強制契約 強制罪罰
ルジは飛んでくる無数の鎖を避けて敵の核の位置を確認する、核の数はおそらく1つ、人形の黒曜石の心臓部分で分かりやすく鼓動している
フィオナの方にも目をやる、フィオナは片手にナイフを反対の手に拳銃を握って打つなりいなすなりで敵の攻撃を耐えていた。この分ならば問題はないだろう、そう思い再度パリボスの方に意識を向ける
浮いているとはいえ距離は100mいくかいかないかぐらいの距離、本気で踏み込めば一瞬で距離を詰められるが問題は周囲に蔓延る鎖だった。なんでもない鎖ならば問題はないだろうが、そんなわけない。普通の鎖は不気味に赤黒く光らないし、そんなことをする意味がない
ルジが考えている間も攻撃が止まることはなく、ただひたすらにルジは回避をしていた。しかし、それで状況は変わらない、リスクを犯してでも何か行動しなければならなかった
ルジは再度フィオナの方を向いて彼女を観察する。鎖に触れても動きに異常はないことを確認して試しに剣で鎖を弾いてみることにした
ルジに向かってくる鎖の1つを剣で弾いて金属音が鳴り響く。剣が鎖に触れた瞬間、身体が重くなるような違和感を感じた、この違和感がパリボスの能力に関する有益な情報であるため頭の中に今の感覚をピン留めしておいた
少なくとも鎖に触れたら何かをされていることは確定した。ならばむやみに触らない方が良いと判断してルジは回避に専念し始めた。しかしルジはこの程度ならばなんともないがフィオナの方はキツくなり始めていた
このままではフィオナが殺られる、そう思い覚悟を決めてルジはパリボスに向かって飛び込んだ。すると鎖が一斉に飛んできた。ルジは強化を今できる最大限の力を使い向かってくる鎖を弾きながら、核に剣先が届く距離まで近づいた
(いけるか?)
ルジの剣先がパリボスに触れた瞬間、身体が硬直して一切動かなくなった。ルジはそのまま落下して地面に受け身すら出来ずに激突した。幸い強化の力を使えたため打撲程度で済んだが身体を動かすことは出来なかった
「痛い…」
ルジは今使える力を目一杯使ってなんとか立ち上がったが、神経の感覚がとても薄くて右手では剣を握ることすら難しかった。足の感覚もほとんど無い、剣は利き手てある
左手でギリギリ使える程度、身体の9割をセーブされてしまっている
しかしルジは今までの情報で相手の能力になんとなく察しがついていた。強制誓約もしくは強制契約、鎖に触れた時に感じた感覚は強制的に契約をさせられた時に身体が無意識に抵抗した結果、身体が重くなったのだろう
「めんどくさい力だな…」
ルジはそう呟き、剣を松葉杖のように使いフィオナの方に歩き始める。向かっている途中にも鎖の攻撃が止むことはなかったが極限まで無駄な動きをなくして、なんとかフィオナのもとにたどり着いた
ルジが近づいたらフィオナは肩を貸して、拳銃を使い周囲の鎖を弾き、うち漏らした鎖はルジが剣で弾いた
「なあ、フィオナはなんともないのか?」
「ええ、身体に違和感はありますが実害はないです」
「なるほど、ならフィオナはパリボスに攻撃しない方がいい。俺の二の舞になるぞ」
「敵の能力に気づいたんですか?」
「「契約」と「罪罰」だろうね、鎖に触れたときに「パリボスに攻撃すれば行動が制限される」契約をさせられて、俺は攻撃してしまったから今こうしてフィオナの肩を借りているんだよね」
「契約を破らなければ問題はない。しかし契約の内容を私たちは知らない」
「そう、何がアウトなのかがわからないから動きづらい。それに結局俺たちはパリボスに攻撃できないから勝つことができない」
「詰んでますね」
そう言いったフィオナの目は絶望しかけていたが、ルジの表情にはまだまだ余裕があった
「そうでもないぞ。要は一撃で殺せばいいだけだろ」
そう言うと、ルジはポケットから砂鉄が入っている袋を取り出した。そして砂鉄を手に握りパリボスに向かってぶん投げた
「俺の殺し技を見せてあげるよ!」
ルジが指をパチンと鳴らすとパリボスの周りから無数の剣が現れて周囲の鎖やパリボスの核含め身体の全てを串刺しにした
殺し技 剣霧
ルジが限界まで圧縮させた剣を敵の周囲にばらまき、一気に膨張させて一瞬の合間に敵を串刺しにするルジの殺し技
「核含め全身串刺し、これなら…」
ルジが勝ったと思った瞬間、身体に異常なほどの痛みが走った。痛すぎてルジは地面にうずくまってしまう、思考もうまく働かなかった
「くっ!」
次第に痛みに慣れてきて思考も働くようになってきた
(なんだよ…これ? 痛みに慣れていない普通の天使殺しなら確実に死んでいたぞ…)
ルジは状況を再確認し始めた
(パリボスの核は間違いなく破壊した。だけど「罪罰」は発動した、それも普通なら死ぬような苦痛を与える罪罰を)
痛みのせいで麻痺していた五感も回復し始めて、周囲の状況も確認することができた。まずパリボスの安否を確認したがパリボスの身体は粉々になっていて周囲の鎖も光を失って普通の鎖のように垂れ下がっていた
(パリボスは間違いなく死んでる、時間差で罪罰が発動した?)
うずくまっているルジにフィオナが近づいて肩を貸す。ルジはされるがままにフィオナに抱えられた
「すまん…助かる」
「いえいえ、安心してください。必ずルジさんの身体を守りますから」
「…」
それを聞いて安心したルジは両目を閉じた。そんなルジに対して…フィオナは手にもっていたナイフで心臓を刺した




