第14話【一時の幸福】
今回の話で幻想郷二重創は一区切りさせて頂きます。
話は終わっても彼女達の戦いは続きます。
俺達の戦いは此処からだ!
異変が解決し、ボク達は桜の木の下で宴会をする事となる。
ただ、いつもと違い、宴会の場所は冥界との境にある白玉楼でだ。
招待をしてくれたのは幽々子さんである。
なんでも、今回の一件でしばらくは大人しくしてくれるとの事だ。
加えて、幻想郷がまた何らかの異変に巻き込まれたら助けてくれるとも言っていた。
幽々子さんの言っているしばらくがいつまでを指しているのかは分からないけれど、妖夢さんと敵対しなくて良いなら、それはそれで良かったと思う。
寧ろ、心強く感じるくらいだ。
それにしても、今回は西行妖とか云う枯れ木から邪気が集まっていた訳だけど、この下には結局、何が埋まっていたのだろう?
「楽しんでいるかしら、空ちゃん?」
ボクはお酒をちびちび飲みながら、幽々子さんに顔を上げる。
「・・・幽々子さん」
「よくは覚えてないのだけれど、随分と迷惑を掛けたそうね?」
「そうよ。これに懲りたら大人しくしてなさいよね?」
ボクの代わりに霊夢が答えると幽々子さんはヨヨヨとわざとらしく倒れ込む。
「妖夢ちゃん。霊夢がいじめるわ」
「仕方ないですよ。今回は全面的に私達が悪かったんですから」
妖夢さんはそう言いながら咲夜さんと一緒に料理を運んでくる。
和食に洋食か・・・明日からダイエットしなきゃな。
「へえ。咲夜ほどじゃないけれど、なかなかの料理の腕前じゃない?」
レミリアさんはそう言って微笑むとフォークで山菜の天ぷらを食べる。
その姿はちょっとご飯の食べ方の分からない幼稚園児のようで可愛い。
見ていたら、ちょっと母性をくすぐられる。
「ちょっと、そんな子供をかわいがる大人のような表情をしないで、空。私は貴女より年上なのよ?」
「お嬢様。食べながら喋るのはお行儀が悪いですよ?」
「咲夜まで子供扱いするの!?」
レミリアさんは以前までの威厳があったのが嘘のように外見の年齢に似合うあどけなさが押し出されている。
ほんの少しの間に咲夜さんと何かあったのだろうか?
前とは明らかに何かが違う。
でも、この空気は嫌いじゃない。
ボクは霊夢達と笑い、お酒も程好く回り、妖精や妖怪、人間問わず、盛大に楽しんだ。
これだから幻想郷は楽しいんだ。
お父さん。きっとボクがいなくなって寂しがっているだろうけれど、ボクは元気だよ。
だから、もう少し、あっちの世界で待っていてね?
ー
ーー
ーーー
宴会が終わりを迎え、人気のないところで話し合う人妖がいた。
「これで大体の基礎は出来たわね?」
「ええ。弾幕勝負とスペルカードルールがこれで新たな進化を遂げた。計画通りにね?」
「まあ、私達、それぞれの計画は失敗してしまったけれどね?」
その場で八雲紫と西行寺幽々子、レミリア・スカーレットは互いに笑い合う。
「さて、彼女達には次のステップへ進んで貰おうかしら?」
「ええ。妖夢ちゃんにも来るべき日に備えて協力しましょう」
「それで?次は何をどうするの、幻想郷の賢者様?」
「さあ?どうしましょうかね、レミリア・スカーレット?」
「慌てる事はないわよ、二人とも。私達には時間がある。今後はしばらく様子を見ましょう」
そんな話をしながら、宴の裏で新たな計画が練られる。
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ーーー
「お師匠様。予定通り、博麗の巫女達が異変を解決しました」
「そう。ご苦労さまね、鈴仙」
ブレザーを着た兎の耳の少女に師匠と言われた女性は微笑むとうっすらと笑う。
「幻想郷の基盤を作る計画・・・逆手に取らせて貰いましょう」
そう呟いて彼女は鈴仙から黒髪の美女に顔を向けた。
「姫。如何しましょう?」
「今は余韻に浸らせて上げなさい。
その安らぎが一時のものである事がすぐに解るでしょうから」
姫と呼ばれた黒髪の美女はそう告げると空に輝く三日月を見上げた。
異変が終わる事はない。
幻想郷と呼ばれる楽園を手中に収めたい者は吸血鬼や亡霊だけではないのだ。
歴史を修正する為に戦う博麗の巫女として戦う護御霊空と云う少女の邪気を祓う道はまだ始まったばかり・・・彼女がその中でどう成長するのか。
ーーそれはまた別の物語。
【幻想郷二重創・完】




