お呼びだし
午前の授業の終わりを告げるベルが鳴り、私と赤音は屋上に向かい昼食を取る
屋上は少し人気のスポットなので、変な目で見られていた頃はほとんど来ていなかったが、それが解消された今では、よくここに食べにくるようになった
「結局ルミ、来なかった」
「奴の無断欠席は、よくあることじゃない?」
「そだけど…」
「ルミは私たちよりも強いし経験豊富だから、大丈夫だって」
「そうだよね~、私って強くて経験豊富だからね~」
「「…」」
私たちは、その声が聞こえた方を向く。そこには、だらしなく屋上の床にうつ伏せで寝転び、足をバタバタさせているルミの姿があった
「2人とも~おそよ~う」
ルミは、光を通してどこでも授業を覗き見できるので、遅刻をしながらも授業に遅れることは無いのだ
まあ、遠隔で授業を受けるほど、ルミが真面目だとは思えないが…
「昨日、疲れたの?」
「そうだよ~、ピンチのしろひーを助けるために、真面目に頑張ったんだよ~」
ルミが疲れているところなんて、見たこと無い。どんな時でも余裕綽々に笑って、常に何もかもを楽しんでいる。彼女はそういう奴だ
昨日の課題も、私が安全圏で確実な狙撃で狂霊を倒している中、ルミはとにかく戦闘を楽しんでいた。あれは、まさに「強者の余裕」というやつだと思う
「嘘だからね。私のことなんてほっといて、片っ端から狂霊のところに跳んで倒して…戦いを堪能してたからね」
「幽霊はかってに消えるからね~、死体のこととか考えなくていいのは楽だよね~…まあ、死屍累々な光景も嫌いじゃないんだけど」
「白、死屍累々って、なに?」
「私も知らない。けど、このサイコパスのことだから、良い光景ではないってことだけは分かる」
ルミはたまに、よくわからない言葉を使う。最近でいえば「すり抜け死ね!」だとか言っていたが、どれだけ辞書を調べても意味はわからなかった
「本当、ルミって何者なの?」
「可愛い不思議ちゃん、だせ」
ルミに関する情報は少ない。年齢不明、種族は自称「天使」
ルミの権能(自称)は「光」で、それを応用して空間を繋げたり、遠くの場所を覗いたりしているらしいが、原理を説明してくれないので疑わしい
そのルミは、手作りのお弁当を食べ始めていた。お弁当を作る余裕があるのなら、もう少し早く登校してきてもよかったのではないか?
「まっ、いいか」
そう呟き、私も自分の手作り弁当を食べ始めた。赤音は料理ができないため、店で買ってきたサンドイッチを頬張っている
3人とも昼食を済ませたところで、私はあることを思い出した。ルミに伝えなければならないことだ
「そうだルミ。放課後、生徒会長がお呼びだって」
「わたし、かえりゅ~」
ルミは即座に次元に穴を開けて、撤退しようとする。流石、この学園で一番生徒会に悪い意味で呼ばれている生徒…
「逃がすか!」
私は「武装創製」で鎖を作り、天力での遠隔操作でルミを拘束する。幸い、ルミなら簡単に抜け出せただろうが、諦めて捕まってくれた
それは朝のこと…なのだが、当事者は私ではなく赤音の方で、私も赤音から伝えられただけだった
どうやら、赤音と同じクラスにいる生徒会の書記に頼まれたらしい…
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私、赤音
今は朝。暇だから、学園内をお散歩しているところ
最近、親友の白とルミの課題「邪天鎮魂事件」のせいで、放課後1人でいることが多くて寂しい
2人を手伝いたい気持ちはある。けど、2人とも、まだ余裕そうだったから、今は無事を祈るだけで十分
「…つかれた」
学園内を無作為にお散歩するのはいいけど、この学園は無駄に広すぎる。広いと歩き続けられるから、止めどきがわからない
ちょうどそこにベンチがあったから、そこに腰掛ける
上を見る。空の明るさで、なんとなくの時間を確認する。まだ、朝のホームルームまでは時間がありそう
意味もなくボーッとする。何も考えない
「おーい…あの~?」
声をかけられたから、声の主の方を向く。おっと、声の主は生徒会の書記であるポルックスちゃんだった
学園の人気者の1人。キレイな黄みの橙色のふわふわとした短い髪と小動物を彷彿とさせる童顔を持つ美少女
私とも仲が良い。昔、白が裏でコソコソ言われていた時、彼女に悪意無く手を差しのべた私以外の人物でもある
「おはよう。何かよう?」
「あっと…ルミと白姫に伝言をお願いできないかな?」
「わかった」
「放課後「生徒会室に来て」って伝えてほしいんだ。「生徒会長がお呼び」だって」
「わかった。放課後、3人で向かうね」
「わかった。用があるのは2人だけなんだけど、赤音が来ても問題ないと思うしね」
「ん。」
「それじゃあ、一緒に教室に向かおう。そろそろホームルームの時間だよ?」
「わかった。行こう」
私はベンチから飛び立ち、ポルックスの隣に並んで一緒に校舎に向かって歩き始めた…




