迫りくる罠
ソウによる奇襲の翌日。ルジとムネはアメリカの対天使局にやってきた。もちろん、何も知らないふりをして
まず2人はビルのいる局長室に向かった
「失礼します」
2人は扉を開けて部屋の中に入った。部屋の内装は世界各地のさまざまなオブジェが置かれていた。2人は何かメッセージが隠されてないかを確認しながらゆっくりとソファーに腰をおろした
「2人とも昨日ぶりだね。昨日はよく眠れたかな?」
「はい、何事もなくゆっくりと休めましたよ」
ルジは息を吐くように嘘を言った
どうせ、この会話も天使に盗聴されている。なら意味のない嘘を言って相手を惑わせてやろうと考えたのだ。ビルもその意図には気付いているだろう
「そうかい? それならばよかったよ。では仕事の話をしようか」
そう言って、ビルが1枚の地図を広げた…
「この地図は例の議員が住んでいる屋敷の地図。明日に私が選び抜いた精鋭と突入して議員と天使を殺す、人払いはこちらでやっておこう」
「それまで俺達は何をしていればいいんですか?」
「好きにアメリカ生活を満喫してくれ。観光をするのもよし、天使殺しとして働くのもよし、「暗部」として働くのもよし。何をしようが私は何も言わないよ」
「暗部」として働け…これは天使殺しの動向を調べ、罪を犯している場合「対処」するということだ、つまり怪しまれずにアメリカ支部の事を調べられる。ビルがルジに依頼をした理由は暗部の中で最も強いからだろう
「…なるほど、そうですか。では失礼しますね」
2人は立ち上がり、部屋を後にした…
対天使局を後にした2人は近くのジャンクフード店で昼食を取っていた
「それで、ここからどう動きます?」
「とりあえず捜査だね。暗部の肩書きがあればある程度は動ける、真相に近付けば天使は動きを見せるだろうから、そこを叩く」
そう言いながらルジはチーズのかかったフライドポテトをつまむ。ムネはハンバーガーを食べきり飲み物で流し込んだ
「それじゃあ、天使殺し達に遠回しに人質のことを聞き回りますか?」
「んー…俺達にボロを出しちゃったら人質の命が危ないから聞き込みは危険だと思う。もっと単純に調べるとしようか」
「と言うと?」
「見て、感じる。以上」
「相変わらず天才の言うことはよくわかりませんね。それで結局どこに行くんですか」
「わざわざ来たんだから、アメリカ観光をするに決まってるでしょ」
「天才の言うことはよくわかりません!」
そして2人でアメリカ観光をしていると、見事に天域に吸われ、聖獣に襲われまくった。疲弊しながらもなんとか自由の女神に到着することができた
時刻は約6時…日が沈み始めていた
「やっと着いた…こんなに時間が掛かるとは思わなかった」
「別に観光がしたいのなら、今回の件が終わってからでよかったんじゃないですか?」
「一応調査だからね!」
「なら、少しは聖獣を生かしといてくださいよ…」
ムネは襲ってきた聖獣の性質を調べたかったが、ルジが現れる天獣を速攻で殲滅させるため、全く性質が調べられずにいた
「自由の女神像ですか…普通見飽きる程見ているのですが、いつ見ても圧巻ですね」
「だな…それじゃホテルに戻ろうか」
そして2人はホテルのある都市に通っている地下鉄に乗った。その間、ムネはなにか不満げな顔をしていた、その事を指摘すると「いえ、別に。いつもの事です」と言ってそっぽを向いてしまった
「ムネもまだまだだね。本当にただ観光しただけだと思ってるのかな?」
「少なくとも観光は楽しんでたじゃないですか?」
「全くもってその通りだけど、もし要注意人物2人が一緒に観光をしていたら、普通襲ってくるよね」
「実際、何度も聖獣に襲われてますけどね」
「でも、直接天使は襲ってこない。何でだと思う?」
「人に見つかったら都合が悪いからでしょう? 天使殺しの常識ですよ?」
「それじゃあ、車両に俺達2人しか居ないこの状況では、どう動くと思う?」
それを聞いた瞬間にムネは はっ! として、辺りを見渡す。あまり気にしていなかったがルジとムネ以外の乗客が1人も車両には居なかった
「なんで…?!」
「普通の人間じゃ感知することの出来ない物質で作られてるんだろうね。そして、疲労で疲れていたムネは何も考えずにその電車に乗車してしまった。おそらく、そろそろ天域に入ると思うよ」
ルジがそう言った瞬間、電車が歪な巨大天域に飛び出した。地面は割れ、緋色の光が世界を包んでいた
2人は窓を蹴り破り近くの浮島に脱出したが、電車はそのまま底の見えない深淵に落ちていった
「ほらね。罠に掛かったでしょ?」
「私達がですけどね?!」
ムネのそのツッコミをガン無視してながらも、ルジは周囲の気配を探る。が、とんでもなく嫌な予感がする笑顔でこう言った「想像よりもヤバかった!」と
次の瞬間には数百の聖獣が2人の事を囲んでいた。そして、その中に1人だけ半人半獣の姿の天使があった
「オウよ! あたいはカギュラだ、わりーがここで死んでもらうぜ!」