新しい家族
よろしくお願いします!
孤児院で暮らし始めて一ヶ月。
中学校に通いながらだが、ここでの生活も悪くはないと思いはじめていた。
でも。
家族が殺されたあの日から、なぜか俺の目は視界を白黒にでしか映さなくなった。
そして、何をするにしてもあまり大きな感情を持てなくなってしまっていた。
今日は土曜日。俺はいつものように外に出て風にあたりながら本でも読もうと思っていた。
まだ5月なのに暖かいといようより、とても蒸し暑い。
仕方なく俺は孤児院の敷地内にある、木の影で、腰を下ろすことにした。
意外にも居心地がよく、俺は本を読むという目的を忘れ眠りについていた。
何時間たったろう。
気づくと辺りは一面オレンジ色に染まっていた。
「もう夕方か。」
重い腰を上げ、孤児院に戻ろうと足を踏み出した時だった。
目の前に、お金持ちが乗るような黒塗りの車が一台止まった。
ドアが開き、そこから俺より年下そうな長い黒髪の女の子が車から降りるなり、俺の胸に飛びついてきた。
(なんでこの子泣いてるんだ?)
そして、この子の親らしき女性の方と、スーツを着たボディガードのような高身長の女性ふたりがこちらに歩いてきている。