言お礼を言ってからすすったコーヒーはどことなく落ち着く苦味がした


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