頭の使い方
リトルコスモを突き破った分解旋風はビルの生み出した竜巻と合流し2人を暴風の檻に閉じ込めた
檻の外側はビルの生み出した分解旋風が循環し続けて天域を分解し続けていた。ユーリはリトルコスモを生み出して抵抗するが、リトルコスモ程度では合流して加速し続けている分解旋風を止めることは出来ず泡をいくつも引き裂いていった
「その程度の抵抗が限界かい?」
「…カチンと…きた。…けど…感情には…流されたく…ない」
すでに周囲の水はビルの竜巻によって分解され続け、今も生み出された瞬間に天力に分解されてしまっている。要するに天域としての機能は失われているも同然の状態となっている
ビルは天域を分解するのに天力を使いユーリは分解された部分を修復させるのに天力を使う、一見プラマイ0のように思えるが、ユーリにプラスの状況がプラマイ0にされてしまったため結果的にはユーリが損をしている
今ユーリには2つの選択肢が浮かんでいた
1つ目が天域を解き現実世界で戦うこと、これを選べばお互いに天力を使い続けるという不利益がなくなる
2つ目はこのまま天域を維持すること、こちらを選べばお互いに天力を使い続けるという不利益を背負いながら戦うこととなる
ユーリが考えている間もビルからの攻撃は止まらず、四方八方からの風の斬撃に接近したビルの格闘術を防がなければならなかった
その時、ユーリは天域を展開する前の小競り合いの時にビルの言ってたことを思い出した
『私の力は凄いから近隣の住民を困らせてしまう』
この事が本当ならばビルは現実世界では本気で力を使えないということになる、それに気づいたユーリは迷わず天域を閉じた
「おや、この世界はもうおしまいなのかい?」
物凄い暴風で辺りはほとんど見えていないにも関わらず天域を閉じようとした瞬間にビルはその事を見抜いた
「…ここじゃ…決着…つけられそうに…ない…から」
周囲の空間がユーリの胸元に吸収されて辺りはさっきの森へと戻っていた。さっきまでの暴風が嘘かと思えるほど辺りは無風で木々のざわめきすら聞こえなかった
互いに相手の出方を探る
ビルもユーリも技を出しきった訳ではなく、2人ともまだ策を持っている。状況はリセットされた、そのため最初が肝心…ユーリはそう考えていた、その考えが悪手だった
まず動いたのはビルだった、拳と足に風を纏ってユーリに急接近し核に向かって打撃を加えようとした、しかしその構えは力は出せるが隙が多いい構えでユーリは反撃をしようとしたが身体がまったく動かなかった
「これで決着だね」
ビルの一撃がユーリの身体を貫通させ、腹部に風穴が空く。空いた風穴から血は流れなかったが物凄い勢いで天力が溢れ出した
「負け...ちゃった...」
ユーリが自身の敗因に辿り着くのに時間はかからなかった...単にビルにはめられたのだ。違和感は感じていた、ビルの攻撃はどれも相手を殺すような殺気立っている殺し技を使っていなかった
ビルは狙っていたのだユーリが天域を解く選択をするのを、最初に現実では力を使えないと言っておいて天域内で状況が五分五分になった時に天域を解く方に誘導した
天域を解いてからは簡単だ事前に仕掛けられていた風を使って動きを一瞬止められた、ユーリは状況がリセットされたと勘違いしていたため事前に何かが仕掛けられているとは思ってもいなかった
「うまく策がハマって良かった良かった」
「...はめられた...もう...ぜんぶ...わかった」
「流石中身が5位なだけあるね、でもそれなら私に誘導されていたことにも気づいてくれてもよかったんじゃないかい?」
周囲に風が吹きはじめる、さっきまで無風だったのはビルによる演出だったのだろう
「…いい…頭…してると…思うよ」
ユーリからは大量の天力が溢れている、ユーリの身体はすぐに朽ち果てるだろうがユーリの意識は本体である5位の肉体に戻るだけで倒せた訳ではない
ビルは反撃されないように距離を取って辺りを風で囲みユーリが朽ち果てるのを待った。しかし何者かがビルの風を突き破り背後からビルの背中を斬りつけた
「ぐっ!」
ビルはとっさに振り向いたが背後には誰もいなかった、その時ユーリから目を離してしまったことに気がつきユーリの方に目をやると何者かがユーリを抱き抱えていた
ユーリを抱えた天使は透き通るような水色のロン毛に女性のような穏やかな顔つき、片手には細長い剣を握っており、顔の半分を隠している仮面と執事服を身に付けている青年だった
「彼女は回収させてもらいます、少しでも部品が残っていたら修復の可能性があるらしいので」
「…あり…がと。…いうこと…きいてくれて」
ユーリは小さな声でそう言ったら意識を失った。そしてユーリの中の天力が全て外に出切った、本来の天使ならばここで肉体が崩壊するがユーリは正当な天使ではないためか肉体は崩壊しなかった
「立場が上の方に従うのは当たり前のことですよ。けど「負けた時に死体を回収して」なんてお願いをするなんてやっぱり臆病ですねユニバース様は」
「まさか君が来るとは、ちょっと予想外だったよファントム」
ビルは彼のことを知っていた、天使殺しの中で彼は有名な天使の1人だった
最上位天使 第10位 亡霊の大天使ファントム
最上位天使のトップ10が名乗れる大天使、ファントムは対天使局が詳細を把握している4人の大天使のうちの1人、危険人物であり万全のビルでも戦いたくない相手だった
「安心してください、ユーリ様さえ回収させてくれるのなら戦う気はありません。貴方様としてもその方が都合がいいでしょう?」
「それは助かるよ、今天力はカツカツだし、君とは相性わるいからね」
「なにをおっしゃっているのだか、貴方様は天力の3割程度しか使ってないではないですか?」
「風は巡り巡って循環するものだからね、私の力はコスパがいいのだよ」
「相変わらず底を見せてくれませんね、まあそれはこちらも同じなのですが」
「似た者同士なのかもしれないね。それじゃあ私は若い弟子の為にもムネちゃんでも助けてこようかな」
「そうした方がいいと思いますよ、彼女が目覚めたらムネ様に勝ち目はないでしょうから」
ファントムがそう言ったとき森の中のビルのいる場所の反対辺りの地点から、膨大ではないが物凄い濃い天力を感じ取った。天力の濃さは実力の現れ、ファントムの言う通りここまで天力濃い奴が相手ならばムネに勝ち目はないだろう
「さて、それでは私は失礼します。では、またいつか戦場で。貴方様も急いだ方がいい」
そう言ったらファントムはまるで幽霊のように消えた。天力も一切出していなかったため追跡は不可能だろう。そのことを確認してからビルは急いでムネの戦っているであろう場所に向かって移動し始めた
「いいね」ください! いいじゃないですか、減るもんじゃないし




