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5話『世界観』

 『マンドレイクの隣に、マンドラゴラは育たない』ということわざがある。

 その二種の植物が同じ土壌に根付いている時、栄養価の奪い合いは避けられず、やがてそのどちらもが枯れてしまうのが一般的だ。

 それは他者との共存共栄がそれだけ難しいことを意味していることわざである。


 ローブル王国にはその不可能とされる共存共栄が多々見られる。

 それもこの国の一般的な街路樹というごくありふれた場所で、だ。


 それだけ豊かな土壌がこの国ねはあるということであり、そしてその光景はこの国の人と呼ばれる種の特徴をよく表していると言える。


 国内の人間同士の格差は他国よりも遥かに小さく、身分が人間としての価値を表すという考え方は風化しつつある。

 平民たち――特に現代を生きる子どもたちが貴族に抱く印象は、精々ちょっとした金持ち程度の認識。

 そして、貴族たちもそんな平民たちの認識に対して嫌悪感を抱く者は少ない。

 身分のしがらみなく愛情やら友情やらを育むことは、この国では架空の世界での出来事ではなく、現実世界の単なる痴話になりつつある。


 それだけ他者の違いを尊重できる土壌がこの国には根付いていて、その考え方は今や人という種の枠を拡大して受け入れるに至る。

 この王国内では人間と同じ人権が、エルフやドワーフに代表される亜人種にも適用されている。


 これは他国には真似できないこの国独自の特徴だ。


 亜人種をモンスター扱いする国がある中、この国の人の定義は他国と比較するとかなり広く解釈されていると言える。


 言うまでもなく課題は多い。表面上の人と人とのわだかまりは落ち着きつつあるが、まだまだ改善の余地は残されているのは確かだ。

 それらの根本的な解決は容易ではないだろうが、もしその先に進むことができれば、いずれ歴史上類を見ない最も栄えた国となるだろう。

 そして、そうなりうる可能性を秘めているのがこのローブル王国なのである。


 ……だが、そんな平和な王国内には歪みが生じ始めていた。

 それは全体から見ればほんの些細な問題かもしれない。

 人間と亜人種、貴族や平民という大枠からすると、見過ごしてしまうほど小さなもの。

 一族を構成する最小単位である家族の不和――国王と王女――親と子のちょっとしたすれ違いとして生じている。


 このことが国に降りかかる災いの前兆であると王女が認識したのは、闇が国を貪り尽くした後のことである。

 このまま時の流れに沿った運命を辿るとしたらの話であるが……。

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