追放者
「おーい…ルミさんやー?」
隣に座っていた白姫に肩をツンツンと突かれ、私は白姫の方を向く。どうやら、私が窓の外を眺めている間に会議に一区切りがついたらしい。ほとんど聞けていなかったが、強調されていた内容は聞いていた
”明後日に『邪天鎮魂事件』の原因と思われる施設に、このメンバーで乗り込む”
予想以上に展開が速い。それもこれも、彼女が動いているからなのだろうが、だとしたら、間違いなく実力不足になるだろう。これは、そんな安い異変じゃない
「珍しくボーっとしてたね。何か気になるものでもあったの?」
「珍しい『虫』が外に居る気がしてね、ずっと探ってた」
「ふーん…まあ、いいや」
今、白姫から疑いの視線を向けられたが、それでも、彼女は何も聞いてこない。そういう踏み込んでこないところ、私は凄く気に入っている
白姫は、私と反対側の隣に座っている、赤音の肩を揺らし起こそうとする
赤音は赤音で、途中で話に飽きて眠ってしまったのだろう。授業でも、いつもこんな感じで、試験前に勉強を教えるのに苦労している
「...」
私は、この学園のたった2人だけの『親友』を見つめる
自分で言うのもなんだが、私はあまり『親友』というものを作らない
表向き仲良くすることは多いが、内心は大抵無関心、あっても「面白い玩具」程度の感情しか持たない
でも、この2人に対しては『親友』と本心から思っている。たとえ、敵対することになっても、2人とは仲良くし続けたい...なんなら…いや、それは可哀そうか
とにかく、私もこの2人との青春を気に入っている。どんな日常学パロが生まれようと、今の生活が一番、そう断言できる
けど、今回の異変…アレの性質を考えるに2人の存在は有効だ
だから、今この瞬間この場所に、私たちは集まれたのかもしれない。となれば、少しはこの異変に感謝しなけゃいけないか。見逃してあげようかな?
とにもかくにも、まずは実力不足をなんとかしなければならない。赤音の方は大丈夫だけど、明後日までに白姫には『とっておきの一芸』を仕込まなければ…
だが、明日は槍君が見つけ出した「運命の天使」から話を聞きに行く予定がある…
誰か、私の代わりに話を聞きに行って情報を共有してくれないだろうか?
いや、だけど、この役目には、かなりの『知識』と『経験』が必要…そんな知り合いに暇そうな奴は...
「...」
私は再度窓の外に目を向ける...さっきから、妙な歪みを窓の外から感じていて、幸い私にはその歪みに当てがあった
「背に腹は代えられないか~」
私は白姫に「2人とも訓練棟で待ってて」と言い残し、歪みの大本へと跳んだ。場所は、少し前に天神ちゃんが不法侵入をしていた敷地内の森
なんで、不法侵入者はみんな森に身を隠すのだろうか
「立て続けに森に不法侵入者が現れるなんて、「森の警備を高めて」って意見箱に入れておかないとね~」
「その必要はないと思いますよ。これでも、私はこの学舎の設立者ですからね」
無機質な服とパンツに、白衣で身を包んでいる水色の髪の女性。自ら産み出した「人体」に核を埋め込んで、擬似的に「人類」となった変人ならぬ変天使
最初に生まれた「天使」の1人であり、格でいえばアインやリハーサルと同格の天使…タビビト
それでいて、「平和」「秩序」「自由」を捨て、最初の「追放者」となった追放天使。だが、極悪非道な「追放者」の中ではまともな方だ
「それで、何で私たちの話し合いを覗いていたのかな?」
「気づいてたんですね。まあ、気づかれますよね」
「ファントムは気づいてなかったし、私がバグだから気づけただけだよ」
バグ…ルミのすべてがそうだという訳ではないが、私に対しては本質的な意味はあっているな~
「後輩に気取られないのなんて当たり前ですし、自信がない訳じゃないですよ…それで、何のようですか?」
話しかけたということは用があるということ。頭が良い奴との会話は、楽で速くて助かるね
「諸々、頼みたいことがあるんだけど…報酬は『前世界』の情報でいいかな?」
タビビトはニヤリと笑った。その顔を見て何となく察した。コイツ、これを狙っていたな
「私でよければ協力しますよ。けど、報酬は忘れないでくださいね」
上手いこと乗せられた。それが癪に思う、ということも特になく、普通に感心した。彼女であれば安心して任せられる
他に頼めるような友人は、あの盗撮魔と依存系メンヘラだけど、今の立場では使えない繋がりだ
私は、自分の考察を含めて「邪天鎮魂事件」の情報をすべて、タビビトに話した。多分、こういうのを考えるのは彼女の得意分野だ
1に。「存在」の完全な模倣によって、本物が重なり、その片方が暴走し「凶霊」へと歪む
2に。犯人は、おそらく『前世界』に存在していた「全知の新人」であり、その能力は「解析」と「再現」…そして「演算」
3に。圧倒的に戦力不足




