第3話【博麗神社】
博麗神社へと歩きながらボクと魔理沙さんは此処へ来た経緯を話しつつ向かう。
「へえ。すると空はその邪気って奴のせいで時間を超えて、やって来たのか?」
「うん。紫さんの話が本当なら多分、そうかな?……紫さん、大丈夫かな?」
「紫さんって、あの八雲紫だろ?
幻想郷の大妖怪だ。お前が心配する程の事じゃないから大丈夫だって」
「……うん。そうだよね?」
ボクが頷くと魔理沙さんがボクの肩に荷物を持った腕を回して、カラカラと笑う。
「人の心配よりも自分の心配しろよな?
あのままだったら、空は幻想郷に来て、すぐに死んでたんだからよ?」
「そうだね。魔理沙さん、ありがとうね?」
「本当に素直な奴だな。お前が良い奴なのは解ったけど、ちょっと素直過ぎて騙されたりしないか心配だぜ。
此処ではそう言う奴ほど、危ない目に遭遇するから気を付けろよ?」
「うん。魔理沙さんも優しいね?」
「おう!魔理沙さんは優しいぜ!」
魔理沙さんは照れた様に箒を持つ手で鼻を指で擦るとようやく、博麗神社へと続く階段が見えて来る。
向こうと同じく、ちょっと上るのが大変そうな階段だ。
「じゃあ、私は先に向こうに行ってるな?」
そう言うと魔理沙さんは荷物を箒にぶら下げて博麗神社へと先に飛んで行く。
ついでに乗せて欲しかったけど、流石にあんな危なっかしい運転だったと思うとそう言う事を言うのを躊躇うなぁ。
結局、ボクは博麗神社の階段を自力で上がった。
そこで見たのは空中を浮遊している女の子とそれを眺める巫女服の女性、神社の前で待つ魔理沙さんだった。
「お?ようやく、来たか?」
「うん。待たせちゃって、ごめんね、魔理沙さん」
「だから、お前は素直過ぎるって。
こう言う時は先に飛んでった私に文句言うもんだろ?」
「え?だって、魔理沙さんは荷物とかぶら下げてて大変そうだったし……」
「まあ、そうだが……やっぱり、そんなお前が心配なんだぜ」
魔理沙さんは溜め息を吐くと金髪のロングヘアーを頭を掻く。
「まあ、良いや。早い所、霊夢達の所へ行こうぜ!」
「うん」
気を取り直した様に巫女服の女性の元へと向かう魔理沙さんに頷くとボクも魔理沙さんの後について行く。
「おーい!巫女様!」
「……来たか」
黒髪でロングヘアーのその巫女服の女性は此方に顔を向けると魔理沙さんとボクーーいや、正確にはボクをジッと見ていた。
「紫から話は聞いている。未来から来た博麗の巫女よ」
「なんだ。話が早いじゃないか。良かったな、空」
魔理沙さんはボクの肩にポンと手を置いて、そう言うと荷物をその場に置き、少女へと向かって飛んで行く。
「……あの、紫さんは大丈夫なんですか?」
「自分の事からではなく、紫の心配からするなんて優しい子ね」
そう告げると巫女様はボクの頬に触れて、ジッとその黒い瞳で見詰めて来る。
「……成る程。未来では貴女くらいしか、博麗の血筋はいないのね?
絶えなかっただけ、上出来と見るべきかしら?」
そう言うと巫女様は見覚えのあるリュックを持って来る。
「あ、それはボクのーー」
「そう。やっぱり、これは貴女のだったのね?」
巫女様はそう言うとボクのリュックの中を確認する。
「札にお祓い棒はまあ、基本的に解るけど、それ以外はほとんど、此処ではガラクタね。
あとで香霖堂にでも売り払いましょう」
そう告げると巫女様はリュックから再びボクへと視線を移す。
「あとはその服装もなんとかしないとね。
此処で博麗の巫女として、これから暮らすには自覚を持って貰わないと……」
「え?博麗の巫女として?」
「そうよ。護御霊空。
貴女はこの時より、もう一人の博麗の巫女として霊夢と共に異変と呼ばれる事件を解決していかなくてはならない。
それが貴女がこの幻想郷に呼ばれた理由よ」
その言葉にボクは少し迷う。
此処で暮らすのもそうだけど、事件とかを解決とかボクに出来るんだろうか?
流石になんだか、流され過ぎてないかとか心配になって来た。
そんな風にボクが次の言葉に悩んでいると巫女様が微笑みながら、頭を撫でて来る。
「心配はいらないわ。
貴女には霊夢や魔理沙がいる。
貴女は貴女のすべき事だけをすれば良いのよ」
「ボクのすべき事?」
「大人になれば、解るわ。
まあ、今はまだ、その時ではないわ。
今は貴女の霊力を底上げする事から始めましょう」
そう言って微笑む巫女様にボクはコクリと頷いた。
まさか、この後に想像も出来ない修行をさせられるとは思わずに。
霊夢はあくまでも修行ではなく、遊びの一種と捉えながらボクと一緒に様々な訓練をするのになんなく、こなして行く。
ボクも一生懸命に努力はしているけど、霊夢には追い付けない。
そこは悔しくもあり、羨ましくも思う。
魔理沙さんは魔理沙さんでメキメキと上達している。
彼女はいつも明るく振る舞っているけど、ボク以上の努力をしているのが解る。
だって、霊夢に負けた後はフラリと何処かへ何も言わず、去って何事もなく、戻って来ては強くなっていたからだ。
ーーそれから数年間、各々の力を磨いたボク達が成人して、しばらくして巫女様の言う大きな異変が始まる。