プロローグA
「本当に行ってしまわれるのですか、お兄様」
「ああ。親が決めちゃったことだし、僕としてはどっちでもよかったんだけど。今となっては少し楽しみなんだよね」
「そんな。勉強なんてどこでもできるではありませんか。何でしたらわたくしが教えて差し上げます」
「それは兄としての威厳が」
「お黙りなさい。良いですこと?」
「良くないって、妹に教えてもらうなんてさ」
「今すぐ入学を取りやめなさい。勉強でしたら家庭教師でも雇えばいいではありませんか。いいえ、そのような贅沢も必要ありません。わたくしが教えて差し上げますわ。だからこの家を離れる必要なんてないのです」
「入学は父さんと母さんが決めたことなんだよ。あそこでは魔物騒ぎがあったとはいえ、ゴタゴタは既に収まっているみたいだし。でもまだ不安で、戻らない生徒が多いんだ」
「それではまるでお兄様は生贄ではありませんか! そのような危険な場所に行かせるなんて、わたくしは断固認めません!!」
「でもさ、報告によると心配は一切なくなったっていうし。隣の国なんだからさ、伯父さんにも付き合いってのがあるんだよ」
「あそこは国ではありません! 周辺国が共同出資して運営するだけの、特別区です!」
「それくらいわかってるって。そうじゃなくって」
「いいえ。それでは我が国の出資率はご存知で?」
「それは…………共同なんだから、三分の一……だよ」
「なんと愚かな。やはりわたくしが勉強を教えたほうがよろしいようです。お兄様、我が国の出資率は金額にして半数を占めております。その上、さらに人質まで要求するとは非道すぎるではありませんか」
「そ、それは知らなかったよ。だって僕には関係ないことじゃないか。まだ子供なんだ、国を動かす立場でもないんだから。でも国や大人にはいろんな事情があるんだよ」
「そのような無責任な発言、よくできますのね! お兄様には責任感というものが欠如しております。もっと自覚を持たなければなりません」
「わかってる、わかってるよ。でもそうじゃなくて……」
「いいえわかっておりません! この期に及んで言い訳も見苦しい」
「言い訳じゃなくて、僕自身が行ってみたいんだ。同世代の人たちと共に学んで、切磋琢磨するって楽しそうじゃないか。それに……」
「それに?」
「女の子たちも多いっていうしさぁ、なんてね。あはははは」
「…………ほう、わかりました。そこまで言うのでしたら」
「え、わかってくれたんだ? 良かったよ」
──ええ、相応の対処が必要ですわね。
7/1 続編を書き始めてみました! 完成までがんばるます。
あらすじの上手な書き方おしえてください涙