作戦の先
心臓を刺されたルジはとっさにフィオナから離れようとしたがさっきまで活気を失っていた鎖が元の状態に戻っておりルジの動きを封じ込めた
ルジの口から血が吹き出す
「な…んで」
「この瞬間のために私は6年間頑張り続けました。その努力は結果としてあなたやビルさんを欺いて心臓を刺すことができた」
ルジの振動の鼓動が着実に減ってきていた、体温も下がり感覚もなくなり始めていた
「気づきませんでした? 私は最上位天使第29位パリボスの本体だということに。さっきまで戦っていたのは私の作った偽物ですよ」
「なるほど…理解できた。俺は君の資産を破壊した、その償いがこの苦痛ってことか…」
再度、ルジの口から血が溢れた
「そう言うことです。ついでに冥土の土産として教えてあげますが私の能力は絶対契約ではありませんよ」
フィオナがそう言いきるとルジの身体中に鎖を突き刺した
フィオナはルジの心臓を触り鼓動が無いことを確認して一気に緊張が柔いだ。最強の暗部の可能性がある人物を欺き続けていたのだ、集中力は常に全力全開だった、その集中の糸が切れてフィオナは膝から崩れ落ちた
「やっと、殺せた」
胸元から血を流しながら倒れているルジを見ているとフィオナの眼からは涙が溢れだしてきた、悲しみの涙ではなく歓喜の涙が
彼女の努力の数々を考えれば涙を流すのも納得がいく。着実に体温を失っているルジを眺めながらフィオナは通信用鉱石で他の仲間の天使に連絡をした
「ユーリ様、終わりま…」
次の瞬間に鉱石から物凄い暴風の音が聞こえてきた、そう思ったら音が一気に止みユーリの声が聞こえてきた
「ごめん…今は…取り込み中」
そう言って通信は切られて鉱石は砕けた。フィオナはすぐにビルが動いたのだと勘づき絶命契約を発動させた
フィオナの右手に紋章が浮かび上がり赤く光る、そして紋章から光の糸が伸び始めたが…風に吹かれたかのようにその糸が消された
「なっ?!」
今の光の糸は絶命契約の罪罰そのもの。嫌な予感を感じてフィオナは右手に目を落とす、嫌な予感は的中し紋章は綺麗さっぱり消えていた
「なんで…」
フィオナの作戦は日陰者を殺すところまでしか考えられていなかった、その先のことを予想する余裕がなかったのだ。だが目的を果たせたのならフィオナたちは逃げるだけでいい、そう思い天域を閉じてユーリの援護に向かおうとしたときに後ろから声が聞こえた
「見事な作戦だった」
その声を聞いてフィオナは困惑した、確かに心臓を刺して全身串刺しにもしたし心臓が止まるのも体温がなくなるのも確認した。しかしフィオナが振り向くとその人物は立ち上がっていた
「お前は見事に天使殺し双月ルジを殺した。それは凄いことだ、だから…日陰者としてお前と戦う」
その声はさっきまでの陽気な声とは違い、暗く落ち着いていてしっかりとしている、静かで大人びた声をしていた。雰囲気も陽気なオーラは完全になくなっていて死を連想させるような威圧感を放っている
これが双月ルジの…日陰者の本当の顔なのだ
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森の中、今回の任務とはあまり関係の無い地点でビルとユーリとの戦いは静かに起こっていた。お互いに木の枝を乗り継いで攻撃を飛ばし合っているが2人にとってこれは準備運動ていどの小競り合いだった
「そろそろ完成したんじゃないかい? 私としても早く本番を終わらせたいのだよ」
「本当に…待ってた。…あなた…愚者なの?」
「いいや、私の力は凄いから近隣の住民を困らせてしまうかと思ってね」
「…なめる…なよ?」
そう言ってユーリはポケットから青黒いビー玉のような物を取り出してビルの方に向かって弾いた。玉は2人の中間で破裂して青黒い光が溢れだして2人の事を一切の光が届かない闇に包まれた深海へと流し込んだ
辺りは水に包まれていて光は届かず、海底植物や深海生物が放つ光が辺りを照らしている、それらの生物はこの世界ではまだ発見されていない生物の数々だった
「ぼぉれがぁぎみの…ごばぁ」
ビルは頑張って喋ろうとするが口に水が入ってしまうため諦めてテレパシーを使うことにした
「これが君の天域だね。これは凄いな、一見何も無さそうに見えて水圧が飛んでもないことになっている」
「そう…あなたに…とって…相性は最悪…だよ?」
そう言ったユーリの姿は少し変化しており、髪が伸びて服も深海のような青黒い服にクラゲのように白く透明な羽衣を纏っていて、背中には珊瑚のような翼が生えていた
これが天使の本来の姿であり最も力を出すことのできる状態の姿。この姿を解放できるのは神聖の高い空間のみで、その最も最適な場所が自身の天域内である
天使に有利な状況に動く「天域」を展開し、最も力を発揮できる姿となったユーリを前にしてもビルは臆することもなく、むしろその顔には余裕な笑みがうかがえた
「相性は最悪で場所は敵の天域、しかも風が吹かない海の底…確かに悪い状況だね」
ビルは深呼吸をする…すると次第に円形にビルの周囲の水が消滅していった
「けれど、風が吹かないのなら吹かせるだけだ。私は呼吸をしていて息がある、今はそれだけでも十分だ」
すると、ビルの周りから急激に風が吹き始め、風がビルを包み始めた…ユーリは泡のような玉を放ってビルに攻撃をするが風に全て弾かれた
「伝承憑依 風来天使 ずっと言いたかったんだけど、君の方こそ私のことを舐めてるんじゃないかな?」
次の瞬間、深海に大量の竜巻か発生した…




