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鬼ぇちゃん

作者: 星馴染

 鬼のお姉ちゃん、から鬼ぇちゃん。


「そろそろ隠れないと」

 そういって僕は公園でいつものところに身を隠す。

「見つけたわ」


 ゲームは鬼ぇちゃんが僕達を見つける事で終わりになる。

 鬼ぇちゃんに連れられて、僕は家につれていかれる。


「あら、みえちゃん。悪いわねいつも」

「いえ、学校の帰りですし」


 鬼ぇちゃんは中学生。

 僕よりも身体が大きく力持ちで、怒らせるととても怖かった。


 小学校が終わり、僕達は小学校の近くの公園で遊ぶ。

 鬼ぇちゃんは学校が終わると公園に寄り、僕達を探して見つける。


「見つけたわ」

 今日もまた見つかり、家に帰る。


「あら、みえちゃん。悪いわねいつも」

「いえ、学校の帰りですし」


 こんな毎日が永遠に続くと思っていた。


「見つけたわ」

 その日の鬼ぇちゃんは、声に元気がなかった。

 僕の手を引くのも力がない。


「鬼ぇちゃん、どうしたの?」

 いつもとは違った様子に僕は尋ねた。

「ジュケンがあるのよ。今日でかくれんぼはおしまい」

 鬼ぇちゃんと僕達のかくれんぼは、ジュケンのせいで唐突に終わりを告げた。

「……やだ」

「やだって言っても、私はジュケンだから。ほら、ジュケンが終わったらまた遊んであげる」


 そして僕は小学校を卒業し……

 中学校を卒業し……

 高校生になった。


 鬼ぇちゃんは中学受験が終わっても一度も会いに来てくれなかったな、と。

 受験用の問題集を解きながら、ふと思い出した事を母に聞いてみる。


「そういえば、鬼ぇちゃんはどこの人だったの?」

「鬼ぇちゃん……?」

「ほら、小学校の時に公園でかくれんぼしてて、俺を連れて家まで帰ってくれた女性」

「……ああ、みえちゃん?ほら、川向うの鬼田川さん家のお嬢さんだったわね」

「ああ、鬼田川さんだったのか」


 ……。……あれ。

 何かに引っ掛かりを覚えたが、考えてもよく解らなかった。

 そして俺は受験勉強に戻る。


 夜中に布団に入り、目を瞑る。

『……ああ、みえちゃん?ほら、川向うの鬼田川さん家のお嬢さんだったわね』


 だった……?過去形だった。

 普通はお嬢さんよ、というのではないだろうか。


 結婚して、鬼田川さん家から離れた。だから、お嬢さんだった。

 そういう事かな、と俺はまどろみに飲まれていく。


 二日後……。


 時間が経つほどに気になっていき、受験勉強に手がつかないと母に尋ねてみた。

「ねえ母さん。鬼ぇちゃん……鬼田川さんの家の『みえさん』は結婚したの?」

「何よ突然」

「前に鬼田川さん家のお嬢さんだった、と言っていたから。もう居ないのかなって」

 そういうと、母は目を彷徨わせた。

「そうね……もう居ないわね。行方不明になったのはいつだったかしら?」


 行方不明……?


 その一言で、背中にゾワリと冷たい物が走る。


「ねえ、母さん。そういえばあの時、僕が公園で遊んでたのは誰だったか覚えてる……?」

 ゲームは鬼ぇちゃんが僕達を見つける事で終わりになる。


「えっ?ちえちゃんはいつも、一人(・・)であそんでいる貴方を連れて帰ってると言ってたけど」


 一人だって……?


「あら?どうしたの。顔が真っ青よ?体調でも悪いの?」

「あ、ああ。なんでもないよ」


=== 過去  ===

『鬼ぇちゃん、どうしたの?』

『ジュケンがあるのよ。今日でかくれんぼはおしまい』

『……やだ』

『やだって言っても、私はジュケンだから。ほら、ジュケンが終わったらまた遊んであげる』

『じゃあ……最後にいつもお姉ちゃんが鬼だから。最後に鬼ぇちゃんが隠れて。もう一回だけやりたい』

=== ===



 公園には、僕達(・・)の秘密基地があった。

 公園のトイレの下にある下水道へと続く階段。そこにはボロボロになった布団がある。

 公園のトイレから電気を取り、ひび割れたテレビや、ぼろぼろの大きな冷凍庫があった。


=== 過去  ===

「ん、坊主。またきたのか?」

「うん、隠れないと」

「鬼ぇちゃんがまた探しに来るのか。たまには鬼ぇちゃんと鬼を交代したりはしないのか?」

「えっとね。鬼ぇちゃんが公園に行くと言った後、こばんのおじさん?に公園から戻った事を伝えないといけないから、鬼ぇちゃんが隠れる時間がないんだよ」

「小判のおじさん……?」

「うん、公園に行く前におじさんに言って。その後でおじさんにこれから家に戻る事を伝えないといけないんだって」

 …… ……

「見つけた」

 声が響いて僕は鬼ぇちゃんの元へと向かう。


「今公園から帰った所かい?この辺りは変質者が目撃されているから気を付けるんだよ」

「ええ、気を付けるわ。おまわりさん」

『少女誘拐、強姦、殺人容疑者』

 難しい漢字で書かれた交番に張られた顔写真。

 それは僕が隠れるのを手伝ってくれている、秘密基地のおじさんだった。

 …… ……


「なあ、ぼうず。その、ここから出た後に戻った事を伝えているこばんのおじさんがいるだろう?」

「うん」

「そのおじさんに今から帰る、と鬼ぇちゃんが言った後にもう一回かくれんぼしたいと誘ってみたらどうだ?お前を見つけた後すぐに鬼ぇちゃんが隠れたら、遅くなって小判のおじさんが心配しちゃうんだろ?それなら簡単だ」

 そして、秘密基地のおじさんはこういった。

「小判のおじさんに帰るって言った後で、かくれんぼに誘えばいいんだよ。、お前がお願いって言えば鬼ぇちゃんも聞いてくれるぜ?」

=== ===


「あった……」

 俺は公園の下水の階段を下りる。公園から電気を拝借している業務用冷凍庫にテレビ。


 ぷんとすえた匂いがした。

 秘密基地のおじさんはもういない。


 僕は恐る恐る、業務用冷凍庫を開ける。


 俺の子供の頃の初恋。


「……鬼ぇちゃん、みつけた」

 大きな身体だと思っていた小さな少女が、今は



~ Fin ~


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― 新着の感想 ―
[良い点] そういうオチで来ましたか。 なかなか怖かったです。 夢に出ませんように。
2021/08/09 13:36 退会済み
管理
[良い点] こ、怖えぇ……
[良い点] 謎が謎を呼ぶ雰囲気と意外なラストが良かったです。
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