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第2話【時間逆行】

 無数の目が見ている不気味な空間でボクはただ、漂っていた。

 無重力って、こんな感じなのかな?

「何をしているの。さっさと慣れなさいな」

 そんなボクに紫さんが見えない床でもあるかの様に此方に歩いて来る。

 そんな無茶言われても、どうしたら良いのか解らない。

「仕方ない娘ね。見えない床をイメージしなさい。

 そうすれば、普通に歩けるわよ」


 成る程。


 見えない床……見えない床……。


 そうイメージするとボクは紫さんの隣の見えない床にドスンと落ちる。

「ふぎゅっ!?」

 思ってた通り、床が硬い。

 ボクはお尻を擦りながら、涙目で呆れる紫さんを見詰め返す。

「……貴女、本当に大丈夫なの?」

「……大丈夫……じゃないです」

 当然だよね?

 お父さんとあんな別れ方したんだし、何より命の危険もあると解って、かなり不安なんだけど……。

「まあ、あの時代の日本はゆとりがあったし、仕方ないわね。

 けれど、向こうへ着いたら、あちらの世界の常識を捨てなさい。

 でないと本当に命の保証は出来ないわよ?」

「ふみゅ~。解りました」

 ボクがそう言うと紫さんは溜め息を吐いて前へと歩き出す。

「……あの」

 そんな紫さんについて行きながらボクは紫さんに声を掛けた。

「なにかしら?」

「ボク、帰れるんですか?」

「それは貴女次第よ。まあ、幻想郷にあちらの邪気がどんな変化をもたらすか解らないし、まずはーー」

 紫さんがそこまで言い掛けると空間に歪みが生じる。

「ど、どうしたんですか!?」

「これは時間逆行ね。恐らく、邪気で幻想郷の歴史が改変されているのよ。

 まさか、私のスキマにも影響を与えて来るなんてね?」

「スキマ?」

「説明している暇はないわ。貴女は此処で下ろすから博麗神社で保護して貰いなさい」

「え?え?」


 次の瞬間、ボクの足元に再び亀裂が入る。


「ちょっーーまた落ちるううぅぅーーっっ!!」

 ボクは無数の目がある空間を抜けるとそこには青空があった。


 ーーって、暢気に構えている場合じゃない!


 このままだと地面にぶつかる!


 こう言う時、空を飛べれば良いんだけどーーいや、待てよ。

 もしかして、人間が飛べないって常識に縛られなければ、飛べるんじゃないかな?


 幸い、地面とぶつかるにはかなり、時間がある。

「よ、よ~し!」

 空が飛べる……空が飛べる……空が飛べる……空が飛べる……空が飛べる…………って、やっぱり、無理いぃぃーーっ!!

 トマトみたいに潰れるイメージしか出来ない!!


「誰か助けてええぇぇぇーーっ!!」

 ダメ元で叫んで見るけど、助けてくれる人なんてーー


「ほいよっと!」


 ーーいた。


 その人は箒に跨がって白黒の魔女の様なコスプレをしていた。

「大丈夫か?」

 ボクは彼女に抱き抱えられながら、しばし、呆然とするとコクコクと頷く。

「お前、変わった格好しているな?

 外来人なのか?」

「外来人?」

「まあ、その話は後でしてやるんだぜ。

 重い物を持っているから、箒の操作が難しいからな」

「な!?ボ、ボクは重くなんてーー」

「ああ。違う違う。それもあるかも知れないが、私の荷物の事なんだぜ」

 そう言われて彼女の箒の先を見るとキノコやら何かの道具やらが詰め込まれた袋がぶら下がっていた。

「丁度、今、家出して来た所だし、これも何かの縁だ!仲良くしようぜ!ーーって、やっぱり、バランスが悪いな。

 此処等で一度、降りるんだぜ」

 そう言うと魔女さんはフラフラと危なげな動きで地面に着地する。

「私の名前は霧雨魔理沙きりさめ まりさ!宜しく頼むぜ!」

「護御霊空です。さっきは助かりました」

 ボクはゆっくりと自分で立ちながら、魔理沙さんに頭を下げる。

「気にすんな!気にすんな!

 しかし、外来人か……まずは博麗の巫女にでも会いに行ってみようぜ!」


 これは渡りに舟って言うのであってたかな?


 助けて貰ったばかりか、博麗神社へ道案内して貰えるなんて。

「魔理沙さん」

「魔理沙で良いんだぜ。見た所、同い年位だしな」

「そ、それじゃあ、魔理沙……さん」

「魔理沙」

「ま、魔理沙、さん」

 駄目だ。つい、いつもの調子で"さん"付けで呼んじゃうな。

「……お前、わざとなのか?

 それとも、どこかの貴族の生まれなのか?」

「ご、ごめんなさい、魔理沙さん!……あ」

「もう良いんだぜ。ただ、私も同い年に"さん"付けで呼ばれるのは、なんかムズムズするんだよな」

「ふみゅ~」

 なんか、ちょっと、よそよそしい空気になっちゃったな。喋り辛い。

「えっと、魔理沙さんは博麗神社への道のりは解るんですか?」

「ん?おう。勿論だぜ。今はきっと、霊夢も修行中だろうからな」

「そうなんですか」

「まあ、二人ならなんとかなるだろう。

 最近、ちょっと妖怪とかの動きが変なんだけど」

「え?妖怪?」

「あ、いや、妖怪だからって害があるとか、そう言うのとは違うんだが、なんて言うんだ?妙に何かにハマッているみたいでな?」

 妖怪って単語も気になるけど、何かにハマるって、なんだろう?

「お?そんな話してたら早速、やっているぜ!」

 そう言われて頭上を見ると遠くの空で打ち上げ花火の様な何かが宙を舞う。

「えっと、花火?」

「いや、なんか、力比べっぽい事をしているな。

 まあ、あの規模なら妖精達だろう。

 あんまり、気にすんな!」

「うん。解ったよ。なるべく、気にしない様にする」

「……お前、素直過ぎるって言われないか?」


 ……また言われた。


 そんなにボクって素直に見えるのかな?

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