創世の裏側 破壊の表側
光が天域を呑み込む直前に綻びから現実世界に脱出したルジは屋敷の屋根に登り状況を確認した
周りが暗闇のためあまり良く見えないが森の南側には争った跡が多少残っているのをギリギリ確認できた、そして北側は屋根からでは状況を確認できなかったが気配でムネが誰かと戦っていることを予測した
「戦況は分からないが、とりあえずムネの援護に…」
次の瞬間、爆音と共に物凄い天力の波動がムネの方向から感じられた。再度ムネ方向に目を向けると、森の一部に巨大なクレーターができていた
「今の感じ…まじか」
ルジは瞬時に理解した、これ程の天力を出せる天使はおそらく大天使の誰かだということに
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ムネは何が起きたのかを頭の中で考える
動きが止まったソウに弾丸を打ち込んだ、しかし弾丸がソウに当たる直前に弾丸がなぜか弾けた、そしてソウは立ち上がりムネに向かい膨大な天力波を放ってムネは吹き飛ばされて木に激突した
頭の中で出来事を再認識し辺りを見渡すと周囲の草木が1つ残らず破壊され、さっきまでムネがいた場所に巨大なクレーターが空いていた
「なに…が」
ムネ自体もダメージをかなり食らってしまい、右手も上手く力が入らなくなっていた。それに加えてリボルバーとナイフも攻撃を受けた拍子に手放してしまい手元には銃剣が一丁しかなかった
ムネは銃剣を左手に持ちソウを探す。見つけるのに時間はかからなかった、ソウはクレーターの真ん中でうつ向いていた。立て直されたら勝機はないと考え、ムネはソウの核に向かって青色の弾丸を放つ…
引き金を引いた瞬間だった、ソウがムネのことを見た。そう、ただそれだけだったのに時間の流れがゆっくりになり、別に威圧をされている訳ではないのに異様なほどムネは死を感じた
銃弾がソウに直撃する、しかし砕けたのは銃弾の方だけだった。ソウは何事もなかったかのようにムネに向かってゆっくりと歩いて来る
弾丸が破壊されてしまえば軌道を変えて無限に打ち抜き続けることも不可能、しかも天力が籠った弾丸を何事もなかったかのように耐えている相手に普通の銃弾が効く訳がない
「くっ…」
勝てないと思ったら逃げろ これはムネがルジから教わったことの1つ。あまり良い教えではないが天使殺しをしているとこの教えがいかに正しいかが嫌という程理解できた、今もその時だと判断しムネは逃走を図った
決してソウに背を見せずに気配を自然と一体化させ空間に溶け込みながら背後の森に入ろうとバックステップをする
「またそれか」
ソウの口が確かにそう動いた、そして腕を軽く横に振った…するとムネは吹き飛ばされ倒れ落ちていた木に激突し、その後背後から大量の木々が砕ける音が聞こえてきた、ムネが振り返ると周囲の木々が全てバラバラに砕け散っていた
「自然に気配を溶け込ませられるのなら自然を無くせばいい、単純だが合理的な判断だろ? だが、やはり自然を傷つけるのは心にくるものがあるな」
こいつはソウではない、ムネの全てがそう言っていた。気配も雰囲気も天力の質も圧も量も桁違いだった、そして今の攻撃からは天力を感じなかった、彼女は単に手を振って木々を凪払っただけなのだ強化もなく単純な身体能力だけで
この勝負には勝てない、ムネはそう確信してしまった
ムネは諦めて瞳を閉じたとた。心地良さに身体が包まれて痛みが引いていく…「これが死なのか」とムネが思った時「もうちょっと起きててくれないかな?」と言う声が聞こえて目を空ける
「ビルさん…」
「起きたかい? 精密な治療は事が終わるまで我慢してくれる?」
ビルの契約天使である風来天使は治癒にも精通している、それに加えてビルは元医師であるため治療は得意中の得意であった
ビルはいつも通りの余裕綽々な笑みを見せてソウの方を向く。ソウは少し嫌そうでめんどくさそうな顔をしている
「私は人気者らしいね、私も私が誇らしいよ」
「その言い草だと君には「私」が2人いるみたいだね」
「その通り、私はもう一つのソウにしてソウの裏側...みんなからはハカって呼ばれている」
「へー、それじゃあハカちゃん取引をしないかい?」
「取引?」
「今日は互い幕引きにしないかい。私もユーリとの戦闘でかなり消耗してしまってね、早く帰って眠りたいのだよ」
ハカは金バットを生み出してビルの方に向けた
「そんな取引に応じる訳ないだろ、最低でも1人は殺しておきたい」
「物騒だね、だが確かにそちらは何の成果も得られてないからね。けど今は退くのが得策だよ」
「その通り! なぜなら俺がきたからな!」
そう聞こえた瞬間、上空からルジが落下してきた。しかしルジは全身傷だらけで服もボロボロ、天力も少ししか感じ取れなかった
「足やったかも。カッコつけて大ジャンプなんかするんじゃなかった」
「まあカッコつけるのも大事だからね。暗部としてはどうかと思うけど」
トップクラスの天使殺しのルジとビルに挟まれてもハカは金バットを下げることはしなかった。金バットに天力を集約させて戦闘態勢となっていた、天力が集約された金バットは金色の輝きを放っていた
「私の答えは変わらない。ビルお前が力の9割を残していることも知っている、ルジお前が私の攻撃を受けて天罰で逆転を狙っているのも分かっている、だけど戦う」
ハカの目には殺意も憎悪も宿ってはいなかったが確かな覚悟が宿っていた、それは相手を倒す覚悟ではなく仇をとるための覚悟だった、ハカはソウの味わった苦しみ以上の成果を上げたかったのだ
ルジとビルも戦闘は不可避だと理解して戦闘態勢をとる、ルジは剣のモニュメントを取り出しビルは全身に衝撃を緩和する風を纏った。ムネは足を引っ張らないように少し離れた場所で傷の応急処置をし始めた
ハカが金バットを地面に叩きつけ周囲に衝撃波を放った、ルジはジャンプで回避してビルは前方に分解旋風を展開して相殺したが衝撃波の波動に隠れてハカはビルに接近していた
ハカの金バットが腹部に直撃してビルは吹き飛ばされてしまう
「がぁ!」
ビルは肺をやられて口から血を吐いた。確実に致命傷となっただろう
「致傷突」
ビルに攻撃をした隙に背後に接近したルジは致命傷となりえる部位を複数のモニュメントを巨大化させて同時に攻撃する殺し技 致傷突で攻撃した。地面から複数の黒剣が巨大化してハカの四肢を切り分けようとすると同時にルジは核を貫こうとしたが、ハカに触れた瞬間に全ての黒剣が砕け散った
「は?」
動揺するルジを回し蹴りでビル同様吹き飛ばした、ルジはギリギリで今できる最大の強化で致命傷にはなりえなかったがかなりのダメージを食らってしまった
ビルとルジは同じことを考えていた...
((こいつは強い…))




