表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/127

海根という人

シャワーを終えてシャワールームを出ると、部屋の外には黒色のシャツとスカートが置かれていた

若干胸元に空白のあるような気がするが、気にしないことにして神喜のまっているリビングへと戻った


リビングに戻ると神喜はマグカップを両手で持ち、フ~フ~と息を吹きかけて冷ましていた

「お待たせしました」

そう言って真長は神喜の正面に座って自分の方のマグカップを手に取り、丁度いい温度になってると思い口をつけてみた

「…?」

しかし、どれだけ傾けても一向にコーヒーが口に到達することはなかった。一旦カップを離して中身を覗いてみるとキレイサッパリ中身が失くなっていた


マイに聞くまでもなく、犯人は目の前でフ~フ~している人だろう

「神喜先輩? 私のカップの中身を知りませんか?」

そう言って神喜に空っぽのマグカップを見せる。神喜は一瞬チラッと見て再度フ~フ~に戻ってしまったが、まったく湯気が立っておらず明らかにコーヒーは冷めていた

「真長後輩よ、先輩呼びはむず痒いからせめて、さん付けで勘弁してくれ」

「なら神喜さん、これの中身知ってます?」

「私の胃袋の中だよ」

「理由は?」

「えっとぉ…情報代?」

明らかに即席で考えた言い訳だろうが筋は通っていたので、それ以上の追及はしなかった

「それじゃあ、情報代をあげたんだから父のことを話してください」

神喜はコーヒーを一口すすってから、話し始めてくれた


----------------------------------------------------------------


私と天否は身寄りがなくて、天否はリンナさんの義弟になって私は「神東神喜」っていう戸籍を作ってもらったんだ。昔の名前は…その…重要機密だからね


それからは天否と私、そして境遇の似ていたルジの三人で過ごすようになったんだよね。三人とも同じ理由で苦しんでいたから気が合ったんだよ


私たちは天使に対して恨みはなかったけど、リンナさんの役に立ちたくて天使殺しになることにしたんだ。まあ、もともとリンナさんはそのつもりだったらしいけど、私たち三人は特別だから


それからはリンナさんに修行をつけてもらってたんだけど、流石に対天使局の局長なだけあって毎日面倒をみることが難しくて秘書の美成さん、そして防衛隊長である光希海根さんに面倒をみてもらってたんだ


当時、海根さんは妻の出産…真長後輩が生まれたのを理由に休んでいたんだけど、私たちのために何度か対天使局にきて修行をつけてもらっていたの。まあ、肉体的な修行じゃなくて戦術的な修行だったから私は好きじゃなかったんだけどね


これが私たちと海根さんの関係はそんなところだね。それで、聞きたいのは対天使局での海根さんのことだよね


海根さんは…一言で言えば素直な人だね。色物だった私たちにも回りと分け隔てなく接してくれたし、それでいて回りの人からの評価も落ちない。最後まであのコミュニケーション能力だけは習得できなかったんだよね


まあ、みんなに信用されてた人だったことは確かだね。それはもう怖いぐらいに…

そして、その事を天否は警戒…いや、心配していたんだ。なんで心配してたのか当時はわからなかったけど今なら分かる…きっと、対天使局のみんなが海根さんを神格視していたから彼は心配していたんだ


----------------------------------------------------------------


「神格視していた?」

普通の優しいお父さん、それが真長から見た父の姿だった。そのため、その言葉には違和感を感じてしまう


「…対天使局のみんなが「海根さんなら何でもできる」とか「あの人がいれば絶対勝てる」なんて根拠のない理想を盲信していたの」

その事には共感できた、薄い記憶ではあったが父の背中はとても大きくたくましくかった…しかし、当時の真長は子供だった、親のことがそう見えてしまうのは仕方がない


「そんなに信用されていた人だったんですね」


「そりゃもう、実質リーダーはリンナさんじゃなくて海根さんみたいなものだったからね。海根さんが本気でリーダーになりたかったなら、普通になれてたと思うよ」


「父が…」

自分が見ていた父の姿が他の場所でも同じということを聞いて、安心したのか拍子抜けしたのかわからない感情になってしまった。しかし、もう一つ気になる場所があった


ずっと意識してしまっていた「天否」という名前…父を殺した恨むべき男の名前を…

「せんぱ…天否さんは、なんで父のことを心配していたのですか?」

父のことを聞きたかったのは本当だった。けど、本当に気になっていたのは天否と父の関係性と当時の天否がどんな人物なのかの2つだった


神喜はマグカップを持ったまま、何かを深く考えるように両目をつぶった。そして、目を開けて一言呟いた

「わかる…はずだよ」

神喜は静かにマグカップをテーブルに置いた。カップの中にコーヒーは残っていなかった…

そして「私もシャワー浴びてくる!」と明るく言って、そのままシャワールームへと向かっていった


神喜が去ってから、真長はひっそりと呟いた…

「…そうなんだ」

答えは出ていた…少なからず真長も若くして天使殺しとなった天才、回りから神格視されることもあった

だからこそわかる、期待は毒にも薬にもなるということを…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ