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幻想郷二重創~重なる世界~  作者: 陰猫(改)
第2章【春雪異変】陰猫(改)Ver.
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第7話【春告精】

 ボクがスキマから出ると一人の女の子がそわそわしていた。

「あの娘は?」

「春告精のリリーホワイトですね。恐らく、この異変で春の集まる場所を見付けたのでしょう」

「春の集まる場所?」

 ボクの問いに藍さんは「おっと」と言って口に手を当てる。

 解ってはいたけど、藍さんは異変について何か知っているらしい。

 でも、ボクは敢えて問わなかった。

 博麗の在り方は異変を未然に防ぐ事ではなく、異変が起きた現状を解決する事だと教えられたのもあるし、ボクでは役不足なのだとも解った。

 なら、ボクはボクに出来る事をするだけだ。

「春を返して……春を返して……」

 あの娘からは邪気を感じる。


 ーーなら、ボクが祓って上げないと。


「待っててね?……今、助けて上げるから」

「助けて上げるのは良いけど、お姉さんはもっと自分の事を考えないとね?」

 そう言われて振り返ると黒いフード付きマントに身を包むルーミアちゃんーーいや、ルーミアさんが現れる。

 ルーミアさんが来たって事は助太刀してくれるのけな?

「……ルーミアさん」

「勘違いしないでね、お姉さん。

 私はあの娘と弾幕勝負しに来た訳じゃないし、お姉さんを助ける訳でもないから」

「え?じゃあ、何しに?」

 困惑するボクにルーミアさんは愉快げに笑う。

「今の私は幻想郷の守護者の一人。

 幻想郷を影から守護するのが、私の務め……」

「……えっと、つまり?」

「邪気を祓って力を使いきったお姉さんを安全な場所に運ぶのが、私の役目って事。

 まあ、もう少ししたら霊夢も来るから大丈夫だろうけども念の為にね?」

 ルーミアさんは片目でウィンクするとボクの背中を押す。

「あとの事はこっちで何とかするから、お姉さんはお姉さんの役目を果たしてね?」

 ボクはつんのめりそうになるのを堪えてからルーミアさんに振り返って頷くと陰陽玉を出して宙を飛ぶ。

 リリーホワイトって娘はボクに気付くと此方を向く。

「……春なのに春じゃない……お願い……春を返して……」

 今まで見て来た妖魔の中でもフランたゃん並みに邪気が強い。

 どうして、こんな小さな妖精さんが妖魔になったのかは解らないけど、早く祓って上げないと……。

「【夢想天翔むそうてんしょう】!」

 ボクは七色の光を発すると冬空から一瞬、青空が見える。

 それと同時にリリーちゃんの邪気が祓われたーーかに見えた。

「春を返してよ!」

「え?」

 思わず、二度見してしまった。

 彼女の邪気は確かに祓ったのにまた集まって、リリーちゃんを邪気で固める。

 こんなの初めてだ。

「ちょっと、まずそうね?」

 そう告げるとルーミアさんがボクの横を駆け抜ける。

 そして、リリーちゃんの弾幕を弾幕で相殺した。

「お姉さん。まだやれる?」

「う、うん。力を抑えすぎたのかな?」

「多分、違うよ。邪気は思いの強さに惹かれる。

 きっと、あの娘の思いが強過ぎるんだと思う」

「なら、どうすれば……」

「あの娘の願いを聞いて上げれば良いんだよ」

「あの娘の願いを……」

 ルーミアさんの言葉を聞いてボクは深呼吸すると真っ直ぐにリリーちゃんを見据えた。

 そんなボクを見て、ルーミアさんが微笑む。

「それで良いんだよ。大丈夫。お姉さんなら出来るよ」

「ありがとう、ルーミアさん」

 ボクは彼女にそう告げるとリリーちゃんに近付く。

「……返して……春を……」

「大丈夫。霊夢達がなんとかしてくれるよ。ボクも協力するから、安心して」

 そう言うとボクはリリーちゃんを抱き締め、もう一度、夢想天翔を発動させる。

 今度は上手くいった気がする。

 その証拠にリリーちゃんが泣いていた。

「……春だ……春が戻って来た!」

 次の瞬間、ボクは元気になったリリーちゃんの弾幕を浴びる事となる。

 二回も夢想天翔を使い、至近距離から彼女の弾幕を受けたボクは為す術もなく、落下して行く。

 そんなボクをルーミアさんが受け止め、優しく微笑む。

「お疲れ様、お姉さん。よく頑張ったね?」

「うん。ちょっと怪我しちゃったけど、これ位なら、まだ大丈夫だよ」

「……そう。良かった」

 ルーミアさんがボクにそう返すと此方に迫る小さな点を見上げる。

 恐らく、霊夢だろう。

「あとは霊夢に任せて、お姉さんは休憩しよう。連続して力を使ったから疲れたでしょう」

「うん。ちょっとね?」

 ボクはそう言うとルーミアさんと共にその場を離れる。


 あとはお願いね、霊夢。


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