世良彼方
「貴方は……」
そこに立っていたのは、黒髪の男の子で、
どこか見覚えのある顔立ちをしていた。彼は確か……
「世良彼方……さん、ですよね」
「わぁ~俺の事知っててくれたんだ嬉しいなぁ~」
「まぁ…学園の生徒会長ですから知らない方がおかしいかと。
それより、何故私の名前を?」
「ははっ、君は知らないのか。うちの学園に小鳥遊家のご令嬢が入学してくるってね」
「まぁ、そうでしたか……」
「それで、君はこんな所で何してるのかな?ご令嬢が来るような場所じゃないでしょ?」
彼の言葉に思わずムッとした表情を浮かべてしまう。
令嬢に勉強は必要ない、と言われているようだったから……
「この町の図書館は素晴らしいですよ?世良様もいかがですか?」
「いや……俺は遠慮しとくよ。それより一人で暇じゃない?俺と一緒に
遊ばない?」
「一人じゃないですよ?」
「えっ?」
まさか、この人あかりの事気づいて無かったわけ?
信じられない、生徒会長って聞いていたけど
結局は、ほかの貴族と変わらないって訳か……
呆れてため息を吐いていると、ずっと黙っていたあかりが口を開いた。
どうやら、さっきの話で何か思うところがあったらしい。
そういえば、あかりはこの人が苦手だって言ってたような気がする。
「生徒会長と言ってもやっぱり貴族なんですね?そうやって差別するのは楽しいですか?」
「あかり……」
「ごめん、百……でも、私限界で」
「ははっ……ごめんごめん、差別とかそう言うのじゃなくて少し試してみたくてさ」
世良様はそう言うと、さっきの表情とは
一変してとても優しい笑顔になった。
その変わり様に驚いていると、世良様は話し始めた。
「貴族の子が平民の子をいじめてる、下僕のように扱っている噂が広まっていてね、その噂の正体が小鳥遊さんだって気づいた俺は色々調べていたら、たまたま君たちを見つけてね声を掛けたんだ」
「そう……だったのですか……」
「でも、それはただの噂と理解しました。小鳥遊様、瀬名様……いくら噂を確かめるためとは言え、ほんとうに申し訳ありませんでした……」
そう言いながら頭を下げてきた彼に、私達は慌てて頭を上げるように言った。
「私も、世良さんに失礼なことを言ってしまいました……すいません……」
「いいんだよ、あともう一つ訂正。俺はこの図書館大好きだからね、じゃあいくね」
そう言うと、世良様は笑顔で帰って行った。本当に不思議な人だった……
あかりはと言うと、まだボーっとしている様子で 世良様の去って行く姿を眺めているだけだった。
「やっぱり貴族の人はあんな感じな人ばかりなのかな…」
「まだ、そうだろうね……でも、あの人の言ってたことに嘘は無かったように
見えたから信用していいと思うよ?」
「うん、それにあの人は攻略対象……放置してたらきっとめんどくさい事に
なりそうだもんね」
それにしても、今日は色々な事がありすぎて疲れてしまった。
あかりも同じ気持ちだったようで、私たちは 早く帰ろうと家路へと急いだ。
しかし、この時はまだ知らなかった……これから起こる出来事が 大きな事件になるなんて……。




