第4話【冷却コンビ】
空がいなくなって数ヶ月した。
私は心配したんだが、霊夢は「その内、戻って来るわよ」と言って取り合ってくれない。
霊夢の事は解っているつもりだったが、あんなに薄情だったとは思わなかったぜ。
あんなに姉思いだったのが嘘みたいに冷めてやがる。
喧嘩か何かしたのか知らないけど、冷た過ぎるぜ。
それに今回の冬は明らかにおかしい。
こんなに長く続くなんて変だ。
これはもしや、空のいなくなった事件と何か関わりがあるに違いない。
この名探偵である魔理沙さんが調べてやるんだぜ!
ーーとは言え、霊夢みたいに直感で私は動けないからな。
何かヒントでもあれば良いんだが……。
まあ、霊夢が動かない以上、私が動くしかないんだぜ!
ともかく、なんとかなる筈だ!
そんな風に思いながら箒に乗って飛んでいると鼻歌を歌っている妖精がいた。
なんで、妖精か解るかって?
そりゃあ、そいつとは一度会ってるからな。
「お前の仕業かあああぁぁぁーーっっ!!」
「お、まりーーぎゃあああぁぁぁーーっっ!!」
よし、元凶は倒した。
流石は私だぜ。
私は先手必勝でマスタースパークをぶっぱなしてチルノをボコると首根っこを掴む。
「観念しろ、異変の元凶!」
「何の事だ、魔理沙!?
あたいは何もしてないぞ!!」
「いいや!私の目に狂いがなければ、お前の仕業だね!
さあ、戻せ!ーーでもって、空を返せ!」
そんな事をしていると一人の女がフワフワとやって来る。
そして、私が首根っこを掴むチルノを見て、クスクスと笑った。
「あら?氷の妖精も形無しね?」
「馬鹿にするな、レティ!
あたいはまだやれるぞ!」
チルノが頬を膨らませて怒るとレティと呼ばれた妖怪が微笑む。
「まあ、良いけどね?」
「なんだ?チルノの保護者か?」
「その妖精と一緒にしないで」
「でも、お前達、仲良さそうじゃないか?」
「「仲良くなんてない!」」
私の言葉にチルノとレティって妖怪が叫ぶ。
なんだ。ハモっているし、やっぱり、仲良さそうじゃないか?
沸点の低いチルノと違って、レティって妖怪はすぐに冷静さを取り戻す。
「それで貴女は何をしているのかしら?」
「この冬を終わらせる為に活動してるんだぜ」
「そうなの?なら、この異変を起こした私を倒す事ね?
終わりのない冬こそ、我が願望なりーーってね?」
「お前が元凶かあああぁぁぁーーっっ!!」
私は先手必勝で再びマスパをぶち込む。
「ちょっーーいきなり、大技ってーーきゃあああぁぁぁーーっっ!!」
「ふっふっふ。流石は魔理沙……見事だ。
あたいが教える事はもう何もないーーいった!」
私はチルノを小突くと目を回すレティって妖怪にミニ八卦炉を向ける。
「今の魔理沙さんは気が立っているんだぜ。
私は今からあんたに質問する。
ウーノ。ドゥーエ。それ以上はまたないんだぜ」
私はキザっぽく、そう告げるとチルノを放し、ちょっと冷えた手袋をした左手を振る。
「あんたがラスボスならこの異変を止める方法を知っているんだろう?
さっさと止めるんだぜ。仮にお前がラスボスじゃなくても、私は私で探すからな」
私はそう言うと「ウーノ」と呟く。
「ええ。そうよ。私はラスボスじゃないわ。
ただ、この冬の異変を解決しようとしている貴女にちょっかいを出しただけよ」
「ドゥーエ。待たないつったからな。
動くと撃つーー間違えた。撃つと動くぜ」
私がそう言ってマスパを放とうとするとチルノが抱き着いて来る。
「魔理沙~。あたいは平気だけど、レティは冬だけに出没する妖怪なんだ。
ちょっと調子に乗っているけど、本当はいい奴なんだ」
「解ったから離せ。別に殺すとかそんな事はしないから、ただ再起不能になって貰うだけだぜ」
そう言うとチルノが不敵に笑う。
「いいや。再起不能は魔理沙だね」
「なっ!?」
私が慌ててチルノにミニ八卦炉を向けると身体が急速に冷たくなる。
「零距離アイシクルフォール。パワー全開だ」
「……な、なんて……こった。
この魔理沙さんがまだ序盤で倒されるなんて……しかも三大兄貴ネタをぶちこみやがって……」
私はそう呟くとあまりの冷たさに倒れ込む。
「直は素早いんだよ」
「いやはや、恐れいったわ。やるわね、氷の妖精さん」
「第五部は面白かったからな!
折角だから、うちで見ていくか!?」
そう言うとチルノ達はその場を後にする。
倒れ込んだ私はミニ八卦炉を取り出すと凍えた身体を温める為にサバイバルモードに切り替える。
焚き火とかの用意をせずに温められる辺り、やっぱり、ミニ八卦炉は便利だ。
それにしても、やたら詳しかったな、チルノの奴。
やっぱり、兄貴のネタは最高だぜ。
貸してやったかいがあるってもんだ。
しかし、あの二人が知らないとなると捜索は振り出しだな。
さて、身体も温まった事だし、次に向かうか……。




