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幻想郷二重創~重なる世界~  作者: 陰猫(改)
第1章【紅霧異変】陰猫(改)Ver.
8/28

第5話【門番と悪知恵と】

 時を止めた咲夜は入り口へと向かう。


(美鈴が簡単に侵入を許すとは思えないけど、様子を見に行きましょう)


 そう思いながらコツコツと廊下を歩き、窓から見える紅に染まる霧を眺める。

 幻想郷に来て、今の主人であるレミリア・スカーレットに忠誠を誓い、もう十年以上になる。

 咲夜は一人前のメイド長として育てられた。

 だが、紅魔館の事を熟知しても幻想郷と言う場所そのものの事を彼女は詳しくは知らない。


 幻想郷にも影が存在し、その闇もまたある事に。


 人間を選別し、主人に与えている事すらもがまだ片鱗にしか過ぎない事に。


 だからこそ、時間を解除して廊下を再び歩き始めた咲夜は気付く事がなかった。

 自身と入れ違いに影から影へ移動する存在に……窓から窓へ跳び移る存在に……天井と同化して身を潜めていた存在に……。

 その存在は完璧で瀟酒を謳う彼女すら悟れぬ存在であった。


 彼らの隠密行動は明らかに熟練されたものである。


 彼らを知る者がいたなら、こう言うだろう。



 ーー幻想郷の守護者、と。


 一人が窓を開け、窓に跳び移る一人を導き、一人が天井を這って音もなく、着地する。

 彼らは共通して黒い外套に身を包み、言葉を発する事なく、互いに必要な動作をこなし、奥へと進む。

 厳戒態勢の敷かれた紅魔館はその存在に感知出来もせず、その三人の人妖の侵入を許す事となる。

 巡回する妖精メイド達さえも彼らに気付く事はない。


 ーーと、先頭を歩く一人が他の二人を片手を上げて制し、物陰に隠れる。

 そこには目的である護御霊空とレミリア・スカーレットの後ろ姿があった。

 二人は地下へと向かって歩いて行く。

 彼らも警戒しながら後を追う。

 そこで一人が空とレミリアの入った扉の前で再び制し、軽く扉に触れる。

「魔法で監視するタイプだな。どうする?」

 此処で初めて、三人の内の一人が言葉を発する。

「解除は可能なの?」

「解除自体は可能だ。だが、解除すると言う事はこの術師に感知されると言う事になる」

「そうか。なら、それは避けるべきだな」

 三人は相談し合うと扉から一旦、離れる。

「どうするの?……彼女はこれからの幻想郷に必要かも知れないけど、私達の事を公になってしまうのは困るわ」

「それについては時間が解決してくれるだろう。計算通りならな?」

「問題は俺達が間に合うか、か……」

 三人は頷き合うとその時に備えて、各々の場所へと隠れる。


 ーーー


 ーー


 ー


 私が館の門まで来ると霊夢と中華風の服着た女が弾幕でバトっていた。

「よう、薄情者。苦戦している様だな?」

「最初に抜け駆けしたのはあんたでしょ?」

 私は地面に着地しながら霊夢とお互いに軽口を叩き合うと目の前の相手を見据える。

「こいつも邪気ってのを纏っているのか?」

「その様なんだけど、少し勝手が違うみたいなのよね?」

 私の言葉に霊夢はそう言うと面倒そうにお祓い棒で肩をトントンと叩く。

 その門番は呼吸を整え、手に邪気を集中すると手刀で私と霊夢の間の地面を斬る。

「今のは警告です。次は当てますよ?」

「おい、霊夢。こいつ、もしかしてーー」

「そうみたいね。この門番、邪気をコントロールしているわ。

 それも体内からじゃなくて周囲から集めて放つ事が出来るみたいなの」

「ご名答です。私は気を操る程度の能力を持っているので当然、邪気も操る事が出来ます」

 門番は霊夢の言葉に頷くとゆっくりと構え直す。

「邪気を纏っているものに霊力や魔法は通用しません。

 つまり、肉弾戦しか貴女達には選択がない。

 しかし、中国四千年の歴史を持つ私に肉弾戦は通用しません。

 つまり、実質、貴女達は詰みです」

「成る程な。こりゃあ、確かに分が悪そうだな」

 私はそう言うと元来た道を戻る。

 勿論、諦めたからじゃない。

「おーい、チルノー」

 私はさっきの妖魔を名乗る妖精のところまで戻って来るとその妖精に声を掛けた。

「お?ん?なんだ、さっきの魔法使い?」

「お前、自分が最強だって言ったよな?」

「もちろんだ!」

「なら、この先の館で最強を名乗る門番を倒せるか?」

「ふふん♪そんなの朝飯前だぞ♪」

「本当か?あの門番、自分こそが最強だって言ってたぞ?」

「なんだとー!よーし、私が最強だって事を証明してやる!」

 そう言うとチルノって妖精は館の方へと飛んで行く。

 まさにバカとハサミは使い用って奴だ。

 私は再度、館へと向かう。

 おお。此処からでも解る位、派手に暴れているな。

 邪気には邪気って考えも悪くなかったらしい。

「ちょっーーやめなさい!」

「うるさい!お前を倒して、あたいが最強だって事を証明するんだ!」

 よしよし、門番は邪気を纏っているチルノ相手に悪戦苦闘している。

 私が霊夢の元まで箒に乗って戻ると霊夢が呆れ顔で私を見る。

「……あんたねえ」

「ま、結果オーライだろ?」

 私は霊夢に笑うと門の上を飛ぶ。

「ーーってな訳で、おっ先ー♪」

「また抜け駆けする気?

 ちょっとは懲りなさいよね?」

 霊夢はそう告げると門を蹴破る。

 ……あいつ、相当、おかんむりだな。


 こりゃあ、障らぬ神に祟りなしって奴だ。

 もし、次に霊夢が相手する奴が邪気とかないんだったら、八つ当たりされるぞ。

 くわばらくわばら。

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